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Vulfpeck 関学文総軽音 完全解説!ロングインタビュー(2) Vulfpeckコピーバンドを生み出した軽音部、キュウソネコカミも在籍していた「文総」について

KINZTOのDr.ファンクシッテルーだ。今回は「どこよりも詳しいVulfpeckまとめ」マガジンの、28回目の連載になる。

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今回はVulfpeckへの愛を最高の形で表現した、この動画のメンバーの方々へのインタビュー、後半となる。

2019年11月2日、関西学院大学の文化祭にて行われたVulfpeckのコピーバンドの動画は、YouTube、Twitter、Instagramなどで大きな注目を集めた。

バズは止まらず、ついに本家Vulfpeckの二回にも及ぶRT、メンバーのインスタでの言及、さらにはCory Wongがコメント欄に降臨する事態にまで発展したのである。

2021年現在の日本において、この動画がもっともVulfpeckを広めていると言っても過言ではないだろう。

前回のインタビューでは、このコピーバンドの結成過程や、練習、衣装などについて、細かくお話を聞かせていただいた。

今回は、彼らが在籍している部活…文総(関西学院大学 文化総部軽音楽部)について、さらに深く掘り下げていきたい。

はたしてあのVulfpeckコピーを生み出した、文総とはいったいどんな部活なのか?

それでは、本編へ進もう!


文総(関西学院大学 文化総部軽音楽部)の活動

――では、皆さんの部活、文総について聞かせてください。前回のインタビューでもお聞きしましたが、関学のなかにある9つほどの軽音団体のなかで唯一、大学公認の軽音部だと。

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YouTubeチャンネルも登録者数が1.2万人を超えており、注目度の高さが伺えます。ふだんはどんな活動をされていますか?

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てらだ:基本的には、ライブに向けてバンドを組んで練習して、ライブが終わったら新しいバンドを組んで、というのを繰り返しています。あとは夏に合宿したり、遊んだり。

――部員はどれくらいでしょう?

てらだ:100人くらいです。

――すごいですね!YouTubeチャンネルに非常に多くの動画が上がっていますが、本当にコピーしているバンドが幅広いですよね。

ゆきの:これが去年の新歓用に作った資料です。

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――YouTubeにアップされている以外にもこんなに演奏していたんですね!私はファンクが好きなので、Tower of Power、Jamiroquai、Super ButterDog、レッチリ、Parliament、山下達郎などの名前にグッときます。

しかも、TurkuazやBoston Horns、森広隆のようなマニアックなファンクもやられていますし。

YouTubeにありましたけど、通好みの最先端の音楽、Hiatus Kaiyote、Kendrick Lamarなんかも演奏されていますよね。

わかばやし:Hiatus KaiyoteとKendrick Lamarは僕も弾きましたね。Kendrick Lamarは大学1年のときに初めて出させていただいたバンドで、その時は後でHiatus Kaiyoteを一緒にやるドラムの先輩が誘って下さったんですけど。

誘われるまではKendrick Lamarも知らなくて、聴いてみたらむっちゃかっこいいな、と。あれがすべての始まりでした。

――この並びに普通に、おいしくるメロンパンとか、Little Glee Monster、サカナクション、ヒゲダン、King Gnuもあって、でも忌野清志郎とか、イエモンとか、ミスチル、スピッツ、奥田民生、ウルフルズもある。素晴らしいですね。


Vulfpeckメンバーが出演したバンド

――わかばやしさん(Gt)はご自身がリーダーを務めたLarry Carltonバンドを含め、本当に多くのバンドにご出演されていますが、他の皆さんはどうでした?

てらださんはVulfpeckの動画でサングラスと帽子なので、実はほかのどの動画に出られていたのかが分からなくて。

てらだ(Ds):2019年はわかばやしさんと一緒にやってるやつが多くて。バタ犬、東京事変、Superfly、OKAMOTO'Sとか。Vulfpeckと同じ日にやったのはウルフルズ、World Mapsですね。

とうじょう(Pf):私はウルフルズ、Jamiroquai、World Maps、YUKIとかです。

こうすけ(Gt):ウルフルズ、never young beach、ORANGE RANGE、OKAMOTO'S、思い出野郎Aチーム、Shiggy Jr.、World Maps、The Spandettes、Larry Carltonなど…あとは、佐野元春。佐野元春バンドは僕がリーダーをやりました。

ゆきの(Sax):山下達郎、思い出野郎Aチーム、Olly Murs、佐野元春、あと森広隆、いきものがかりとかですね。

――ウルフルズほとんどみんな被ってますね。私はオルガンが大好きなので、とうじょうさんのウルフルズでのオルガンソロにもしびれました。あれも当時1回生とは思えない素晴らしいプレイです。

――ベースのビリーさんはどうですか?(今回のインタビューでは欠席)

てらだ:ビリーさんはさっき出たバンド、ほとんど被ってるんじゃないですか?笑

わかばやし:Larry Carltonとか。

ゆきの:Turkuazとかも出てましたね。

――ありがとうございます。いま挙がったバンドの動画はほとんどYouTubeチャンネルにありますので、是非ご覧ください。👇


年間のライブスケジュール、部室について

――年間でライブはどれくらいあるんでしょうか?

ゆきの:昨年はコロナの影響で予定どおり行かなかったんですけど、新歓の資料はこんな感じです。

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――すごく沢山ライブをされていますね!

ゆきの:定期演奏会が年2回あって、実際には年間で20回くらいライブをやっていました。

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定期演奏会 画像出典:https://kglmchp.wixsite.com/kglmc

――この渉外ライブ?というのは何ですか?

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渉外ライブ 画像出典:https://kglmchp.wixsite.com/kglmc

わかばやし:渉外ライブというのは、他大学の部活やサークルと一緒にライブハウスを借りてライブをする、という。僕が2018年、ギターのこうすけが2019年に渉外部長を務めまして。年に5~6回ほど、チキンジョージ(神戸の有名なライブハウス)などを借りてやったりしてました。

――チキンジョージ!すごいじゃないですか。

わかばやし:あと2回ほど、東京でもやりまして。下北沢ガレージで、東大POMPさんと一緒にやりました。

――それは素晴らしい!

てらだ:あれは楽しかったですね。

わかばやし:彼らはすごいノリがいいし、みんな優しいし、最高でした。

文総にはチャリオ(K.G.Swing Charioteers)っていうジャズビッグバンドもあるんですが、東京でビッグバンドの大会(山野ビッグバンドジャズコンテスト)があって。それに出るついでに、「じゃあちょっとセッティングしよう」と思って、東大POMPさんのほうに声を掛けさせていただきました。2018年、2019年と、2年連続でやらせていただいて。

てらだ:恒例にしていきたかったんですけどね…コロナのせいで止まっちゃって。

――そうだったんですね…。コロナの影響はどれくらい?

てらだ:去年はライブがぜんぜんできなくなってしまいました。

ゆきの:緊急事態宣言が出てから、学校に入れなくなってしまって。しばらくは機材も取りにいけませんでした。10月くらいからは、少しずつ部室に入れるようになりました。

てらだ:授業も基本的にはオンラインで。

――いまも部活はできていないんでしょうか。(2021年3月現在)

てらだ:人数制限はありますけど、いまは部室での練習や演奏は許可されてます。

ゆきの:部室もあまり換気がよくないので、まだ大人数での練習は許可されていませんけど。

――部室の様子、確かYouTubeにありましたね。

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画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=Me3lqi7MIDk

――大部屋と小部屋があるんですね、すごい。かなり広そうですね!Vulfpeckバンドもこの部室で練習されましたか?

てらだ:はい、ここでやりました。土曜の部のミーティングで1週間のスケジュールを決めて、決められた時間に練習する感じです。

――機材もかなり多そうですね。

ゆきの:そうですね。さっきもお話しましたが、私達の部活は大学の公認団体で。関学の9つくらいの軽音団体のうち、サークルでなく「部活」になっているのは私達、文総だけなんです。

それなので、Vulfpeckのライブもやった「プラザ」という場所で演奏できる機会を、学校からいただいたり、自分たちでも申請して得ることができるんですが…あそこで演奏するには音響機材が一式必要で。楽器だけでなく、メインスピーカーとか、ミキサーとか、そういったものを全部、自分たちで準備しないといけないんです。そういったものも全部、部として所有しています。

「プラザ」で演奏するときは、部室からみんなでそれを持ってえっちらほっちら移動してセッティングしています。笑

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画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=eGUtrI5L5vw&t=1229s


OBのバンド

――オリジナルをやるバンドもいるんですか?

てらだ:ちょっと前にSlimcatが定期演奏会に出てましたっけ。

――Slimcat、これは文総のFunkadelicのコピーバンドで弾いていた方がいらっしゃるバンドですね!Funkadelicのギターのコピーが素晴らしく、個人的に関学のエディヘイゼルと呼ばせていただきたいです。笑

わかばやし:でも、基本的にはオリジナルを学内のイベントでやっているバンドはいないと思います。キュウソの方々も学内ではおそらくやっていなかったはずですし…。

――え、キュウソネコカミですか?

わかばやし:はい。彼らは全員、文総のOBです。

――すごい!

ゆきの:ちょっとまえにPVで部室が使われてましたね。笑

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画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=a9d6rvlKe8E

――あとは、ベルマインツ、YAJICO GIRLの皆さんもOBだということですよね。新入生へのメッセージ動画、拝見しました。ベルマインツの盆丸さんは部室愛についてお話されていましたね。あとYAJICO GIRL、今回聴いて個人的にファンになりました。素晴らしいポップセンスのバンドです。

多くの素晴らしいミュージシャンを輩出して、卒業しても愛されていて。本当に素敵な部活だと思います。

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画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=6rUU4H8p0pk


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画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=ab5_1-sGl58


夏合宿

――合宿についても聞かせてください。

てらだ:7日間、長野のスタジオ付きのホテルに行きます。なんも練習しないですけどね。笑

――え、演奏しないんですか?

てらだ:合宿のなかでやるライブがありまして。夜通しずっとやり続けるみたいな…フェスじゃないですけど。笑

1バンド1曲ずつとか。普段とうてい、人前ではできないようなバンドを、そこで発散する、みたいな。笑

ぜんぜんマジメに練習はしないですね。笑

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画像出典:https://youtu.be/WTMB-dXEsEI

――すごい楽しそうですね。羨ましい。笑


ジャズビックバンド

――チャリオ(K.G.Swing Charioteers)について聞かせてください。ジャズのビッグバンドが軽音のなかにある、ということですよね?

てらだ:そうですね。

――すごい珍しい形態ですね。昔からそうなんですか?

てらだ:はい。実は僕の両親が、文総(チャリオ)のOBで。母親がピアノで、父親がトランペットなんですが。その時代からずっとです。

――えええ!?

てらだ:チャリオのOBでやっている、KG Sky Wing Jazz Orchestraというバンドがあるんですが。両親はいまはそこのメンバーです。

――チャリオの練習はどうなっていますか?

てらだ:コロナ前は、水曜と土曜の4、5限にチャリオが固定の練習枠を持ってまして。練習場所もさっき出てきた部室です。

――チャリオに入っているけど、軽音のバンドはやらない、という方もいらっしゃるんですか?

てらだ:そうです。

――でも、チャリオメンバーの一部が軽音バンドに参加しているから、Tower of Powerバンドでしっかりバリトンサックスが出てくる、といったことができるわけですよね。それも素晴らしいですね。

ゆきの:さっき話に出てきた、KG Sky Wing Jazz Orchestra(チャリオのOBバンド)さんとは、一度コロナ直前に一緒に部室で練習をさせていただきまして。貴重なお話をたくさん聞けたので面白かったです。

――ということは、部室にてらださんのご両親がいらっしゃったということですね?

てらだ:そうです。部室に。ご両親が。気まずかったです。笑


部活の魅力、新入生へのメッセージ

――それでは、部活の魅力についてお話を聞かせていただけたらと思います。

とうじょう:最初は変わった部活だなと思ったんですけど、技術的にも、知識的にもすごい先輩がたくさんいて…音楽がますます好きになりました。

ゆきの:いままで触れてこなかったジャンルの音楽に触れることができて、その中で自分がかっこいいと思ったものを見つけることができたので…自分の音楽の幅も広がりました。Vulfpeckも、そのひとつです。

あと「部活」ということで、ある程度システムや上下関係がしっかりしているのが、元吹奏楽部の自分としては良かったところです。

てらだ:Vulfpeckが一番いい例ですけど、「やりたいバンドをそのままできる」というのは、文総が一番強いと思います。うまい人や、音楽の趣味があう人もたくさんいて、管楽器もいるので。

あと、Vulfpeckバンドも「プラザ」(食堂と体育館の間の野外スペース)で演奏しましたが、あそこで長時間演奏できる軽音団体は、文総だけで。あそこは演奏しているだけで人が集まってくるんです。

「やりたいことをちゃんと実現できるひとが集まっている」「それを多くの人に見てもらえる機会もある」というのが、文総の魅力だと思います。


てらだ:あとは、音楽以外の、コンパ的な。体を動かしたいひとが集まるとか、お菓子作りたいひとが集まってお楽しみ会を開くとか。音楽以外のグループもすごいできてて、そこもいいところだと思います。「水曜どうでしょう」が好きなひとたちだけで集まってみたりとか。笑

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てらだ:中学、高校で誰にも理解されなかった音楽を、ぜんぶ理解してくれるっていうのも、文総のすごいとこですね。星野源とかも、もちろん好きなひとはいましたけど、みんな「恋」「ドラえもん」とかまでしか知らなくて。

「湯気」とか。そこらへんが大学で通じたときは、嬉しかったですね。

てらだ:なんでか、集まるんですよ、コアな音楽好きが。笑

――それはYouTubeの動画ですごくよく分かります。笑

てらだ:そういう集団に影響されて。先輩の楽しそうな姿に影響されて、自分から新しい音楽を聴くひともたくさん出てきますので。いい部活だと思いますね。

――わかばやしさんはどうですか?

わかばやし:音楽的なところもあると思うんですけど、大学4年間で文総で良かったことは、人とのつながり、接し方とか。上級生・下級生との接し方を学んだことも良かったと思ってて。

わりと会社に入ってからの上下関係についても、文総での経験が活きているな、と思います。文総の人間はメリハリをつける人間が多くて。飲み会とか遊ぶときは思いっきり遊んで、ライブとか真面目なときは、演奏や、仕事を真剣にやる。そのメリハリは、社会に出てからも大事だったので。人間的に重要なところを学べる、いいところだったと思います。

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――素晴らしい、すごくいい話ですね。

では最後に…これから新歓の時期になります。現役部員の方々、新入生の方へメッセージをお願い致します!

てらだ:ハードル高く思われてそうですけど、最初はみんな初心者なので。ビビらずに入ってきてほしいです。音楽だけじゃなく、合宿とか…楽しいことしかないので。

ゆきの:どんなひとでも自分の楽しめる音楽を見つけられるような、間口の広い部活です。いろんなひとがいるので…気軽に入ってきてほしいな、と思います。あと、管楽器募集中です!サックス、トランペット、トロンボーン…フルート、クラリネットも、経験問わず募集しています。

とうじょう:皆さんが思っている以上に、音楽を楽しめる部活だと思います。私がそうだったんですけど…軽音ってうるさい音楽って思ってしまうかもしれませんが、ほんとうに自分に合った音楽に出会えるはずです。

――ありがとうございます!管楽器募集中なんですね。初心者でも大丈夫なんですね?

ゆきの:大丈夫です。わかばやしさんなんて、途中からトランペット練習されてましたよね。

わかばやし:大学2年生から、「I Remember Clifford」が吹きたいがために1年間くらい吹いてましたね。笑

初めて三カ月くらいで、ダブルハイC(すごく高い音。トランペットで鳴らすのは非常に難しい)が出たんですよ。

僕、音感ないので。バーッって吹いたときに、後輩に「これなんの音―!?」って聞いたら、「それダブルハイCです!」って言われて。「やったー!」みたいな。そんなことばっかりして遊んでましたね。笑

てらだ:うるさかったですねー。あの廊下はねー。笑

わかばやし:ゴメンナサイ!笑

――ほんとうに楽しそうな部活ですね。長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。すごく楽しい時間でした。

コロナが明けて、イベントが再開したら、私も文総のライブにお邪魔させていただきたいと思います。もし良かったら、またVulfpeckをやっていただけたら最高ですね!

次はオフラインでお会いしましょう!ありがとうございました!

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関西学院大学 文化総部軽音楽部(文総)

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画像提供:「Sleepify」、文化総部軽音楽Twitter、HP(https://twitter.com/KGLMC https://kglmchp.wixsite.com/kglmc


◆著者◆
Dr.ファンクシッテルー

宇宙からやってきたファンク研究家、音楽ライター。「ファンカロジー(Funkalogy)」を集めて宇宙船を直すため、ファンクバンド「KINZTO」で活動。


◇既刊情報◇

バンド公認のVulfpeck解説書籍
「サステナブル・ファンク・バンド」
(完全無料)


ファンク誕生以前から現在までの
約80年を解説した歴史書
「ファンクの歴史(上・中・下)」


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