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さらさらと...

百年あとには
この場所を知る人は誰もいない
ここで演じられた大きな苦悩も
平和のように静かだ

雑草がわがもの顔にはびこり
見知らぬ人々が散歩にきて
もう遠い死者の
さびしい墓碑の綴字を判読する

夏の野を通り過ぎる風だけが
この道を回想する
記憶の落としていった鍵を
本能が拾い上げて

エミリー・ディキンソン

わたしが、エミリー・ディキンソンの詩の中で一番すきなのが、この百年あとには、だ。

この詩には、強烈なインスピレーションが含まれてる。

記憶の落としていった鍵を、誰もがきっと、いつかは拾うのだろう。

それは、もしかしたら、百年あとかもしれないが。

この詩と共に、思い出されるのは、一冊の本だ。

『英国墓碑銘文学序説』

わたしが、心から尊敬している方が、勧められていて、当時のわたしには、まったく読めるはずもないのに、その方に少しでも近づければと思って、眺めるようにして読んでいた本だ。

死者の匂いはすれど、決して冷たくはなく、死という名の文学を感じさせた。

本の扉に、強烈なセリフが書かれていて、わたしに取っては、その本はそれで十分だった。

風はずるい。

風は歳をとらない。

少しだけ、当時の記憶が思い出される。

、、、。

わたしたちは、死者から学ばなければならない。

死者が一番賢いのだから。

わたしにとっては、とても大切なこと。


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