W&O
2021年の夏にある液体を制作した。
それは本来なら互いが混じらない性質を持つ。
それを化学反応で結合させて一つの液体へと変わる。
サンシックンドリンシードオイル…
聞き馴染みがない人も多いだろう。
サンシックンドリンシードオイルは油彩画溶液の重合亜麻仁油の一つで水と油を層状に入れたものを長期的に太陽光に当てる事で水と油が化学反応で結合し酸化重合した粘稠性の高い画用液で西洋の古典絵画技法の一つの精製方法だ。
毎年自作しているサンシックンドリンシードオイルはスタンドリンシードオイルと共に粘稠性の強い重合亜麻仁油として知られている。
何故自作をするのか。それは市販のサンシックンドリンシードオイルは最後加熱処理を行う為にオイルが褐色になってしまう。リンシードオイルの特性としては暗い場所に長時間保存しているとリンシードオイルの特性の黄変化が進むと同時に高温で加熱処理を行う場合は褐色度合いも強くなるという事だ。
料理に例えると分かりやすいが高温で加熱したものと低音で加熱したものだと高温で加熱したものは焦げ目が付く。これと同じである。
なら低温で加熱処理を行えば良いのではないか。と思うが低温で加熱すると本来自分が望んでいる粘稠度まで上げる事が出来ない。
低音で加熱をすれば粘稠性は少し下がるが色味は褐色にならずに済むという利点はある。
ただ自分自身粘稠性を保ったまま色も褐色にならないサンシックンドリンシードオイルを使いたい為に約半年以上かけて水とリンシードオイルを太陽光に晒し、そこから化学反応で酸化重合するまでの期間を有する為に半年以上掛かってしまう。
水とリンシードオイル以外は一切使用しない事で純度の高いサンシックンドリンシードオイルへとなる。
効果としては加熱処理を行っていないという点で水溶性の物とも相性が良く膠や卵黄などといったものも市販と比べてこちらの自作の方が相性が良いので混合技法で使うエマルジョン作りにも適している。
さらには加熱処理を行っていない為に褐色にはなっておらず白絵具にもオイルの色移りがない。
ただ要注意しておく事は加熱処理を行なっていないという事は最終的に精製するにしてもまだ少量の水と油が結合していない所もあると予想できる。
その場合瓶に蓋をして日当たりの良い場所に長時間置くと中で膨張し瓶が破裂してしまう恐れがある。がこれまで毎年自作してそのような事は無かった為に多分これは非常に稀な事なのかもしれない。
自作する事で組成を知る。これが描く上で何の役に立つのかと思う方もいるが絵を重層的に見た時に非常に役に立つ事である。
制作途中で今は何のオイルが適しているかを場面で予想出来、季節の変わり目で乾燥スピードを考えて調整する事も容易になる。
油彩画に限らず絵を描く。または何か創作するにあたって1番大事なのは勿論表面上も大事だがそれ以上に下層の仕組みを理解し絵の状態をより良くする為の工夫だろう。
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