霊界喫茶店
今までいくつかの怪談は全部この喫茶店での噂話をきっかけとして起こったものだったが、やがてこの店でも心霊現象が起きるようになってきた。
この話はその中でも一番体験者が多く強烈なものだった。私はこの話をあるWEBの怪談サイトに投稿したところ番組「アンビリバボー」のスタッフから、ぜひ再現ビデオにしたいと要望があった。私はもう店もないが関係者は健在なので許可を取り、承諾をした。放送された番組は少し変わっていたが、下記にあるのはオリジナルの話である。
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東京の郊外の大きな団地の商店街にその喫茶店はありました。
マスターとママが二人でやっていて近くに住む大学生や高校生でいつも賑わっていました。
常連たちは昼間よりも夜の方が活動的で、マスターもママも取り留めもない話が好きでいつも夜中まで営業をしていました。当然、夜中にもなると怪談に花が咲き、夜遊びをして時には幽霊ツアーなども行われていました。
店の壁には常連のカメラマンの作品で東北の自然と農村の風景を撮った数枚の写真を飾っていました。その中に井戸端で野菜を洗う農家のおばあさんの写真がありました。おばあさんの笑顔がとても良く撮れていたことを覚えています。
ある日、そのカメラマンが店に来てこのおばあさん亡くなったんだよねとぽつんと言って帰りました。
その晩のことです。僕たち常連たちが三四人いつものように今日の夜遊びの相談をしていました。
だれかが「この写真のおばあさん死んだらしいぜ」と言いました。まただれかが「じゃあ今日はお弔いだ」と言って壁からおばあさんの写真をはずし黒いリボンで葬式の写真のようにしてしまいました。そしてカウンターに飾り残っていた常連で一人ずつお焼香の真似を始めたのです。そして最後の僕の番の時です。天井にかけてある大きなスピーカーから突然大音響で読経が流れて来たのです。もう店仕舞いをしていたのでステレオの電気は切ってあったはずなのに悪戯好きのマスターが仕組んだんだと思い、みな顔を見合わせて笑っていました。スピーカーの声は何十人ものお坊さんが読経をしているような荘厳な感じがしました。しかしマスターだけがきょとんとしています。「ステレオの電源だれかいれた?」アルバイトの男の子が見ると電源は入っていませんでした。読経はそれから十秒くらい続いて切れました。僕たちは背筋が凍り付きました。考えてみれば突然思いついた悪戯なのですからそんな仕込みをする余裕はありません。それにステレオの電源が入っていなかったのは全員見ていたのです。
一体あれはなんだったのでしょう。
つづく
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