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〝専門職のあるべき姿″を諦めないということ

私の愛しい娘は重度知的障害者。アンジェルマン症候群という疾患です。

いつか私たち親の手を離さなければならない子だからこそ、小さな頃からできるだけたくさんの人と触れ合い、誰とでも過ごせる子になって欲しくて多くの支援を受けられるように心がけてきました。

通所施設もそうですが、障害福祉分野のヘルパーさんも、これまで何箇所の事業所•何人のヘルパーさんの支援を受けたかわかりません。

多くの方が優しいお気持ちと、高い技術や知識で折々に娘の可能性を見出し、導き、娘の笑顔を守り続けてきてくださいました。

本当に心から、感謝の気持ちでいっぱいです。

ですが残念ながら、中には、何事にもいろいろなお店•会社、人があるように、『ニ度とごめんです』『もう結構です!』とこちらから遠慮した会社もありましたし、人もいました。

娘がお世話になっている身で偉そうなので非常に発言しずらいですが、今日は敢えて書きます。(この発言しずらいということも、考えてみれば大きな課題ですね)

一人一人がどれほど暖かくて心ある方だとしても、障害福祉という業界の事業の質が素晴らしく高いとはとても言えない、それが今の日本の障害福祉業界の現実であると言わざるを得ません。


ヘルパーの手配ができなくなるほんの数日前に『いついつから(事業所として)来れなくなります』と言ってくる会社。時間の30分前に突然『すみませーん、今日行けませんw』とドタキャンしても平気な事業所•人😓

誤解なきように言いますが、これらはまぎれもなく福祉業界でも【契約違反】です。


ただ、福祉事業所さんはいつも人材不足という課題を抱えています。この課題を抱えていない事業所にお目にかかったことはないと言っていいくらいです。

ですから、突然の不測の事態に管理者さんや社長さんクラスの方が、ご自身の時間外労働も顧みず利用者に迷惑をかけないように必死で走り回っている姿はよ〜く知っています。今度は労基法違反ですね。

そんなふうにしなければ【契約したことがらを遂行できない】からです。

どの事業所も【契約違反と紙一重】の崖っぷちで働いてくださっていることになります。

でも、この【契約違反と紙一重】で踏みとどまっていることと、【人がいないので行けませーんw】【契約違反致し方なし】と平気で言えちゃうことは、事業所の未来•ひいては業界全体の未来を見据えると天と地ほども違うんです。

そして、ここの課題はもはや、誰か一人の努力や自己犠牲でどうなるものではないし、個人や会社が抱えるべきものでもなく、然るべき制度に繋がる部署や人に発信し続けて巻き込んで社会的な問題として解決を図っていくしかない課題です。

契約遂行の上で本事業のあるべき姿を放棄して事業所を継続していくことは、本来するべき仕事が遂行できないと言う大問題を然るべき部署に訴えていくという解決の方向性も失うことに他なりません。

『これでいい』『これしか仕方がない』と思っている人には成長や向上、進化が見られないということです。これでは明るい未来は見えません。


ちょっと例え話をします。

スーパーに行きます。

いつも1人のスタッフが必死でレジ打ちをこなしています。いつも長い列ができ、支払いに10分以上かかります。人手もレジそのものの個数も足りないからです。

『あそこの店はいつもレジが混むからやめとこ』ってなりませんか?

人手が足りないことやハード面が整わないこと、それゆえにサービスが悪いことは言い訳にすらなりません。そしてお客にはその店を選ぶ自由意志がありますから、お客に離れてほしくなければサービスに力を入れなければなりません。

サービスにお金をかけるのはそのためです。

人が少なければ人を雇おう、レジが少なければレジを増やそう、お客さんの動線が悪ければ陳列を見直し、スタッフの業務も時間的、量的質的見直しを行おう。

そうしてサービスが行き届かないことの対策を講じていかないとそのスーパーはいつか潰れてしまいます。

【お客なんか並ばせておいたらいい】と思っていることと、【次はもっと気持ちよく買い物してもらえるための工夫をしなくっちゃ】と思うことの差はこのスーパーの未来を左右します。

改善しようとすること、課題をきちんと認識しておくことはそれだけでとても大切なことだといえます。


ですが、それでも、半径10キロ圏内にこのスーパー一軒しか無かったらどうでしょう?

どんなにサービスが悪くても、モノの値段が高くても、このスーパーは潰れません。競争相手がいないどころか、ウチがなきゃ客が困るでしょ?っていう高飛車な態度でも生き残っていけます。

サービスの中身について改善すべき点など見て見ぬ振りでもお金儲けをし続けることができるのです。


障害福祉分野のヘルパー事業所というのはまさにそんなスーパーだと思っていただければわかりやすいかと思います。

どんなにサービスが悪くても、質が悪くても、一つの職種として仕事師として当然の振る舞いができていなかったとしても、事業所の存在そのものが少なくて、ないとお客が困るから成り立っている、そんな業界なのです。

利用者は契約がどうとか言ってられないし、店を変えることもできない。穴を空けられたら家族が必死にやりくりすることで対応し、事業所が責任を果たさなかったことへの契約不履行の裁判や慰謝料の請求なんかも聞いたことがありません。

でも、福祉の職種は決してボランティアではありません。

薄給と劣悪な労働環境が問題視されてはいますが、これは【生業】です。

利用者が『してもらっているのに文句言うな』と言われる筋合いの事柄ではありません。


ここまで多少強い言葉で書きましたが、いつも言うように私は不平不満が言いたいわけじゃありません。

特定の会社や人への苦情や攻撃でもありません。

だって、業界は疲弊して劣悪なケースもあるとは言え、ひとつひとつの事業所や各々の人は決してこんなところばかりじゃなくて、きちんと仕事として、【契約違反と紙一重】で必死で踏みとどまろうとしている事業所や人がたくさんいるんです。

娘がどれほど多くの志高い方々に支えられているかは改めて書くまでもありません。感謝しかないのです。

先日の私のnote【送迎サービスでわいせつなことをする】【施設内虐待がある】っていうのと同じで、一部の不届きな事業者や個人が業界全体の質を貶めているのは間違いありません。

私は、そんなごく一般的な仕事師として本来あるべき姿で頑張る人や事業所と、サービスを買っている消費者にしわ寄せを持っていくことでしか解決していない社会課題について知っていただくためにどう発信していくのが効果的なのか、とずっと思いあぐねています。

無いものねだりの不平不満だけは避けたいところです。


【仕方ないからこれでいい】で回っている社会は、解決されるべき課題があると認識されません。

ですからいつまでも課題は解決されません。

崖っぷちで踏みとどまり【ここが課題だ!】と発信し続けることでしか解決の糸口はないのだということを、サービスの受け手も、事業所も、従事者も、もっときちんと認識しなくてはならないし、その上で、行政や政治に課題を認識してもらうまで問題提起を続けていくしかありません。

苦情や文句だけではどうにもならず、ましてや当事者(この場合利用者と事業所)がいがみあっても仕方がないのです。

行うべき仕事•責務に真摯に向き合い、仕事師としてあるべき姿で誇りを持って業務を遂行しつつ【それができないことは問題だ】とcoolに情報を収集分析して問題提起していくことでしか解決しないのです。

そして私は。

そんな世界を垣間見ていながら、嘆くだけじゃあまりにも能がありません。

私に置いて逝かれる当事者である娘が発信できないことを書き綴っていくことが我が使命と思い書き続けます。


最後までお読みくださりありがとうございました。

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地域の保健室をしつつフリーランスとしてお仕事している笑顔大好きな【なつまま】が、重度障害であるアンジェルマン症候群のキュートな娘との豊かな生活と、医療や福祉について思うこと、日々の小さな気づき・感動などを綴っております。

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