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読書日記『シャドウ』

注:敬称略。ネタバレあり。

感想

 凰介くん、強い子になったなぁ…というのが一発目の感想。小学5年生って、様々な面で成長するタイミングだと思う。気持ちの面でも、義務教育の面でも、人間関係の面でも。そこには何かしらのトリガーがあると思うのだが、凰介くんの成長のトリガーはとても悲しい出来事だった。性格や精神が曲がってしまってもなんらおかしい環境ではない。それにも関わらず、彼は彼なりの前の向き方をもって”守るべき存在”からの卒業を成し遂げた。これって本当にすごい(語彙力)。
 それぞれの後ろめたい部分が影となって話が二転三転としていくのは読んでいてとても気持ちがよかった。特に洋一郎にはまんまと掌の上で踊らされた。印象グラフがあったとしたらエラー起こしてる。

 話が逸れたが、母親の死を乗り越えて亜紀も成長している。ちょっと人の死に立ち会いすぎている(しかも同じ場所だ)し、過去が過去なので心の奥底に閉じ込め続けていられる記憶の量をオーバーしてしまっていただろう。線香をあげるシーンがあった事で、今回の一連の事件を事実として乗り越えられたのかなぁ、とか思ったり思わなかったり。

 この小説の前に読んだのが朝倉秋成著『六人の嘘つきな大学生』だったのもあって、人の見方を考えさせられていたタイミングでこの小説を読むことができたのはよかった。いい面だけをもってしてその人が完全に善人であると判断するのは時期尚早である。たしかハロー効果とかそんな名称があった覚えがあるが、今回の道尾秀介著『シャドウ』は、そんな影の部分が登場人物それぞれにあったように感じる。だからこそより人間味のあるキャラクターとして読むことができたし、臨場感を体感することができた。

 そういえば、この作品には嘘を吐くシーンが多かった。嘘を吐くことは、たとえ相手のことを思ってのことだとしても危ない橋を渡ることになる。その点を考慮すると、洋一郎がどれだけ凰介や亜紀、水城、そして咲枝と恵のことを考えていたのかがわかる。彼らを守るための壮大な嘘は、見事危ない橋を渡り切ったといえるのではないだろうか。ラストシーン、高いところへ上っていった白い蝶が、咲枝、そして恵であることを願う。

P.S. 本題じゃないけど、『六人の嘘つきな大学生』は高校か中学の時に読みたかった~!!!!!いつ読んでも衝撃を受ける小説だと思うんだけど、人を見ることの難しさってなかなか学べないんだよ。かといって、そういう本を買うのはちょっと違うし。いや、買ってもいいんだけど、意識高い系の本ってやっぱり手を伸ばしにくいというか。だから、もっと早くに読みたかった。読んでいたら就活のことどう感じたんだろうな。もうちょっと客観的にみられていたかもしれないな。映画化楽しみです。

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