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#3 CO2を実質出さない電車~カラクリとカーボンニュートラルへの効果~

こんにちは。GTです。
今回はCO2排出量実質ゼロの電車についての記事です。

都心部ではCO2排出量実質ゼロの電車を運行する鉄道会社が増えてきました。
では、CO2排出量「実質」ゼロとはどういうことか、CO2排出量実質ゼロの電車を利用することでカーボンニュートラルにどのように繋がるかについて書いていきたいと思います。


CO2排出「実質」ゼロのカラクリ

都市部に住んでいる方は電車を使う頻度が多いかと思いますが、電車を動かすためには当然エネルギーが必要です。
電車を動かすエネルギーとしては電力が使われていることが多いです。(北海道などの一部地方では燃料で動かしている場合もありますが)

CO2排出量実質ゼロの電車は、この電車を動かす電力の全てを再生可能エネルギー(再エネ)由来の電力で賄うというものです。

では、どのように再エネ由来の電力を確保しているかと言えば、鉄道会社がその電力を作っているのではなく(作っている電力も一部あるかもしれませんが)、多くは電力会社から買っています。

電力会社は化石燃料や再エネなど様々なエネルギー源から電力を作っています。
電力会社が作った全ての電力を100、そのうち再エネ由来で作った電力が20あるとすれば、再エネ電力を供給する契約プランの中でその20の電力をプランの契約者、今回のケースで言えば鉄道会社に供給しているわけです。

ただし、再エネ由来の電力を直接供給しているというわけではありません。
CO2排出ゼロに「実質」と書いてあるのは、実際に鉄道会社、そして電車に供給されている電力が化石燃料由来か再エネ由来かを区別することはできないからです。
電車を動かすのに使っている電力が本当に再エネから作られた電力なのかは誰にもわかりませんが、プランとして再エネ由来の電力の20の中から割り当てているので再エネ由来の電力を使っていると言えるよね、という決めごとになっています。
「実質的に」再エネ由来の電力を使っている、再エネ由来の電力は作るときにCO2を出さない、だからCO2排出量「実質」ゼロである、というわけです。

利用によるカーボンニュートラルへの効果

CO2排出量実質ゼロと言っても、電車を動かすにはエネルギーが必要で、利用者が増えると当然必要になるエネルギーも増えます。
では、CO2排出量実質ゼロの電車の利用が増えることで脱炭素、すなわちカーボンニュートラルに向かっていくのでしょうか。

結論としては、利用が増えることでカーボンニュートラルに繋がる、と考えています。

なぜCO2排出量実質ゼロの電車の利用が増えるとカーボンニュートラルに繋がるかと言うと、

  • CO2排出量実質ゼロの電車の利用客が増えれば、その分だけ電車を動かすのに必要な電力は増えるが、利用客がそれまで利用していた車や他の電車のエネルギーは減る。

  • 鉄道会社は必要な電力が増えてもCO2排出量実質ゼロと言い続けたいため、再エネ由来の電力で賄おうとすることで再エネ由来の電力のニーズは増える。

  • 再エネ由来の電力のニーズが増えると、電力会社が再エネ由来の電力を増やすインセンティブが大きくなる。

  • 再エネ由来の電力を増やすインセンティブが大きくなることで、再エネ由来の電力が増えた分だけ化石燃料由来の電力が減る。

  • 化石燃料由来の電力の割合が減るため、カーボンニュートラルに繋がる。

というのがざっくりとした理由です。
(実際には、再エネ由来の電力が増えると電力全体の需給調整が難しくなる、再エネ由来の電力の供給量は急には増やせない、など制約条件はありますが、単純化するためここでは脇に置きます)

カーボンニュートラルを目指すためには電力を化石燃料由来から再エネ由来に変えていくのがいいんですが、そこには経済合理性の課題があります。
再エネ由来の電力って化石燃料由来の電力よりも高いんです。少なくとも現在の日本においては。

でもニーズがあれば経済合理性の課題をクリアすることができます。
ここでのニーズというのは鉄道会社のニーズではなく、電車の利用者のニーズを指します。より具体的には、カーボンニュートラルに貢献したいというニーズです。
極端な話をすれば、鉄道会社がいくら再エネ由来の電力を使っても、電車の利用者にニーズがなく利用が増えなければ鉄道会社にとってはコストでしかありません。
でも、利用者にニーズがあれば利用が増えて鉄道会社の売上が増えることになるので、多少高くても再エネ由来の電力を使おうとなるわけです。

詰まるところ、私たち消費者のニーズ次第でカーボンニュートラルを進めることもできるし、反対に止めることにもなり得ます。
できる範囲でCO2排出量実質ゼロの電車などCO2をあまり出さない製品、サービスを使うことが、小さいながらも世の中を動かす原動力になるでしょう。
また、鉄道会社に利用者のニーズを見える化するために「CO2を実質出さない電車だからいつも利用しています!」といったメッセージを伝えると更に大きな原動力になるかもしれません。

ではでは、また次回お会いしましょう。


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