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#14 サステナビリティは儲かるか

こんにちは、GTです。

最近とある機会でいろいろな方と話すことがあったんですが、そこで話したコンサル業をされている方が「サステナビリティに取り組めば企業は儲かる。取り組んでいない企業はそこに気付いていない」と言っていました。
その発言に対して思うところがあったので、今回はサステナビリティと企業の儲けについて私見を書いていきたいと思います。


企業のサステナビリティの現在地

ここ数年の間で「カーボンニュートラル」だったり「サーキュラーエコノミー」、「バイオダイバーシティ」といった環境に関するイシューの重要性が高まっています。

実際に世界経済フォーラムのグローバルリスク意識調査では、今後10年間での重大なグローバルリスクとして、TOP10に環境分野のリスクが5つランクインしています。具体的には、上で書いたイシューに関連するような異常気象、生物多様性の喪失、天然資源の不足などが挙げられています。

また、世界の多くの国がカーボンニュートラルを目指すことを宣言したり、ヨーロッパを中心に製品のCO2排出量を一定以下にすることやリサイクル材料を一定比率以上使用することを定めたルールづくりをしたりしていることで、企業がサステナビリティに取り組むよう圧力がかかっています。

企業としても国に足並みを揃えてカーボンニュートラルを長期目標に設定して具体的な取り組みを行ったり、ルールを遵守するための対応を進めたりしています。

ただし、いわゆる大企業だったりルールに関係する企業が主に取り組んでいて、中小企業にはそんな余力はないというのが実情だと思います。

サステナビリティに取り組む必要性

ここからは取り組んでいる企業にとってのメリットを考えていきたいと思います。
企業のメリットとして財務三表で考えると、損益計算書での売上や利益(粗利益、営業利益)が上がること、貸借対照表での純資産が増えること、それらによりキャッシュフローの収入が増えること、といったことが挙げられるでしょう。他には企業価値、株式の時価総額が上がる、ということもあると思います。

ではサステナビリティに取り組むとこれらの数字はどうなるでしょうか。

結論としては、ほとんど変わらない、利益については下がることもある、といったところだと思います。

売上は顧客に高く売れるか多く売れることが必要ですが、少なくとも現在は環境に良い(例えば生産工程で発生するCO2が少ない)製品だからといって高く買ってもらえるケースはまだ少ないと感じます。製品の購買決定要因のフレームワークとしてQCD(Quality・Cost・Delivery)が用いられたりしますが、もちろん価格が大きな要因であることと、環境に良いこと以外のQuality(例えば要求される性能を満たしていることなど)が優先されます。要するに環境に良いかどうかは二の次ということになります。
さらに、生産工程のCO2を減らそうとする場合、基本的には省エネや再生可能エネルギーの導入のための投資や支出増が必要になるので、売上が変わらなければその分だけ利益が下がります。

純資産や時価総額は株が買われたり株価が上がったりすることが必要ですが、その要因としては環境に良い取り組みをしているかどうかよりも、業績の良し悪しや将来の成長への期待が大きく影響します。極端な例としては、NVIDIAの時価総額が世界首位になったニュースがありましたが、それは環境云々ではなくAI時代を見据えた高成長を期待したところが大きいです。

ここまでサステナビリティに取り組むメリットがない論調で書いてきましたが、それでもなぜ取り組んでいる企業がいるかと言うと、やるメリットがあるというよりもやらないことによるデメリットを回避することが大きいと考えています。

企業の大口株主であることも多い機関投資家は投資先を選ぶ基準の一つとしてサステナビリティを掲げていて、石炭火力への投資をしないなど具体的な動きをとったりしています。これはサステナビリティに取り組む企業に投資するというよりは、そういう取り組みをしない企業には投資しないというネガティブスクリーニングの要素が強いため、取り組んでいるからといって投資が集まることにはなかなかならないでしょう。
取り組みをしない他のデメリットとして、レピュテーションリスクがあります。サステナビリティに取り組んでいないことで世間から叩かれて企業イメージが低下すると、製品が売れにくくなり売上の減少に影響する可能性があります。

サステナビリティに取り組む主な理由としてデメリットを回避することと書きましたが、これは現時点での理由です。
サステナビリティの取り組みはこれから先も継続し、さらに難易度が高いものが行われるようになっていくと思いますが、その中で取り組む理由が2つのフェーズで変化していくと考えています。

1つ目のフェーズでは、取り組みの価値が認められて、上で書いたような売上や利益の向上に繋がることが理由になります。時間軸として、カーボンニュートラルは多くの場合2050年を目指しているのでまだまだ先であること、ヨーロッパのルールも実際に発効されるのは2030年前後だったりと、現時点では時間の余裕があります。だから今はまだ価格を上昇できるまで至っていないわけです。ただし時間が経つにつれてタイムリミットが近づいてき、顧客企業が必要性に迫られた段階で環境に良いものを多少高くても買う必要が出てくるタイミングが来ます。この流れは2030年~2040年くらいに来るんじゃないかと思います。
2つ目のフェーズでは、環境に良い取り組みをすることが当たり前の世界になり、逆にそうでないと売れなくなることが理由になります。このフェーズでは、環境に良いということがビジネスでのドレスコードになっています。環境に良いことが付加価値に直結すると当然多くの企業がそこに向かうことになりますが、そうなると環境面での企業や製品の差別化要素、そして付加価値は小さくなります。そのとき、付加価値だったものは必要条件、つまりドレスコードに変わることになるでしょう。これは2040年~2050年くらいに来る流れではないでしょうか。

サステナビリティのドライビングフォース

サステナビリティの取り組みが進むようになるためにはもちろん理由が必要で、そのドライビングフォースとして国や世界の目標、ルールなどの外圧の話をしてきました。

他にも重要なドライビングフォースはあって、それは私たち消費者の行動、価値観です。

サステナビリティに取り組んでも売上は変わらないと書きましたが、なぜ売上が変わらないかと言うと企業の顧客、もっと言えば最終的な顧客である消費者がそこに対価を払うことが醸成されていないからです。仕事での企業との話の中でも価格に反映できないので、再生可能エネルギーの導入などのコストが増えるサステナビリティの取り組みに踏み切れないという声を聴くことがあります。
同じような製品が複数あったとき、消費者が多少高くても環境に良い製品を選べばその企業の売上は増えます。売上が増えるとそこにコストをかける合理性が生まれて、さらにサステナビリティの取り組みが進み、他の企業も追随しようとしてくるでしょう。

私たちがモノを買うときの判断基準を少し変えるだけで、世界をよりよい方向に変えることができるかもしれません。
モノを買う判断基準の一つに、この製品は環境に良いのか、この製品を作っている企業は環境に良い取り組みをしているか、ということが今後少しずつ加わって価値観として浸透していくことを期待したいと思います。

ではでは、また次回お会いしましょう。

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