20200826 「防衛白書で読書感想文」案件から学ぶ2020年以降のメディアリテラシー
面白いですね、防衛白書の読書感想文というのが、
さて、もしかすると、「『白書』って何?」という人もいるかもしれませんので、簡単に解説しておくと、政府の報告書です。
政府には多くの省庁や部局があって、実に様々な仕事をしています。ただ、やりっぱなしというわけではなく、積極的に国会(国民の代表が集まっている場)に報告しています。もちろん、大きな方向性は議会にいる政治家が決めた方向性で動いていきます。
その中で、年一回定期的に更新される文書もあります。今回の防衛白書は防衛省が年1回発行している白書になります。
ただ、この事業がプチ炎上していて、この炎上は意外と、メディア、特に新聞のようなオールドメディアにとっては、ブーメランな炎上ではないかと思ったので、書き残しておきます。
河野防衛大臣、ご本人が登場
この白書に関して、読書感想文の募集は昨年から行われているのですが、ふと、河野太郎防衛大臣が、この感想文について書いているのを見つけました。
市ヶ谷で防衛省の誰かに聞けば、「ああ、それは防衛白書をなるべく多くの人に読んでもらおうという副大臣の発案ですよ」という答が返ってくるはずだ。
記者クラブで聞いてもそういう答が返ってくるだろう。
それをわざわざ「軍事ジャーナリスト」に聞いて、とんちんかんな記事を書いている。
さて、何の件についていっているのかというと、東京新聞の8月21日付の記事、「防衛省が防衛白書で読書感想文を一般募集…その狙いは」に対しての投稿だったとのこと。
自腹で東京新聞の記事買って行ったファクトチェック
いや、結局、買いましたよ。この記事。
で、ちょっとファクトチェックが必要そうな部分があったので、引用します。
軍事ジャーナリストの清谷信一氏は「河野太郎防衛相が自分のプレゼンスを上げるためにPRしているのでは。次の自民党総裁選をもにらんだ布石だろう」(中略)「ミリタリーマニアをターゲットにしているところはあるが、それを雪だるまのコアとして、徐々に知名度を広げていくのが狙いじゃないか」
さて、ジャーナリストの一見解ですが、そんな回りくどいことをするもんでしょうか? 新聞の記事の意見主張の仕方で、新聞の見解と同じことを代弁してくれる識者や一般人を登場させるのはよくあります。
さて、それに対して、上記の河野太郎防衛大臣のブログにはこう書かれています。
防衛白書を多くの人に手に取ってもらおうと、この読書感想文コンクールを発案したのは、山本副大臣だ。
だから副大臣がコンクールの審査委員長を務めている。
責任逃れでしょうか?
これもファクトチェック。
すると、下記、Twitterの投稿で、防衛副大臣の山本ともひろさんの物が残っていました。
流れとしては、2019年9月11日、河野太郎さんが防衛大臣になった後、就任した山本ともひろさんが、2019年11月初旬に初めは非公式に始めた感想文事業が、意外と好評だったので、防衛省の公式事業にしようといった感じです。
確かに、河野大臣が「呼びかけは副大臣から。だから審査委員長も副大臣」というのもわかります。ですので、ファクトチェックすると、東京新聞が連れてきた識者のコメントは、どうも事実の流れをぶっ飛ばしているような感じがします。
東京新聞は「軍拡を勧める防衛白書を批判的に読むよう」勧めないのは具合が悪いからか?
東京新聞は、社説において、防衛白書について厳しい意見を述べています。
地域情勢の安定には外交、防衛交流、経済支援など重層的な取り組みが必要だ。防衛力の整備には「節度」を取り戻すべきである。
と、とても、批判的なのである。
それであれば、どうして、読者に対して、防衛白書の読書感想文を読み、その白書が「軍拡をあおっている」ことについての感想文を防衛省に送るよう促さないのか。。。
多分、それはそれで困るからだろう。
政府のプレスリリースや大臣の意見が直接取れる時代のリテラシーは自分で情報取りに行くこと
この私のマガジンの目的でもあるのですが、今は、政府の発表や大臣の会見が、インターネット環境さえあれば、どこででも自由に獲得することができます。
専門用語でいえば「1次情報」ですね。
新聞やテレビなどのマスメディアはその「1次情報」を加工して、お客様に届ける、「2次情報」媒体なのです。
ただ、「加工」とあえて言いましたが、「何をニュースとするか」とか「そのニュースに対してどういった意見を持つか」という偏りは絶対に出てきます。
これまでは、その偏りを持ったニュースを多元的に見て、事実を導き出すことが、「メディアリテラシー」と言われていたように思いますが、2020年以降は、自分で1次情報を積極的に取りに行き、データや情報を意味のあるストーリーに仕上げていく能力が「メディアリテラシー」となるでしょう。
ですので、新聞は、「加工」で付加価値を生めなければ、生き残ることはできません。意外と、そこうまくやってるのが産経と日経のような気がしますが、その辺はまた、席を改めます。
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