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不良(?)に救われた話



私は、中学時代の知り合いの殆どが好きでは無い。
殆どと言うと語弊があるが、頭の良くない取り巻きが多かったので、その人達は嫌いだった。
もちろん1番嫌だったのは、その取り巻きの中心人物である。



詳細は、1個前の投稿に書いてある。
時間が無い方のために、内容をざっくり書いておく。


周りの人達の見た目を貶してばかりの元友人がいた。その元友人は、後に私の見た目の悪口も言い出す。
溜まってた不満を吐き出し、口喧嘩に発展。
後日その元友人は、あざとパワーを駆使し、クラスメイト複数人(取り巻き)に、私を悪く言う。
おかげで私は、【その女の美貌に嫉妬し僻んだ哀れな女】という嘘情報が広まり、ハブられた。


…というのが、前の投稿での大まかな内容である。



今更デブの私が「違うわよ!」と言ったところで、なんの効力もない。ただ笑われて終わるだろう。
ましてや、取り巻きの男複数人を、私如きが相手に出来るわけない。


なんだよこの世の中(学校)。
痩せてて明るくてあざとければ、人間を操ることが出来るのか。


それとは真逆の私は、相変わらずハブられながら、体育を見学していた。
【2人1組】で何かやらされるからだ。
1回だけ、ハブられた後の体育に参加したことがある。やはり2人1組になれという展開になり、私だけ余ったのだ。

先生は「じゃあ俺とやろう!」と優しく言ってくれた。

その先生の後ろ。
例の女が、ニヤニヤしながら私を見ていた。
取り巻きの男も一緒に。

気づけば私は、「すみません体調悪いんで」と、逃げ出していた。先生ごめんなさい。


そんな経験をしてしまったから、体育に参加するのが怖くなった。だから見学していたのだ。


でも、ずっと見学しているわけにはいかない。この先どうしよう…と悩みながら、バスケの試合を見ていたその時。


「ねぇ」


待機中の女子が話しかけてきた。
彼女は、不良の先輩たちと絡んでいる、ちょっと怖い子だ。授業もよくサボっている子だった。
その子が私になんの用…?


「隣、いい?私も見学する」


とりあえず頷いた私の真横に、彼女は腰を下ろした。


「具合、悪いの?」
「え、いやそんな…かな」

ハブられてて参加したくない、だなんて言いたくないし、返答に困ってしまった。
いや言ったところで、ハブられてるのは明らかなので問題なかったのだろうけれど。


「ふーん…」


沈黙が流れた。
そもそもその子と喋ったことないから、ただでさえ人見知りの私は、上手く話せなかった。
そんな沈黙を彼女が切り裂く。



「あのさ、○○にハブられてるでしょ?」
「…え…いや」
「正直に言って。ハブられてて、あの女の取り巻きにも嫌な態度されてる。違う?」

彼女は私の目を見てそう言った。


驚いた。誰もが傍観者か取り巻きだから、
初めてその話題に踏み込まれた。

気づけば頷いていて、彼女が私の手を握っていた。


「…やっぱりそうだったんだ。
先週から気になってたんだよね。泡沫ちゃん1人でいたからさ」

「そうなの。あの子が取り巻きに良いように言って、私が悪者になった。もう、どうすればいいかわかんない」

「やっぱり、悪いのはそいつか。周りの男も
馬鹿だな…
実は、噂聞いちゃってさ。泡沫ちゃん、色々言ったんだって?魅力ないとか。」

「言った。でも、向こうが私を散々馬鹿にしたから腹が立ったの。デブとか隣来んなとか」

「………マジ?それで泡沫ちゃんが怒ったってこと?」

「そうだよ」




「うーーわ。声掛けて大正解だった…

誰も声掛けないとか、みんなあの女に怯えすぎだろ。それに酷い。」


その後も色々話したが、長いから省く。

初めて喋った相手にベラベラ話していいのだろうかとも思ったけど、それくらい、辛かった。
私の声を聞きにきたことが嬉しかった。


その後、私が1人で教室にいる時も、彼女は定期的に声をかけてきた。他愛ない挨拶や、ちょっとした雑談。
それだけでも、だいぶ精神的に楽になった。
「1人じゃない」と思えたからだろう。


でも、現実は変わらない。
ハブるどころか、私に聞こえるように悪口を言うようになった。

「なんだよあのデブ。しぶといなぁ」
「な〜、よく来るよな。」
「それより○○ちゃん。僕と放課後遊ぼう?」
「いいねー!行こいこ!」


取り巻きの殆どは、彼女のファンだった。
あの意地悪女にファンがつくのが驚きだ。
私への嫌がらせと同時進行で、色んな取り巻きと付き合っては別れを繰り返していた。
多分15人くらいとは付き合ってる。




そんなある日、
定期的に声をかけてくれる彼女が、ある男(クラスメイト)を連れて私と話をしだした。

「お前さ、本当は他に何か隠してるの?」
「…おいてめぇ。泡沫ちゃんにお前って言うな」
「すまん。いや、ハブる以外にも何かされてるのかなと思ってさ。」


…彼女の怖い面が少しだけ見えた←


その男は彼女の友達であり、不良だ。
よく備品を壊したり、問題発言をしていたので、不良というより問題児の印象が強い。
彼女から話を聞いて、少し心配してくれたらしい。



鬱ゲーや鬱小説では、この後優しい彼女らから裏切られるのが定番だ。
だが、彼女達の目や言動から、そんなことは起こらないと考えた。
それは、私の爆弾発言で判明した。



「今回のこととは別だけど、前から、色んな子を差別してた。
それに、『私、学年の全員の男と付き合うのが目標なの!』って言ってた…」


事実である。
例の女と私は半年くらい友達だったから、そういう話を聞いたのだ。
さすがに引いたけど、表では適当に相槌を打っていた。


「はぁぁぁ!?!?なんだよそれ!!!
男見下されすぎだろ!!!」

「いやキモ……泡沫ちゃんハブる以前からやばかったんだね…」

「俺頭にきた!!あの女に文句言ってくる」

「じゃあ私も言う!!!」


そして2人は、例の女に直接文句を言おうとしだした。
男の方に関しては、私のハブりとは無関係。
彼女の方は、「泡沫ちゃんに酷いことしたから、私がこいつと戦ってくる。あ、泡沫ちゃんがチクったとか一切言わないし、察されないように男にもよく言っとくから…」と言った。


最終的な意見は、私に託された。

「どうする?泡沫ちゃんはどうしたい?
もちろん迷惑かけないし、「私の怒り」として
タイマンしてくる。
もしやらないで欲しいなら、私もこいつも黙ってるよ」

「俺は文句言いてぇけどなー。
そんな話聞いて、黙れるわけねぇ。ハブり方もひでぇしさ。泡沫だって、このままじゃ嫌だろ?」


「………何言われてもずっと我慢してた。調子に乗りすぎなあの女に、何か言って欲しい」


「「おっけ」」



数日後の放課後。

私は教室で本を読んでいた。
本を読んでるフリだ。


「ねぇねぇ○○ちゃん、ちょっとこっち来れるかな?」

「…?」

彼女が例の女をベランダに呼び出していた。
しかし何かを察したのか、女は帰ろうとしていた。


「大事な用なんだけど…いいかな?」

「私これから○くんと遊ぶからちょっと」

「いいから黙って来いよ」


穏やかそうに喋る彼女は豹変し、女をベランダに無理やり連れていった。
逃げないようにと窓を閉めたため、彼女らの会話は微かにしか聞こえない。

ベランダには、あの男が既に待機していた。



15分ほど経過し、彼女らは教室に戻ってきた。
例の女は真っ青な顔で、そそくさと教室を出ていった。

会話の殆どが聞こえなかったが、途中「ふざけんなよてめぇ!弱い者いじめしやがって!!」
などという大きな怒声が聞こえた。

真っ青な彼女を見た感じ、暴力は受けていないようだ。だが、沢山怖いことを言われたのだと思う。


彼女らにお礼を言ったものの「いやいや。当たり前のことをしただけ。」「見ているだけは嫌だったの」と言った。

「また何かあったら言うんだよ〜、抱え込んじゃダメだから!」
と、彼女は優しく笑いながら言い、帰っていった。



ハブりは続いたが、前みたいに悪口を大声で言ったり、ニヤニヤしながら見てくることは無くなった。むしろ、私が見たら全力で逸らされるようになった。


少し経ったら、私にも友達が出来た。
女の取り巻きにならなかった男子だった。
他クラスの女友達もできた。

明らかないじめはないものの、時折ヒソヒソと「なんなんだよあいつ…」と聞こえた。


新たな友達は「無視しとこ。あ、そういやバトミントンいつやる?」と、特に気にする様子もなく、私と遊んでくれた。



不良っぽい彼女たちとは、あの件以来話さなくなった。
彼女たちと私は趣味も違うし、友達になることはなかった。
でも、たまにグループワークで一緒になった時は



「やぁやぁ」と、優しく微笑んで挨拶してくれるのだった。

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