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今、そこで、生きるということ

 私は劇場でお芝居やミュージカルを見るのが大好きです。

 なんと言ってもLiveが好き。

 幼い頃から父がどうせ観るなら本物がいいと言って、ブラスバンドやミュージカル、オーケストラなどに何度も連れて行ってくれた影響だと思いますが、その時その場にいて感じる臨場感、空気、熱気、わき起こる拍手、声の波動…。いくらテレビの画質が俳優さんの毛穴まで写せる美しさ鮮明さになったと言われても、これら生に勝るものはない、と思ってしまうのです。

 私が大好きな役者さんの歌声・存在に初めて触れた時。彼の声には間違いなく質量があって、音って物体で、我々の体が触れられるもので包み込まれるものなのだと実感したほど。それらは映像では絶対に知ることができなかった体験でした。

 それが高じて、歴史を学ぶ時もその場に身を置きたいと思うようになり、戦争遺産などはできる限りその場で見たくて出かけて行きましたし、息子にも肌で感じてもらいたくて一緒にお出かけすることが多くありました。(障害児の子育てをしていると、その兄弟児への関わりの時間配分が相当難しいので、私はよく息子1人だけ連れてお出かけするようにしていました)

 それに加えて、なっち育ての最中、家に居ながらにしてできる趣味というものが皆無だったため、『今日は観劇日!』『自分探しの旅!』と決めて、家族に全てを託して家を出ることでしか気分転換が図れなかったのも、劇場や戸外に足を運ぶ機会が多くなった理由の一つです。

 今でも、Liveに勝るものはないと思っています。いますけれども…

 このコロナ禍です。そんなLiveの世界が変わろうとしています。

 今、音楽もお芝居も、人が集うものは開催できなくなっています。最近少しずつ再開されつつありますが、それも客席を半分にしたり動画配信で開催されたりしています。主催者側も生の舞台がいいことは百も承知でしょうが、それでもそうすることでしか表現の場がないし、収入にも繋がらない…

 その場にいることでしか体験できない感覚を得て心を潤すことは、非常に贅沢な体験だったのだと今更ながら思い知りました。

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 地方の片田舎に住んでいる者としては、都会に足を運ぶことはとても勇気のいるご時世になりました。

 私自身もオンラインでミーティングするようになりましたし、いろいろな生配信を観る機会も増えました。

 ところが、です。

 私のこの生活、家に居ながらにして、【決まった時間に必ずPCの前にスタンバイする】ということがとってもとっても難しい。

 家を離れ思い切って出かけてしまえばその時間をしっかり余暇に当てることは可能なのですが、せっかく【行き帰りの時間も不要だし家に居ながらにして観れるよ!】という有難い環境にも関わらず、その時間に私の身体を空けるっていうことは思いの外難しいことがわかりました。

 そう、私の心潤す余暇のあり方が【劇場に行く】だった本当の理由がそこにあるわけです。アーカイブでもあればいいのですが、on timeにそこに居て観るということの難しさにぶち当たっています。

 実際その場に居れば『おかあさーん!』ってなる訳で^^;

 配信をon timeで観るなんて絶対無理!無理!と思っていたのに、何度も何度もそんな体験を重ねて、最近はようやく家族も慣れ、協力も得られるようになって、その時間その動画に集中させてもらえる時間が少しずつ取れるようになってきました。

 自分が配信に参加することもあるので、その時は音も出さないようにしてくれて。とっても有難いです。

 生に叶うものはもちろんないけれども、それでも、この双方向のオンライン、劇場にいるときのように今しかない感覚、それは大切な時間の過ごし方で、録画や録音にはない大切な体験です。

 感染症を歓迎なんてしないけれど、こうしてコロナのおかげで見えてきたものも沢山あります。工夫一つで叶えられること、楽しめること、心を通わせられること、そんなことを追い求める人間っていう生き物がなんだかとっても愛おしいですし、そこに向かって進化している生きとし生けるもの=人間は、ウイルスともこうやって共存して行くんだなぁなんて思ったりします。

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 そんな折も折、大好きな俳優さんのオンラインミーティングがありました。彼の方が私よりよっぽどご年配(失礼💦)なのに、どんどん私たちをITの世界に引っ張って行ってくださる。

 その方には舞台でしかほとんどお会いできないし、まさに舞台に生きてこられた方。映像でもほとんどお会いできないですし、まさに長年その時その場を共有することでのみ繋がってきた彼とその応援者の私たち。つい先日まで事務所のホームページもメールアドレスもなかったし、今でもご本人はSNSもされません。チケットの取り扱い受付は往復はがきのみでしたし、スタッフさんたちの手作り感満載のイベントや会報がいつもいい味を出しています。

 ですから、舞台公演のないときの彼の情報は一切入ってきません。それは少し寂しいことのようですが、これまでいつもそうだったからそれでよかったんです、私たち。

 ところが!

 オンラインなんて一番遠い方かと思っていたのに…。この夏、本当はリアルで行われるはずだったファンイベントがオンラインで行われることになったと聞いて、我ら高齢応援者たち、必死で勉強しました!そりゃもう、一生懸命に。

 お友達と練習を重ねて、マイクやカメラのオンオフの仕方、背景の作り方、光のあて方まで😅なんでもやればできるもんです💦

 まだ進化半ばなのでなかなか思うようには行きませんが、新しい生活様式の一部として、身も心も老け込まずにどんどん新しいことにチャレンジして、今という時代を生き生きと生きてみたいと思います。

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 そして、もうすぐ、こんな私に講演を依頼してくださった大学でのオンライン講義の日がやってきます。これもまた、録画ではなく今の私がお話しすることに大きな意味があるのだと思います。

 一生出会えなかったかもしれない人と出会い、心を通わせる可能性を諦めることなく、一生懸命に【その時その場で】生きてみたいと思います。

  

 

 

笑顔が増えるための活動をしています。 いただいたサポートは、稀少疾患であるアンジェルマン症候群の啓蒙活動、赤ちゃんから高齢者まで住み慣れた地域で1人でも多くの方が笑顔になるための地域活動の資金として大切に使わせていただきます(^^)