見出し画像

どこよりも詳しいLouis Coleまとめ / フジロック2023出演記念!来日前の大特集②

トップ画像出典:https://pointed.jp/2022/10/14/louis-cole-quality-over-opinion/

KINZTOのDr.ファンクシッテルーです。今回は、いま世界的に注目を集めているアーティスト、Louis Cole(ルイス・コール)について、どこよりも詳しい紹介をしていきたいと思います。


(この記事は前後編です。前編はこちら👇)


前回の記事では、Louis Coleの人物紹介や、サウンド・映像・歌詞の世界を深堀りしていきました。

今回の記事では続編として、2023年までのLouis Coleの経歴・歴史を紹介した後、

彼のソロ以外の活動、Knowerや、他のアーティストへのゲスト参加なども紹介していこうと思います。

それでは始めましょう!



生誕~2009年

Louis Coleはおそらく1980年代後半に、ロサンゼルスで生まれました。(現在30代だということは明かされていますが、具体的な年齢や誕生日は非公開となっています)

音楽一家に生まれたLouisは、家族の影響で幼少期から音楽に親しんでいたようです。

音楽をはじめたのはかなり早くて、たぶん4歳〜5歳くらい。キッチンにあるポットとかフライパンとかを叩くようになって、それからドラムを叩き始めたのが8歳くらい。音楽を自分で書き始めたのも11歳くらい。

きっかけがあったというよりも、もともとただそれをやるのが好きで、やらないと気が済まなかっただけなんだよね。考えてからやったというより、気付いたらやってたというか。

銀行口座の残高を見るのが怖すぎる、で大ブレイク!「Louis Cole」

Louis : お父さんは医者なんだけどジャズピアノとトランペットをやっているよ。お母さんは数ヶ月ベースをやっていたよ。僕の部屋でセッションとかしてたよ。
(中略)姉も歌が上手いしトランペットもやってるね。あとプロのシンフォニーミュージシャンの叔父と叔母が7人ぐらいいて家族で音楽をやっている人は昔から多いよ。

KNOWER来日スペシャルインタビュー【LA発超絶エレクトロ×ジャズファンク】

子どもの頃、家族でドライブに行く時にもスティックを持って出たりして、ママに『こんな時にまで!』なんて言われたりしたよ。

エキセントリックな音の魔術師 ルイス・コール インタビュー


8歳からドラムを習い始め、また11歳ごろから作曲も始めていたとのことですが、そういった中で彼に多くの音楽を聴かせ、音楽の方向性を決定づけたのは、お父さんだったようです。

僕はお父さんがいつもクールな音楽をかけていたから小さい頃からずっと自分も音楽をやるんだろうなって思っていた。小さい頃は段ボールでバスーンを作ってくれたり、自分で輪ゴムでギター作ったり、いつも周りには音楽があったよ。

KNOWER来日スペシャルインタビュー【LA発超絶エレクトロ×ジャズファンク】

あとはやっぱり父親から受けた影響が大きい。考えてみると一番影響を受けた人物は彼かもしれないね。父はしょっちゅうピアノを弾いてたし、いつも音楽を聴いていた。クラシックとかジャズとか、あとはジェームス・ブラウンとか!
だから、ある意味音楽的に僕をつくったのは父だと言えるかもしれない。

銀行口座の残高を見るのが怖すぎる、で大ブレイク!「Louis Cole」

LC:小さい頃はスティーヴィ・ワンダーが本当に大好きだった。確か4歳とか5歳とか、そのくらい。カセットテープで聴いていたんだ。その後はニルヴァーナとかグリーン・デイにハマって。その後はジェイムズ・ブラウンにどっぷりさ。それが9歳、10歳くらい。その頃はもうジェイムズ・ブラウンで頭がいっぱいだったね。それから、ずっといろんなジャズを聴いてきた。僕の父がピアノを弾くということもあって、いつもジャズかクラシックのレコードをかけていたからね。

〈ブレインフィーダー〉が贈る超絶技巧ファンキー・ドラマー
──ルイス・コール、インタヴュー


また、当時から映像制作にも興味があったとのこと。これが現在、MVを自分で作ってしまうことにつながっているのだと語られています。

Ever since I was a kid I loved drawing and animating, all that visual art stuff. I used to mess around making little stop motion animations, so I think it just kinda transferred over into making videos.

子どもの頃から、絵を描いたり、アニメーションを作ったり、ビジュアルアートが好きだったんだ。昔はストップモーションアニメーションを作って遊んでたから、今ではそれがそのままMV作りに置き換わったんだと思う。

The delightful deviance of Louis Cole

👆こちらで当時のストップモーションアニメが公開されています


お父さんの影響でジャズを多く聴き、学生時代もジャズドラムを演奏していたとのことですが、17歳の時にTony Williams(トニー・ウィリアムス。ジャズのレジェンド・ドラマー)のアルバムを聴いたことで、真剣にミュージシャンへの道を志すことになります。

──お父さんがジャズミュージシャンとのことで、音楽が身近な環境で育ったのではと思いますが、音楽に魅了された瞬間や曲は?

「17歳の頃くらいに、トニー・ウィリアムスの『エマージェンシー』というアルバムを聴いたこと。このアルバムは僕にとっては欠かせない存在で、自分でもこんなふうに演奏してみたい、と強く思ったんだ。それまでにも曲を作ったりドラムを叩いたりはしていたけれど、どのくらい本気で音楽をやっていきたいか、ということはあまり考えていなかったから」

エキセントリックな音の魔術師 ルイス・コール インタビュー

17歳くらいの頃にトニー・ウィリアムスの『エマージェンシー!』というアルバムを聴いて、自分も音楽をやって生きていこうと思った。もっとマジメにやろうと思ったんだ。それが僕の人生を変えた。

銀行口座の残高を見るのが怖すぎる、で大ブレイク!「Louis Cole」


LouisはそのままLAに留まり、有名な音大、USCソーントン音楽学校でジャズドラムを学びます。

またこの当時、学生時代のドラムは、現在のタイトなスタイルとは異なっていたことを明かしています。

昔はジャック・ディジョネット(筆者注:ジャズのレジェンド・ドラマー)のように、グリッドに全くピッタリじゃないドラムを叩いていた。彼のタイム感は緩くて最高なんだ。昔はそういうドラマーになりたくて、彼のスタイルをコピーしていた。でもそこから自分で曲を作りはじめて、自分の曲のスタイルにはそういうドラムが合わないと思ったんだ。だから作る曲のスタイルに合わせて、ドラムのスタイルを変える必要があった。そこからもっとメトロノームに沿った、グリッドにピッタリなグルーヴを叩き始めたんだ。

ルイス・コールにとって“良い音楽”とは?新作から辿る音楽遍歴と制作哲学


この大学時代には、Genevieve Artadi(ジェネヴィェーヴ・アルターディ)、Sam Gendel(サム・ゲンデル)など、現在でも頻繁に共演しているミュージシャンと多く出会っています。


練習に励み、音楽的に豊かな学生生活を過ごしたLouisは、2009年に大学を卒業した後、いよいよミュージシャンとしての生活を始めます。

しかし、まだ彼は、自分に秘められた才能に気付いていませんでした。


2010~2016年

大学を卒業したLouisは、プロのミュージシャンとしてのキャリアをどう進めていけばいいのか悩んでいました。

そんな中、YouTubeで成功していた友人のJack Conte(ジャック・コンテ)が、Louisに非常に重要なアドバイスを行います。

Jack Conte
画像出典:Why @thundercatmusic loves @louiscolemusic with LOUIS COLE

➖ どうやってYouTubeでのファンベースを作りましたか?

Louis: 僕らの友たちで「Pomplamoose」(筆者注:Jack ConteとNataly Dawnのデュオ)って人たちがいるんだけど彼らが手伝ってくれたんだよ。僕らがどうやってキャリアを進めるかわからなかった時に彼らに「YouTubeビデオ作ってみたら?」って言われたんだ。それで作ってみたら彼らがシェアしてくれて少し広まった。スタートした時はそれに助けられたね。

KNOWER来日スペシャルインタビュー【LA発超絶エレクトロ×ジャズファンク】

SASUKE ああ、あとジャック・コンテ(Jack Conte)の影響がどういったところにあるか、聞きたいです。

Louis Cole 彼なしでは今の僕はいないと言っても過言ではないよ。僕は音楽が大好きだったけど、音楽を作る側になれるとは思ってもいなかったし、クリエイターや音楽を作っている人はずっと雲の上の存在だった。それでも自分で音楽を少しづつ作り始めていたときに、彼が「君は絶対に音楽を作った方がいい。YouTubeでもなんでも音楽をリリースした方がいい」と背中を押してくれたんだ。本当に真剣に僕に向き合ってアドバイスをくれた人で、彼なしでは今の僕はいないから、彼にはものすごく感謝しているよ。

対談 LOUIS COLE × SASUKE

このアドバイスを受け、Louisは自分のチャンネルや、開始したばかりのGenevieve Artadiとのデュオ、Knowerのチャンネルを作成し、次々と動画をアップするようになるのです。


👇Louisのチャンネルで最初に投稿された動画(2010年5月28日)

👇Knowerのチャンネルで最初に投稿された動画(2010年2月26日)


ご覧いただければ分かりますが、最初から自宅でドラムを叩いていたり、DIY感溢れる動画づくりをしており、彼のセンスが最初から非凡だったことが分かります。

Louis ColeとYouTube。この2つを出合わせたJack Conteのアドバイスが、まさにLouisの人生を変えたと言っても良いでしょう。

LouisはJack ConteのPomplamooseとコラボ、お互いのチャンネルで動画をアップします。これにより、KnowerとLouisの知名度は少し上昇し、Louisは今後もこの方向性を続けていくことになり――最終的に、YouTubeで大成功を収めることになるのです。



動画をアップするだけでなく、2010年の彼は現在も活動しているプロジェクトを全て起動し、アルバムをリリースしています。

■  Louis Cole / Louis Cole(2010)


■  Knower / Louis Cole and Genevieve Artadi (2010)


■ Clown Core / Clown Core (2010)


どのアルバムも現在と比べれば成熟の度合いは違いますが、方向性は大きく変わらず、初期から彼の音楽性が一貫していることを感じさせます。

翌2011年には、Knowerでセカンドアルバムをリリース。この作品からSkrillexの影響が明確に表れ、エレクトロに接近。本人が言う「ダブステップ時代」に突入します。

Knower / Think Thoughts (2011)

画像出典:Why @thundercatmusic loves @louiscolemusic with LOUIS COLE


ここからの彼はしばらくKnowerの活動がメインになり、「KnowerのLouis Cole」として知名度を上げていきます。

■ Knower / Let It Go (2013)


2013年には、アメリカの超有名フェス、Bonnarooに出演。


2014年には、Knowerでの活動がQuincy Jones(クインシー・ジョーンズ)に認められ、Quincyが主催の音楽イベントに出演。一気に「Quincyが認めた才能」という肩書を手にします。

――なんでも、その作曲能力を認められてあのクインシー・ジョーンズの自宅に招かれたとか?

彼の自宅では、KNOWERというバンドで一緒にやってた仲間のジェネヴィーヴと、リビングでマイケル・ジャクソンの「P.Y.T」のカバーを披露させてもらった。クインシーはワカモレを食べながら座ってそれを聴いてて……とにかくノリノリだったのはよく覚えてるよ。

部屋には3人だけで、今思えばそれがオーディションみたいなものだったんだろう、って感じだよね。

銀行口座の残高を見るのが怖すぎる、で大ブレイク!「Louis Cole」
画像出典:Quincy Jones Presents: Knower


さらに、2015年にはグラミー賞常連のスーパーバンド、Snarky Puppyのアルバムに招かれ、共演。

Snarky Puppy(スナーキーパピー)とのコラボはどのようにして実現したのですか?

Louis: スナーキーパピーのジャスティン・スタントンからある日Facebookのメッセージで「君たちの音楽クールだね」って来たんだ。そこから遊んだりして、彼が「Family Dinner」にてコラボする人を探している時に誘ってもらったんだ。

KNOWER来日スペシャルインタビュー【LA発超絶エレクトロ×ジャズファンク】


2016年には、Knowerで「ダブステップ時代」の集大成とも言える作品、『LIFE』をリリース。

■ Knower / LIFE (2016)


このように着実に名声は高まってきましたが、彼はまだ「本当の名声」を手にしてはいませんでした。

私はルイスが今の“ルイス・コール”に進化する過程を見れたことが嬉しくて。例えば2016年に渋谷で一緒に路上ライブをやったときは誰もルイスのことを知らなかったし、2017年に一緒にライブしたときにはお客さんが80人ぐらいで。

ルイス・コールにとって“良い音楽”とは?新作から辿る音楽遍歴と制作哲学

しかしそんな彼の知名度を押し上げる、一本の動画が誕生するのです。



2017年~2018年

2017年、Louis Coleは「Bank Account」という短い動画をYouTubeにアップします。

すべての楽器を自分で演奏し、自分で歌い、自分でレコーディングし、ミックスして、MV編集をした、完全DIYの動画。

もちろんこの作風は初期から一貫していましたが、ついにこのスタイルで、しかも自己名義のチャンネルの動画が、大きくバズったのです。

Yet it wasn’t until 2017 that Cole began to get proper recognition. It came from an unlikely source: a short novelty track about being too scared to check his bank balance. “I’m not really interested in making music that sticks to fads; I just write what I’m feeling at the time, and at that time, I was scared to check my bank account,” he laughs.
The finished product, Bank Account, “was mainly me wanting to show off how much I’d been practising the keyboard. I never expected it to take off like it did.” A video of the track – with Cole playing keys and drums – was shared online by Björk and John Mayer and ultimately earned Knower a spot opening on Red Hot Chili Peppers’ tour that same year.

しかし、Louis Coleが正当な評価を受けはじめたのは、2017年になってからだった。そのきっかけは、"銀行残高を確認するのが怖い" という内容の短い曲だった。「僕は流行にこだわった音楽を作ることにあまり興味がなくて、その時感じていることを書くだけなんだけど、その時は銀行口座を調べるのが怖かったんだ」と彼は笑う。

完成した『Bank Account』について彼は、「キーボードをどれだけ練習してきたかをアピールしたかったんだ。まさかこんなにヒットするとは思ってもみなかったよ」と語る。Louis Coleがキーボードとドラムを演奏するこの曲の映像は、ジョン・メイヤービョークによってオンラインで共有され、最終的にKnowerは2017年、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのツアーのオープニングを務めることになりました。

Louis Cole: ‘Funk is fun but with jazz you can just go wild’

歌詞も「銀行口座の残高を見るのが怖い」という、当時の状況をユーモアに歌った内容で、こういった面白い歌詞もバズに一役買ったのではないかと思います。

レジェンド・アーティストが動画をシェアし、この動画を気に入ったレッチリのAnthony Kiedis(アンソニー・キーディス)からのラブコールがあり、Knowerはレッチリのヨーロッパツアーの前座を務めることになります。

他にもLouis Coleの才能を絶賛しているのはRed Hot Chilli PeppersのボーカルAnthony Kiedisだ。「自分がどうしてレッド・ホット・チリ・ペッパーズのツアーに出てくれって頼まれたのか、さっぱりわからなかった。ローマの会場でステージ裏にいるときも、自分がなぜここにいるのか相変わらずわかってなかった(笑) そこにアンソニー・キーディスがやってきて、僕をまっすぐ見ながらこう言ったんだ。『なあ、俺はあの「Bank Account」って歌がたまらなく好きなんだ。とんでもなくファンキーだからな』」と、Anthonyとの邂逅を振り返る。

KnowerのメンバーでもあるLouis ColeがBrainfeederと契約し"When You’re Ugly"のミュージックビデオを公開

――クインシー・ジョーンズの自宅でパフォーマンス!!ミュージシャン冥利に尽きるというか……。

でも、一番強烈な思い出っていう意味では、レッチリのツアーでメキシコシティに行った時のほうが、インパクトが大きかったかも。あんなにものすごい数の観客を前にしてライブしたことはなかったからね。

――緊張した?

そりゃ緊張したよ!だって、僕は去年までは人前で歌うことに慣れてなかったんだから。それが急にすごい数の観客を前で歌うことになっちゃったもんだから。むちゃくちゃ怖かった(笑)。でも、あれ以降、ステージ上ではそんなに緊張しなくなったかな。

銀行口座の残高を見るのが怖すぎる、で大ブレイク!「Louis Cole」


2017年には他にも、世界的な注目を集めたアルバム、Thundercat(サンダーキャット)の『Drunk』(2017)で、「Bus in the Streets」と「Jamel’s Space Ride」の作曲に参加。

こちらもLouis Cole名義で、Louisの知名度、評価がさらに高まりました。


こういった流れがあり、ついに2018年、Louisは世界的に有名なレーベル、Flying LotusのBrainfeeder(ブレインフィーダー)と契約し、ソロアルバム『Time』をリリースします。


■ Louis Cole / Time (2018)

現在もライブで演奏される「Weird Part of the Night」「When You're Ugly」などが収められており、Louisファンは必聴の1枚だと言えるでしょう。
「ダブステップ時代」は終わり、これまでのLouisの歴史をまとめたような、生演奏とエレクトロ・サウンドの融合。激しいファンクから情感豊かなバラードまで、非常に豊かな世界観となっています。

—アルバムの制作期間はどの位かかったんですか?

最初の曲ができたのが、2012年で。2016年から作曲を再開してできた。トータルで2年半くらいかかったかな。

—全体像が見えたのはいつ頃ですか?

「Wired Part of The Night」という曲を2曲目に創り上げて。アルバム全体像というより、このクオリティがアルバムとして1つの基準にしないといけないなって思えたかな。

—アルバム全体を通して聴くと、夜のある時間をテーマにした楽曲「Wired Part of The Night」からはじまって、「Night」で終わるような流れというのがある一方で、ファニーなトラックもあれば、内省的なトラックが突如でてきたり。その配置の仕方にどんな狙いがあったんですか?

狙いは全然なくって。早くてエキサイティングな楽曲とゆっくりとしたもの両方出てきたのは、トータルのことを考えないで、その1曲1曲のベストを目指した結果なんだよ。

—なぜそういうことを聴いたのかというと、楽曲単位で見てもアルバム単位で見ても表情のバリエーションが豊かだなと思って。

うん。

—たとえば「When You’re Ugly」を例に挙げてもファンクなベースサウンドに、シンフォニックなシンセや複雑なフィルインが出てくるなど、細やかなこだわりが感じられて。一方でトータルで見ると、MVを含めかなりファニーでアップリフティングな仕上がりですよね。1つの楽曲に自分の好きなものやアイデアを詰め込むことがお好きなんですか?

欲を言えばもっと詰め込めたい気持ちがあるけど、一度創ったものから一生懸命要素をカットしているんだ。音楽として重要なものだけをキープすることが大事で、後はできるだけ削ぎ落としていくんだ。

—アルバム後半「Things」では、すごくメロウで悲しげなフィーリングですよね。それから最後のトラック「Night」に至る流れとかなんとも完璧で。

この曲のメッセージは、“Life can be really unexpected.” ってこと。人生はハッピーだとか悲しいとかそのどちらか一方に振れるものではなくって。人生は常に想像もつかないようなことが起こるということを伝えたかったんだ。

—想像もしなかったこと…。レッチリの前座に抜擢されたこととか?

まさに。(笑)

超絶技巧のスーパーマルチプレイヤー 、Louis Cole (ルイス・コール) インタビュー


このアルバムによって、Louisは「KnowerのLouis Cole」ではなく、ソロ・アーティストとしての知名度を確立します。

BrainfeederはThundercatが所属するレーベルでもあり、世界的にも非常に高い評価を受けているレーベルです。ここに所属するということは、それだけ音楽ファンにとっても大きなニュースだったのです。

しかも、Brainfeederは制作に一切口を出さない、という、これ以上ない条件での契約でした。それにより、Louisは引き続き、彼独自のDIYな世界観を追求することができたのです。

You’ve obviously got a great relationship with Flying Lotus and Brainfeeder as a label. How much involvement do they have in the final output in terms of creative suggestions and the like?

You know, I kind of only accepted the deal with the requirement that I wouldn’t be open to anything like that. That’s so important to me. I just don’t want to hear it because it’s just kind of extra noise and I want to keep my head as clear as possible. So they’re like, ‘We trust you. So let’s make it. Let’s do it.’

Flying LotusやレーベルとしてのBrainfeederとは、とても素晴らしい関係を築いていますね。製作面での提案など、彼らは最終的なアウトプットにどの程度関与しているのでしょうか?

LC : いや、そういったことには一切口を出さないという条件で、Brainfeederと契約を結んだんだ。それは僕にとって非常に重要なこと。いろんな提案やアドバイスは余計なノイズになってしまうから聞きたくないし、できるだけ頭をクリアにしておきたい。だから、彼らは「君を信頼しているよ。さぁ、作ってみてくれ」って感じなんだ。

https://www.clashmusic.com/features/quality-over-opinion-inside-the-mind-of-louis-cole/


自宅にフルバンドやビッグバンドを入れて撮影したDIY動画もこの頃に撮影しており、それらは「Bank Account」以上の再生数を叩き出しました。

もはやLouis Cole、そしてKnowerも、完全に成功したアーティストになったのです。

そして、その勢いは留まることを知りません。


2019年~2023年

Louis Coleは世界中でライブを行い、編成も「Louis Cole Big Band」と呼ばれるスタイルを取るようになります。


しかし2020年になるとパンデミックが始まってしまい、Louisもツアーに出ることができなくなってしまいます。パンデミック最初期は、Knowerで自宅でのライブをアップしました。


その後は徐々に外での活動を再開し、2021年には世界的に有名な混成オーケストラ、Metropole Orkest(メトロポール・オルケスト)と共演。

また、Thundercatと共作した「I Love Louis Cole」が収録されたThundercatのアルバム『It Is What It Is』(2021)が、第63回グラミー賞にて最優秀プログレッシブR&Bアルバム賞を受賞しました。


そして他のアーティストと同じように、このパンデミックの時期がLouisにとってもアルバム制作に使われました。2018年から制作していたアルバムを仕上げ、2022年にBrainfeederから『Quality Over Opinion』をリリースします。


■ Louis Cole / Quality Over Opinion (2022)

グラミー賞にノミネートされたバラードの「Let It Happen」、DIYファンクの名曲「I'm Tight」など、前作『Time』の方向性を引き継ぐような非常に豊かなジャンルのアルバムとなっています。

―前作『TIME』からリリースの間隔が空いていますが、いつ頃から作り始めていたんですか?

ルイス:前作を作り終えてからすぐに着手したから、制作期間は4年くらい。ただ、毎日やっていたわけじゃなくて断続的にね。アルバムの中には前作よりも前に作っていた曲もある。1曲目の「Quality Over Opinion」、7曲目の「Failing in a Cool Way」、10曲目の「True Love」は、未完成のまま残しておいた曲を仕上げたものだ。

―それらの曲は、前のアルバムには合わなかった?

ルイス:というよりは、なんか納得がいかないから、デモ状態のまま放っておいたって感じかな。僕はとにかく書きたいことがいっぱいあるから、そういう作りかけの曲がたくさんあって、ずっと気にかけているんだよ。それで、思い出した時にふと聴いてみたら、急にピンとくることがある。今回もそのパターンだった。

―あなたはソロ作をほとんど一人で作っていると思うので、そんなに関係なさそうな気もしますが、パンデミックの前後で何か違いはありましたか?

ルイス:いくつかあるよ。例えば、ツアーがなくなって時間の余裕ができたことが、昔のアイデアを完成まで漕ぎ着けることに繋がった。頭のなかを整理できたから、さっき挙げた数曲を完成させられたんだ。あとはアイデア探しも捗ったし、サウンドについてのリサーチもどんどん進めることができた。これも家にいる時間が長かったおかげだね。

それから、世界中に悲しみや怒りが満ちているなかで「自分が言いたいことと、みんなが聴きたいことは一致するのだろうか」と考えたりもした。そういったことを模索する時間にもなったよね。結果的に「こういうことを歌いたい」という思いを、何とかまとめることができたのが今回のアルバムだとも思う。

―歌詞にもメッセージみたいなものがかなり入っている?

ルイス:そうだね。でも、誰もが世界の現状について語っているなかで、僕がいまさら語るようなことはしたくない。それで結果的に、僕のパーソナルなことを歌うことにした。それは僕にしか書けないユニークなことだし、個人的な見解として何かを伝えることが、僕にとっては最適なやり方だろうと思ったんだ。

―パーソナルなことって、例えばどういうことですか。

ルイス:ハートブレイクがあったんだよ。あと、健康面にも問題があった。どちらもすでに解決しているんだけど、その経験によって世界の見え方も変わったんだよね。他にはハッピーな状況を歌った曲もあるし、みんなとの繋がりを歌った曲もある。最終的にいろんなことを歌っているアルバムになったね。

ルイス・コールが明かす、超人ミュージシャンが「理想のサウンド」を生み出すための闘い

──その上でアルバムのコンセプトとかについても聞きたいんだけど、そもそも『Quality Over Opinion(意見よりもクオリティ)』ってどういう意味?

全てのことに言えると思うんだけど、音楽があまりにも個人的な意見や感想をベースに消費されていることに疑問を感じるときがある。例えばスポーツとか食べ物って「うまいかどうか/良いかどうか」が評価軸の大部分を占めている。「マイケル・ジョーダンは、あの選手よりも上手いし良い成績を残している」みたいに。もちろん意見や個人の感想が入る余地はあるけど。

音楽では、本当に細部まで気にかけられていて、魂を注ぎ込んだような作品が得るべき成功を得ないことも多い。逆に単に話題になるだけの音楽が成功することも多い。それで一般的な音楽の「良い/悪い」という意見に対して疑問を感じることがある。なぜならやはり音楽のクオリティというものには、ある程度の尺度と基準があると思う。音楽への評価は全て個人の主観だって言う人もいるけど、音楽のレベルを定義づけられるクオリティの基準というものはあると思うんだ。「この音楽は実際に良いのか?」ってね。

世の中には全く心が入ってなく音楽に対する熱意のないような意見が飛び交ってて、そういう意見は声が大きいから多くの人に届く。だからたまにそれがウザいと思うときもあるし、音楽のクオリティにフォーカスしてほしいと思うときもある。でも全員が音楽に対して熱心なわけじゃないし、そういうものなんだろうけど。

ルイス・コールにとって“良い音楽”とは?新作から辿る音楽遍歴と制作哲学


2022年5月にはThundercatのドラマーとして来日。また、12月には「Louis Cole Big Band」で来日を果たしました。


2023年5月には、未発表曲、過去のデモ曲を収録した『Some Unused Songs』をリリース。さらに6月には、Knowerで『KNOWER FOREVER』をリリースしました。


■ Louis Cole / Some Unused Songs (2023)


■ Knower / KNOWER FOREVER (2023)


そして、ついにフジロック初出演が決定。2023年夏、ホワイト・ステージ2日目のトリとしてステージに登場します。


以上が駆け足ではありましたが、Louis Coleの歴史でした。続いては、Knower、Clown Core、そしてゲスト作品のまとめに入ります。


Knower

Knower(ノウアー)はLouis Coleを語るうえでは避けては通れない、非常に重要なバンドです。

2009年に結成。大学時代に出会ったGenevieve Artadi(ジェネヴィェーヴ・アルターディ)とのデュオが基本形ですが、フルバンドで演奏することもあり、幅広い活動スタイルになっています。

Genevieve Artadi
画像出典:Crash The Car - KNOWER
フルバンドでの演奏例
画像出典:Crash The Car - KNOWER

バンド名の由来は、本人たちの口から語られています。

―ノウワーという名前の由来は?

ルイス:スイスにいた時、友人の車に乗せてもらってる間に名前を考えてたんだ。なかなか決まらなくてさ。道中で、運転手に「このあたりで美味しいドーナツ屋ない?」って聞いたら、彼は「知らない。僕はドーナツ・ノウワー(Knower)じゃないんだ」って言ったんだよ。

ジェネヴィーヴ:「ノウワー!? ねえ、今の聞いた!?」って、そんな感じだったよね(笑)。

ルイス:ああ。まさにぴったりだと思ったんだ。たぶん正しい英語なんだと思うけど。

ジェネヴィーヴ:きっと正しいけど、誰も使わない。

ルイス・コールとジェネヴィーヴが今こそ語る「KNOWER」という奇跡的コンビの化学反応


音楽的には実はLouisのソロと大きな違いはなく、どちらもファンクやバラードを演奏し、Louisのプレイスタイルも同じになっています。ただひとつ違うのは、LouisのソロにはGenevieveが参加したりしなかったりである事に対して、Knowerでは必ずGenevieveが参加しているということです。


コンセプトとしては「ファンクグルーヴをやるならできるだけハードに、バラードをやるならできるだけ深く」というものが掲げられています。

──前にルイスとジェネヴィーヴをインタビューしたとき、KNOWER結成当時について聞いたと思うんだけど、そのとき「2人でハードで激しいファンクをやろう」って言ってたのが印象的だった。

そう。最初、ジェネヴィーヴが曲のアイディアを持ってきて、僕はクソ弱くて普通のサウンドを乗せたんだ。みんながそういうものを求めていると思っていたし、安全にやり過ごそうと思っていた。そしたらジェネヴィーヴは「このクソみたいなものはなに? なんでいつも友達とライブするときにやってるようなクレイジーなことをやらないの?」ってちょっと怒ったんだ(笑)。だからそこから「ファンクグルーヴをやるならできるだけハードに、バラードをやるならできるだけ深く」という理念を持ってKNOWERの音楽を作っていった。

ルイス・コールにとって“良い音楽”とは?新作から辿る音楽遍歴と制作哲学


また、音楽的な影響に関しては、このように語られています。

➖ KNOWERってどのような音楽に影響されているんですか?

Louis: 最近(筆者注:2016年に)作っているものに関してはSkrillex(スクリレックス)が自分の音楽人生に多大な影響を与えているね。
それ以外だとマイケル・ジャクソン、ジェームス・ブラウン、マイルス・デイヴィス、トニー・ウィリアムス、トーキング・ヘッズ、ビートルズ、ステレオラボ、ラッシュ、ビーチ・ボーイズ、ハービー・ハンコック、ジェームス・チャンスとか…やっぱりジャズはかなり聞くよ。
後はリゲティ、モーツァルト、バッハみたいなクラシックもかなり影響受けていると思う。多すぎて全員の名前は言えないや。

KNOWER来日スペシャルインタビュー【LA発超絶エレクトロ×ジャズファンク】


前述のように2016年の『LIFE』までの数作のアルバムが「ダブステップ時代」となっており、かなりSkrillexに影響されたエレクトロ・サウンドになっています。

このあたりは「The Government Knows」、また「Butts Tits Money」などを聴いていただくのが分かりやすいでしょう。

この2曲は歌詞も非常に独特で面白く、そこからKnowerに興味を持った方々もいたのではないかと思われます。

The government knows when you masturbate
The government knows when you feel alone

政府は知っている お前がいつ自慰にふけっているか
政府は知っている お前がいつ孤独を感じているのか

THE GOVT. KNOWS - KNOWER

Butts and tits and money
Because I’m broke and ugly
尻と乳とカネ
だって私は貧乏でブスだから

BUTTS T**S MONEY - KNOWER

また、Knowerの2人は『The Lego Ninjago Movie』(2017)のサウンドトラックに曲を提供。この曲はエンディングロールで流れ、これもダブステップ時代のサウンドになっています。


現在はバンドサウンドを重視しており、さらにLouisのソロ作と近い内容になっています。あまり区別せず、どちらもLouisの音楽世界なのだと思っても良いかもしれません。


2016年8月、また2018年5月に来日してライブを行いました。ここ数年はLouis Cole名義での来日だったのでKnowerでは来ていませんが、Knowerも久しぶりに『KNOWER FOREVER』(2023)をリリースしたので、そろそろまた来日があるかもしれません。

※2024年1月追記:Knowerは2024年3月の来日公演が決定しました。


Clown Core

Clown Core(クラウン・コア)は、Louis Coleが参加していると言われている覆面デュオのバンドです。

非常にアヴァンギャルドなバンドなので、百聞は一見に如かず、こちらの動画をご覧ください。


いかがだったでしょうか。グラインドコア、エクストリームメタル、フリージャズなどの要素が渾然一体となった、何ともいえない不思議なバンドです。

こちらは覆面バンドで、プレイヤーなどの正体は一切明かされていないのですが、

ドラマーの手足が長い体躯、叩く時に常に背筋がピシッとしている姿、プレイスタイル、両手が交差しないオープンハンドという叩き方、さらに動画の編集スタイルなど全てが非常にそっくりであることから、Louis Coleがドラム演奏・動画編集を行っていると言われています。


Clown Coreは2008年には活動を開始。Louisは大学、USCソーントン音楽学校に通っていた頃であり、同じ大学に通っていたサックス奏者のSam Gendel(サム・ゲンデル)と結成したデュオであると言われています。

Sam Gendel
画像出典:The Abyss - KNOWER

👆こちらが2008年の結成当時の動画ですが、現在とまったく方向性が変わっていません。

LouisとSam Gendelとは非常に仲が良く、以下のようなインタビューでふたりの絆についても語っています。

We went to music school together. We met when we were 18 and kind of grew together. I remember there was one summer where I was like, ‘Hey, I actually want to be good at drums’. And I remember Sam at the same time being like, ‘Yeah, I want to be really great at saxophone too.’ We had this summer where school was out and people went home for the summer, but we stayed and we practised for four or five hours every day. (中略)We would get out of our practice rooms and we would both just look like we had been through something. We shared those moments a lot and I think it made us really close, musically. And we’ve been collaborating on and off, like the Mean It music video or the KNOWER stuff. We definitely have this very kindred energy. Actually I don’t even know what the word Kindred means… We have a very similar energy and intensity when we played, so it just feels so comfortable whenever we play.

僕たち(筆者注:LouisとSam Gendel)は一緒に音大に通っていたんだ。18歳のときに出会って、一緒に成長していった。僕が覚えているのが、ある夏、僕が「なぁ、ドラムがうまくなりたいよ」と言ったら、同時にサムも「ああ、僕もサックスが上手になりたい」って返してきた。その後夏休みになって、みんな帰省したんだけど、僕たちは残って毎日4、5時間練習したんだ。(中略)

練習室から出ると、二人とも何かをやり遂げたような顔をしていたよ。そういう時間をたくさん共有したことで、僕たちは音楽的にとても親密になれたと思う。そして、『Mean It』のMVや、Knowerの作品のように、僕たちは時々一緒に演奏しているんだ。僕たちは間違いなく、とても似たようなエネルギーを持っている。演奏するときのエネルギーやテンションがとても似ているから、いつ演奏してもとても心地よく感じるんだ。

Quality Over Opinion: Inside The Mind Of Louis Cole


彼らは2010年にアルバム『Clown Core』をリリースした後、しばらく活動が止まっていましたが、Louisのソロが軌道に乗り始めた2018年に活動を再開してアルバムをリリース。

これが非常に面白い作品で、仮設トイレの中ですべての演奏を行う、『Toilet』(2018)というアルバムでした。

画像出典:Toilet - Clown Core
画像出典:Toilet - Clown Core


その次は、車の中ですべての演奏を行う、『Van』(2020)をリリース。



画像出典:existence - clown core

またLousiは、Clown Coreではドラムとキーボードを同時に演奏していますが、このスタイルは彼が影響を受けていると公言し、共演もしているマルチプレイヤー、Nate Woodのスタイルだと思われます。

Nate Wood
画像出典:Nate Wood - fOUR: NPR Music Tiny Desk Concert


Clown Coreは2023年に初のツアーを行い、これまでのMVをステージに持ち込んだような演出で大喝采を浴びました。


Louisのファンベースは日本に多いので、もしかしたら、いずれClown Coreでも日本に来てくれるかもしれません。

※2024年1月追記:Clown Coreは2023年11月に来日、FESTIVAL de FRUE 2023に出演しました。


ゲスト参加作品

では、最後にゲスト参加作品について、オススメなものをいくつか挙げて終わりにしたいと思います。


◆ I Love Louis Cole / Thundercat (2020)

こちらはThundercatのアルバム『It Is What It Is』(2021)に収録。前述のとおり、このアルバムが第63回グラミー賞にて、最優秀プログレッシブR&Bアルバム賞を受賞しました。

内容はまさにLouis Coleと言えるような、現代ジャズとドラムンベースが融合したかのようなタイトなドラムに、これもまさにThundercatらしい、複雑なハーモニーが奏でられます。複雑ですがとても美しいサウンドで、こんなにハードコアなのにこんなに美しい音ってあるのか、と思わされます。

製作の経緯に関してはLouisがインタビューで語っているので、そちらも面白いです。

You’re really good friends with Thundercat. He dedicated the track ‘I Love Louis Cole’ on ‘It Is What It Is’ to you. That track was built around a demo that you sent him, right? How did that kind of develop?

I think I was writing stuff for my album before this new one, Time – around that era, like 2016. He’s just like, ‘Do you want to work on stuff?’ and I was like, ‘Come over’. So he brought his bass and he recorded three songs and that was one of them. That one stuck out to both of us, so I was like, cool, I’m gonna choose the bass lines that he recorded, and then the solo and all that. Then I sent it to him and he just recorded these vocals that were about us hanging out and it was just really nice. I named the demo something like ‘Rock 2016’, or some stupid thing, but then he sent his demo back, called ‘I Love Louis Cole’. And then he was like, ‘I want to put this on my album.’ So I wrote and recorded the verse that I sing – the second verse – and, you know, it’s based on true events, like him coming over to our house. He doesn’t drink anymore, but he used to drink and it was pretty loose. It was very fun.

サンダーキャットとは本当に仲がいいんですね。彼は『It Is What It Is』の「I Love Louis Cole」というトラックをあなたに捧げました。あのトラックは、あなたが彼に送ったデモをもとに作られたんですよね?どのようにそういう展開になったのですか?

僕がアルバム『Time』の前に、自分の曲を書いていたんだと思うんだけど、その頃――2016年頃だったかな。彼が『何か作業しないか』って言うから、『じゃあうちに来てくれ』って返した。それで彼はベースを持ってきて、一緒に3曲録音したんだけど、そのうちの1曲がこれだった。この曲が僕ら2人の心に刺さったから、彼が録音したベースラインを活かして、それ以外のパートも全部作ってみようと思ったんだ。

そして、それを(筆者注:デモとして)彼に送ったら、彼はその上にボーカルを録音してくれて、本当に素敵なものになった。僕はそのデモに「Rock 2016」とかバカな名前をつけたんだけど、彼は「I Love Louis Cole」っていう名前にして送り返してきた。そして、彼は「これを僕のアルバムに入れたい」って言ったんだ。

それで、僕が歌っているヴァース(筆者注:Then you fell asleep on the laundry in my room――それから君は僕の洗濯物のうえで眠ってしまった、などの歌詞)も書いてレコーディングしたんだけど、それは実際にあったことで、彼が僕の家に遊びに来た時のことなんだ。彼は昔はよくお酒を飲んでいて、かなりルーズなヤツだった。とても楽しかったよ。

Quality Over Opinion: Inside The Mind Of Louis Cole


◆ It Gets Funkier IV /// Vulfpeck (2018)

Louisと同じくLAで活動する、DIYバンドのVulfpeck(ヴォルフペック)。彼らのアルバムにも、Louisはゲスト参加しています。

画像出典:VULFPECK /// It Gets Funkier IV (feat. Louis Cole)

USCソーントン音楽学校で同級生だったRyan Lermanのスタジオで行われたセッションで、こちらは高速ファンク。Louisらしいタイトなドラミングが最高です。曲の終わりにCory Wongが「LC!」と叫んでいるのが印象的。

LouisとVulfpeckは仲が良く、他にも2018年にライブで共演しています。



◆Scary Goldings

Scary Goldingsは、先ほど名前が挙がったRyan Lermanらが率いる現代のジャズファンクバンド。LouisとRyanは親友なので、このバンドにもLouisはゲスト参加しています。

ここでは単一の曲ではなく、2020年以降の複数の曲に参加しているのです。

ジャンルは古典的なジャズファンク、Louisのスタイルとは正反対のはずなのですが、Louisは自分のスタイルを崩すことなく、見事に期待に応えた演奏をしています。

Louisはレコーディングだけでなく、ライブにも参加。パリで行われたジャズフェスティバル、「Jazz à la Villette」のステージで、John Scofieldらと共演しました。




まとめ

最後に、Louisについて調べていた時に、これは最後にぜひ紹介したい、と思ったインタビューの言葉を引用して終わりにしたいと思います。

常にDIYで自らの道を切り拓いている彼が送る、最高のアドバイスです。

──これはインタビューをする度に全員に聞くし、前回インタビューしたときも聞いたと思うんだけど、今カムアップしているアーティストにアドバイスを伝えるとしたら?

音楽で成功するのは本当に難しくて。だってみんなの夢だし、もし成功できたなら、それは最も素晴らしい人生だと思う。成功した場合、本当に運が良かったと言える。もしたくさん努力をしたとしても、努力をしたくて、努力ができる環境だったという意味でも運が良かったと言える。

だからもし制作が楽しくなくなってしまっても、音楽を毎日愛せる方法を探そう。大きい視点で見たらもちろん全部楽しいんだけど、僕も作業が楽しくなくなるときがある。常に楽しいわけじゃなくて、ベッドから起き上がるのが辛いときもある。そのなかでも、どうにかして制作のプロセスを愛せるように、音楽について愛している要素を見つけたり、再確認しよう。

ルイス・コールにとって“良い音楽”とは?新作から辿る音楽遍歴と制作哲学


誰しも自分の制作に疑問を持ったり、その道のりの果てしなさに心が折れそうになってしまう時が来ると思います。

そんな時でも、なんとか制作を楽しんで、それを愛していけるように――つまるところそれは、愛を持って続けていくことが大事だ、その積み重ねの先に結果はついてくる、というメッセージなのではないでしょうか。

もちろんよく言われていることではあるでしょうが、7年間上げ続けた動画が急にバズってレッチリのツアーに参加できるようになった人物が語ると、その言葉の重みが違うと思います。


また同じインタビューで、Louisはこうも語っています。

これはたくさん経験があるミュージシャンにも言えることだけど、「音楽を仕事にするためにはこういうスタイルで演奏しないといけない」みたいな風潮がある。でも正直、自分が愛していて、最も熱意を持った要素にフォーカスしたほうがいいと思う。自分のテンションが最も上がる音楽を極めたほうがいい。あとはちゃんと仕事や制作に対する理念を持って、真摯に向き合うことかな。

ルイス・コールにとって“良い音楽”とは?新作から辿る音楽遍歴と制作哲学

時に――「好き」と「戦略」のどちらを取ればいいのか?売れているジャンル、売れているサウンド、売れている絵、売れているマンガ、売れているものを作ったほうがいいんじゃないか? ということに悩むことがあると思います。これも、どんなアーティストにも一度は訪れる悩みでしょう。

ですが、Louisはそれについてはハッキリと、「最も熱意を持った要素」「自分のテンションが最も上がる音楽」を選んだほうがいいと語っています。つまり、「好き」を選んだほうがいい、と言っているのです。

これは先日私が行ったGinger Rootのインタビューでも、彼が同じようなことを語ってくれていました。

──好きなものを追求する、という話で……DIYアーティストとして成功したい人達へのアドバイスとして、「好き」と「戦略」の、どちらを優先するのが良いと思いますか?

そうですね。成功を目指せば……結果に失望することもあります。だから、DIYアーティストになろうとしている人たちは、「どうやって続けていくのか」を考えてみてください。僕はただ、好きだから色々なことをやれています。最も重要なのは、自分が楽しんでいるかどうか、自分が作っているものが好きかどうか。自分が作っているものが好きでなければ、意味がないと思います。

Ginger Root |Interviewer:Dr.ファンクシッテルー by Qrates

LoiusもGinger Rootも、どちらもDIYアーティストで、自身の「好きなもの」をごちゃ混ぜにしたサウンドで世界的に成功しています。彼らの言葉には、実際にそうやって成功してきた人物にしか出せない、説得力があるのではないでしょうか。



以上が長くなりましたが、Louis Coleに関するどこよりも詳しいまとめです。前回と今回の記事を読んでいただければ、彼に関してある程度は詳しくなるのではないかと思います。

この後、フジロックフェスティバル2023、ホワイト・ステージのヘッドライナーで、彼の来日が控えています。

きっと、素晴らしいステージを繰り広げてくれることでしょう。そしてそれだけではなく、これからもきっと、最高のアルバムと動画を出し続けてくれると思います。



◆著者◆
Dr.ファンクシッテルー

宇宙からやってきたファンク研究家、音楽ライター。「ファンカロジー(Funkalogy)」を集めて宇宙船を直すため、ファンクバンド「KINZTO」で活動。


◇既刊情報◇

バンド公認のVulfpeck解説書籍
「サステナブル・ファンク・バンド」
(完全無料)


ファンク誕生以前から現在までの
約80年を解説した歴史書
「ファンクの歴史(上・中・下)」


いいなと思ったら応援しよう!

Dr.ファンクシッテルー
もしよろしければ、サポートをいただけると、大変嬉しく思います。いただきましたサポートは、翻訳やデザイン、出版などにかかる費用に充てさせていただいております。いつもご支援ありがとうございます!