初めて補聴器をつけた日のこと。
「そろそろ補聴器つけてみる?」
高校3年生になり、本格的に大学受験が始まった頃、リスニングの点数が伸び悩んでいることを大学病院の定期検査で先生に相談したところ、補聴器の装用を提案されました。
難聴と診断された小学生の頃に比べてさらに聞こえづらくなった耳。
そろそろかなとは思っていました。
私は他言語を学ぶことが好きで、さらに自分の力を伸ばすためにも補聴器を装用した方が良いのではないかとも考えていました。
コロナ禍で皆がマスクを着用するようになったことで、口の動きを見ながら会話をすることができなくなり、何を話しているのか理解しにくくなってしまったことも補聴器の装用を考え始めた要因でした。
補聴器の値段を聞いた時は思わずその高さに驚きました。
補聴器のタイプによっても価格は変わってきますが、私の使用している耳かけ型の場合、片耳だけでも一番安いもので5万程度、高いものだと片耳60万にもなるものもあるらしいのです。
自治体の補助のおかげでいくらか安く購入できたと記憶していますが、購入に関しては母が色々と動いてくれたため、最終的にいくらで購入したのかは私のあずかり知らぬところです。
「片耳だけでこの値段なら両耳で使用している私は最低でも...」と考えると、これで少しでも音が聞こえやすくなるなら...と使用を強く後押ししてくれた父と母には頭が下がります。
カタログのようなものを見てみると、補聴器にも色々なタイプがあることも初めて知りました。
病院に補聴器専門店の特設スペースがあり、補聴器専門店の方が音を調整してくださった補聴器を初めてつけた時、
斜め後ろに座っていた母の
「聞こえる?」
と言う声に思わず泣きそうになりました。
自分が聞こえてなかっただけで、「音」はこんなにあったのだと気付いたのです。
紙の捲れる音、遠くに聞こえるだれかの足音、少し離れた自販機のボタンが押された時のピッという音。
近くでなければ聞こえなかった音が、この場所では聞こえないと思っていた音が沢山聞こえました。
母は実際どの程度聞こえるようになったのか試したくなったようで、車に戻ると補聴器をつける前までは聞き返さなければ答えられなかった小さめの声量で私に話しかけてきました。
「今日は夕ご飯、何が食べたい?」
「え〜何がいいかな...」
聞き返すことなく質問を理解し、反応した私に「聞こえてる!」と嬉しそうに父の方を見て話す母を見て補聴器をつけることを決心してよかったと感じました。
中学生の時、学校で私に対し「さっさと補聴器つければいいのに」と陰口を叩いていた子がいたことを知り、なんだか悔しくて家に帰ってから2人の前で泣いてしまった私に
「お母さんとお父さんは何があっても絶対〇〇の味方だから!」
と励ましてくれた日のことを、母の姿を見てふと思い出しました。
その後も色々と「実は聞こえる音」があることを知りました。
「踏切の音ってここまで聞こえてたんだ」
「体温計の音ってちゃんと聞こえてたんだな」
「リスニングこの席でもちゃんと聞こえる!」
そんな発見がたくさんありました。
「もしかしてテスト中にお腹が鳴ってしまった時、近くの席の子には聞こえてたんじゃ...?」
なんてことを思ったりもしました。
補聴器をつけるようになった今してみたいことがあります。
・補聴器をつけて海外に行くこと
・補聴器をつけて好きなアーティストのイベントに行くこと
今はこの二つです。
補聴器をつける前までに数回他国へ渡り留学やホームステイを経験しましたが、時に聞こえづらいことが原因でスムーズなやりとりができないことがありました。
次に海外に行くことがあれば、よりスムーズなやりとりが出来るようになれればいいなと思います。
また、コロナ禍で好きなアーティストが日本に来ることができず、イベントにも2年以上行けていないため、もし彼らが日本に来れるようになって、イベントが行われるようになったら、以前よりももっとハッキリと聞こえるようになったであろう彼らの声が聞きたいです。
この状況が落ち着いて、この二つが達成できたら、また記事を書きたいと思います。
一日でも早く、そんな日が訪れることを願って。
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