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バイトダンス(ByteDance)の持つ価値とは

短編動画アプリTikTokを運営する中国のバイトダンスは、時価総額8兆円を越え、2018年にUberを抜き世界最大のユニコーンになりました。Toutiao(今日頭条)というニュースアプリとTikTokという2つの巨大アプリを有し、中国モバイルインターネットユーザーのアプリ利用時間の9.7%を占有し、テンセントの47.3%、アリババグループの10.4%に次ぐ第3位の座を占めています。中国とアメリカの両方で1億人以上のユーザーを持つ唯一のテクノロジー企業でもあり、TikTokはYouTubeやInstagramのようなサービスに対抗する存在となりました。このByteDanceの持つ価値に関し、分析しました。

創業者:張一鳴(Zhang Yiming)

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1983年、創業者、Zhang Yiming氏は福建省で生まれました。父親は、科学技術委員会で働く市の公務員で、母親は看護婦だったということです。経歴的には中国における中流家庭出身のようです。

Zhang Yiming氏は2005年に南海大学を卒業すると、3人のチームで企業向けシステム開発企業を設立しましたが、一度目の起業は失敗に終わりました。2006年、旅行検索サイトのKuxun(酷訊)、2008年マイクロソフト、2009年、不動産検索エンジンの99fang(九九房)の設立とキャリアを変えています。2012年、99fangのCEOを辞任すると、「バイトダンス(ByteDance)」を設立しました。Toutiao(今日頭条)というスマホアプリをリリースしましたが、わずか90日で、1000万人ユーザーを獲得したと言われています。

ByteDanceの強みは

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ByteDanceでは、一人一人に合ったレコメンド機能の最適化とその継続性に特に注力しました。Zhang Yiming氏は次のように述べています。「初期の頃、レコメンド機能はスタートアップにとって非常に難しいものでした。多くの人が似たようなアプリをやっていました。中には拡張性のない運用している人もいたし、シンプルなカスタマイズで顧客を満足させようとしている人もいました。レコメンド機能を開発することを本当に決断する企業は非常に少なく、さらに多くの企業が失敗しています」バイトダンスでは、ニュースアプリ、TikTokどちらにおいても、ユーザーの興味を満たす情報が次から次へと表示されます。この強いレコメンド機能が、ByteDanceの強さの源泉であると言えます。創業者がもともとエンジニアであることが、こうした技術に紐づく強みを作り上げた理由とも言えます。

ByteDanceの勢い

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COVID-19により世界中の若者が学校から追い出され、彼らはお馴染みのアプリ、TikTokに目を向けました。TikTokは2020年3月に1億1500万回ダウンロードされ、現在10億人近くのユーザーを抱えます。

北京の賑やかなオフィスで働く6万人の従業員は、次から次へとアプリを開発しています。昨年、同社は世界規模の企業向けソフトウェアサービス(Lark)、インドとインドネシアでの音楽ストリーミングアプリ(Resso)、中国ではWeChatのライバルとなるメッセージングアプリを立ち上げました。COVID-19による世界的な冷え込みで世界中の多くのテクノロジー企業がレイオフを余儀なくされている中、新たに1万人の従業員を雇用しようとしており、今年はさらに3万人の雇用を計画しています。ByteDanceは、手厚い給与と福利厚生で知られており、シリコンバレーに拠点を置くスタートアップ企業に近い福利厚生を提供しています。募集広告によると、従業員は毎日3食無料で「無制限の軽食」やジムの会員権を受け取れるといいます。創業8年目のByteDanceが年末までに10万人の従業員を抱えることになる可能性があり、これは、ライバルであるテンセントを追い抜くことになり、アリババと肩を並べることになります。

バイトダンスは、中国初の世界的なソフトウェア巨大企業です。ByteDanceの収益は主に主要な2つのアプリで流す広告で成り立っています。ByteDanceは非上場企業であるため、売上規模などを公開していませんが、投資家からのリークや声明によると、Uber、Snapchat、Twitterを合わせたよりも多くの収益(150億~200億ドル)があると言われています。中国での広告収入は、テンセントとバイドゥを上回り、現在ではアリババの広告収入を上回り、Facebookより3倍早く成長していると言われています。FacebookやYoutubeがTikTokに似たサービスの開発を進めていますが、どちらもまだ成功していません。

中国では、TikTokやDouyinを通して物を売る、eコマース・プラットフォームを強化し、トラフィックの収益化をしています。数千万人の視聴者を集め、数百万人民元の収益を上げているライブストリームで商品を売り歩くことに注力しています。中国では、Teslaなどの企業がライブストリーミング機能を利用して車の宣伝をしています。

2年前、ソフトバンクGが主導した30億ドルの資金調達ラウンドを経て、企業価値は、750億ドルと評価されました。最近では、セカンダリーマーケットでの取引でByteDanceの評価額は900億ドルから1000億ドルにまで急上昇しました。ソフトバンクG のSVFの投資ポートフォリオの中では、新型コロナの中でも健闘している企業と言えるのではないかと思います。

ByteDanceの懸念

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ワシントンの政治家たちは、アメリカ人TikTokユーザーのデータが中国に渡されていること、ByteDanceのコンテンツが中国共産党に検閲されていることを気にしています。対米外国投資委員会(CFIUS)は、ByteDanceが2017年にMusical.lyを買収した件を審査しています。このアプリはアメリカとヨーロッパで6000万人のユーザーを抱えていました。関係者らによると、ByteDanceはミュージカリーの買収に際し、CFIUSの承認を得ておらず、このためCFIUSが調査に乗り出したといいます。マルコ・ルビオ米上院議員(共和党)は、TikTokが政治的に繊細なコンテンツを検閲する目的で中国政府に利用されているとした上で、こうした中国のアプリは「コンテンツを検閲して、中国政府・共産党にとってデリケートなトピックに関する開かれた議論を抑え込むために利用されることが多くなっている」と訴えました。TikTokは、利用者が入力した名前や年齢、電子メールアドレス、電話番号といった個人情報のほか、投稿写真や動画などのコンテンツを保存しています。また、位置情報などの他の情報は自動で収集しているといいます。

声明の中で、TikTokは、すべてのアメリカ人のユーザーデータを米国に保存しており、アメリカでの事業は「中国政府を含むいかなる外国政府の影響を受けていない」と述べています。ByteDanceはコンテンツのプライバシー、セキュリティ管理に関する情報を共有することを約束し、国外のユーザーからのコンテンツの処理を中国で行うことをやめると述べました。現在検討中のByteDanceの香港での上場も、信頼を醸成に役立つ可能性があります。

こういったByteDanceを巡る懸念は、米中の技術覇権争いの一部とも考えられ、アメリカはこうした分野で強引にTikTokを潰そうとしてくる可能性もあります。そのためByteDanceとしては、今はTikTokで覇権を取りに行くのは危険だとも言えます。YouTubeやInstagramを越えてしまうことは、アメリカに潰されてしまうことを意味するわけです。


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