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環境汚染と細胞汚染のみごとなリンク。 その疲れの原因は火力発電から出た水銀か?

最近、疲れがたまっていませんか?その疲れ、水銀が原因かもしれないこと、ご存知ですか?水銀は誰のカラダの中にもあります。火力発電などにより水銀は大気中に拡散され、海に落ちて、魚介類に蓄積されます。大型魚ばかり食べていると、体内の水銀も増えて・・・。地球の汚染と健康がダイレクトにリンクしていることが、水銀を通して見えてきます。

1. 疲れやすいのは水銀のせい?
2. 水はどこからやってくるのか?
3. 水銀はカラダの中でどんな悪さをするのか?
4. 水銀の問題に私たちができること
5. すべてはリンクしている

1. 疲れやすいのは水銀のせい?

「私、なんでこんなに疲れやすいんだろう?」

20代の頃から、ずっと思っていました。そして人に相談すると「頑張りすぎ」とか「季節の変わり目だから」と言った、あたりさわりのない返事がかえってくる。血液検査でも異常なし。

その疲れの答えが、2020年の春に突然目の前に現れました。それは水銀です。分子栄養学の講義を受けていた私は、この事実に大いに驚きました。

もちろん、水銀が疲れの第一の原因ではありません。疲れと言っても、低血糖やホルモンのアンバランスなど、さまざまな体の状態が複合的にからみあって起こります。しかし、水銀も明らかにその原因の一つ。最近の研究によると、水銀の蓄積により、説明のつかない疲労感、説明のつかないイラつき、長期間のうつ、四肢のしびれなどの症状がでるそうです。

水銀というと、すぐに思い浮かぶのは体温計です。子供の頃、体温計を壊したこと、ありませんか?体温計の中では細長い棒なのに、ひとたび、ガラスが割れて外に飛び出ると、水銀は金属の流動的な玉になって、床の上をコロコロ転がりました。とても不思議で面白かったので、顔を近づけて見ていたら父に怒られたことがあります。水銀の沸点は357度ですが、20度でもわずかに蒸気となって空中を漂うとか。父はこのことを知っていたのかな?

そんな水銀が、いったい体のどこに入り込んでしまうんだろう?そもそも、水銀はどこから私たちの体にやってくるのだろう?気になってきました。

2. 水銀はどこからやってくるのか?

調べてびっくりしたのですが、水銀は常に地球を循環しています。地球の自然な営みとして、水銀を含むガスが火山から大気に放出されます。火山だけでなく、森林や大地、海からも水銀が常に蒸発し、空に昇っていきます。

蒸発した水銀は、海にも山にも分け隔てなく降り注ぐので、地面の上にも古い地質の中にも水銀は存在します。植物も水銀を含んだまま死んで化石になるので、石炭の中にも水銀が含まれています。だから石炭を使う火力発電から水銀が排出されるのです。

火力発電だけでなく、セメント製造や金の採掘などからも水銀は排出されます。環境中に排出される水銀のうち、このような人為的な排出は世界的に見て約30%(2013年)、この数値を減らしていく必要があります。世界の水銀の大気排出状況を見ると、約半分はアジア地域なんです。その中では中国が全体の約3割を占めています(2010年)。アジアは火力発電所が多いので、特にアジアの海域の水銀濃度は高いそうです。

大気に放出された水銀は、海、湖、川に降り注ぎ、最後は魚介類に蓄積されます。生物濃縮という自然の摂理により、水銀を蓄積した小魚を大きな魚が食べる、つまり、大型魚であるほど水銀濃度は高くなります。お酒のおつまみにいつもマグロのお刺身を食べてる人は、かなりの水銀を摂取しているかもしれませんよ。

大型魚だけでなく歯の詰め物のアマルガムも水銀の供給源になりますが、医学的な内容になるので、ここでは触れません。平成28年4月からアマルガム治療は保険診療から外れています。

3. 水銀はカラダの中でどんなことをするのか?

水銀は、私達のカラダの中で、いったいどんなことをするのでしょうか。

まず、水銀はエネルギーを作る過程を邪魔します。車がガソリンで動くように(この比喩ちょっと古いですが)、生き物はATPというエネルギー物質で動いています。ATPを沢山作れる人は元気で、ATPがあまり作れない人はエネルギー不足になり、疲れやすくなります。水銀はこの大切なエネルギー産生経路のいくつかのステップを阻害します。

エネルギーというと、カラダを動かすことに目が行きがちですが、食べたものを消化するにも、有害物質を解毒するにも、栄養を取り込むにも、エネルギーがないと効率が下がってしまいます。カラダのこんな基本的な働きが水銀により妨げられているということは、ほとんど知られていません。

水銀のもう一つの問題点は、ホルモンの放出を阻害することです。ホルモンは、脳、甲状腺、膵臓、副腎、生殖腺などから放出され、ほんのわずかな量で大きな作用を発揮する、とても大切な物質です。たとえば、副腎から出るコルチゾールというホルモンは体中の炎症をおさえてくれるし、卵巣から放出されるエストロゲンやプロゲステロンは、月経や妊娠をしっかりとサポートしてくれます。そのホルモンの働きが阻害され、分泌量が減るということは、これまたカラダの機能低下につながります。

石炭火力発電から出る水銀が、地球をめぐりめぐって、私達の体調を悪化させる。どうすればいいのだろう。自分のカラダから水銀を追い出す、または水銀をこれ以上入れないことは大切だけれど、それだけでは根本的な解決に至りません。

4. 水銀の問題に私たちが出来ること

まずは、小さめな魚を食べる習慣をつけましょう。厚生労働省が妊婦さん向けに「お魚の食べ方パンフレット」https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/100601-1.pdfを作成しています。これによると、1食80gと換算して、メカジキ、マグロ、キンメダイなどは週1回、クロムツ、インドマグロなどは週2回までとなっていました。これは、一番影響を受けやすい胎児を保護することを念頭においています。妊婦以外の人はそこまで神経質にならなくてもいいですが、やはり大型魚は少な目に、アジ、サバ、サンマ、イワシなどの小さめの魚をもっと食べる、とざっくり理解するといいと思います。

わが身に降りかかる火の粉を払うことは大事ですが、その大元である石炭火力発電を減らすことも同時進行で考えていく必要があるでしょう。しかし、そうなると急に手が届かない大きな話になってしまいそうです。

実は、私達一人ひとりでも出来ることは意外とあります。すぐにできることは「電力会社を変える」こと。聞いたこともない電力会社に変えるなんてちょっと不安だな~と言う私に、友人がいいサイトを教えてくれました。「未来をつくるでんきのえらび方」https://power-shift.org/です。

電力会社を変えるということは、石油、石炭、原子力で作った電力を売っている会社から、太陽光、風力、水力、バイオマスなどの再生可能エネルギーで作った電力を売る会社にシフトして、地球のために自分なりの意思を提示することだと思います。

みなさんが購入している電気は、どんな方法で作られているか知っていますか?電力会社は電力の供給源の内訳(電源構成)を毎月公表しています。

たとえば、私が使っている電力会社の2021年3月の電源構成比率

太陽光 7.9%
風力 5.2%
水力 1.8%
バイオマス 25.4%
バイオマス(FIT以外) 17.9%
その他 41.7%

となっていました。

火力発電の項目はありません。実際は「その他」が化石燃料ですが、その割合は東京エリアで、48.2%(2017年)43.3%(18年)、46.0%(19年)と下がり傾向にあります。再生可能エネルギーを中心とする電源構成なら、水銀排出量の削減にもつながるだろうし、なんといっても温暖化の抑制にも貢献している喜びがあります。

再生可能エネルギーは天候に左右されるので、うまくいくと達成率が90%を超えることもあるようです。少しずつ、でも確実に世界の潮流が希望に向かっていると信じたいです。

このほかにも、節電、ゴミを減らす(焼却でも水銀は発生します)、分別してごみを捨てるなど、地味ですが個人で出来る貢献はあります。

5. すべてはリンクしている

昭和の時代、水銀の消毒・殺菌効果は高く評価されていました。梅毒の潰瘍の薬や、目や皮膚の洗浄剤、シミ取りクリームにいたるまで、その用途は様々。子供のころ、お母さんに赤チンを使ってもらった人いませんか?赤チンは水銀が2-3%はいった消毒薬です。農業の世界でも、種子や土壌の殺菌剤として水銀は広く役立ってきました。

その後、水俣病や農民の中毒症状が徐々に明らかになり、医療や農業の世界から消えていきました。日本の水銀需要は、昭和39年にピークだった2,500トンから、平成18年にはわずか8トンにまで急激に減少しました。

フロンと同じように、昔は役に立っていたけれど、科学の進歩により有害性が明らかになった水銀。医療や農業の分野では、より安全な製品にシフトしています。また、先進国では石炭火力発電の操業を取りやめる動きが加速しています(これは水銀のためというより温暖化対策ですが)。

そんな明るい話題がある一方で、アジアでは200もの石炭火力発電所が建設中というロイター通信の報道もあり、発電としての脱炭素は難しい課題なのだと、ちょっとため息が出ます。実際に、世界の発電手法のトップは、今だに石炭(38%、2017年)です。

水銀は長距離を移動し、環境の中に残留して、生き物に蓄積され健康被害を生じます。北極圏に住んでいるホッキョクグマの毛やアザラシの歯などを調べると、水銀が、産業革命以前の12倍にまで上昇していて、人が排出した水銀汚染の害が明らかになっています。

水銀による体調不良を改善したいと思い、調べた結果、石炭火力発電に一因があることを知りました。くしくも温暖化対策と同じ課題に合流し、「全てはリンクしている」とお腹に落ちる感じがします。どの環境問題も、まるで生物の分類図のように、根元の部分でつながっているのだと感じます。

今回は水銀を取り上げましたが、カドミウムや鉛など環境と健康に密接な重金属は他にもあります。私達のカラダが、口に入れたもので出きていることを考えれば、地球から食べ物を頂いている以上、環境汚染と健康不良はイコールです。もし、環境をよくする行動を1つしたら、それは付随するいくつかの問題解決に網の目の様につながっていく「希望の行動」になるのだと思います。


武藤順子

薬剤師、博士(体育科学)、臨床分子栄養医学研究会認定カウンセラー、東京理科大学薬学部卒業。日本体育大学大学院修了。
研究所、製薬会社を経て、医学翻訳会社を設立。その後、大学院で、うつ、運動、ストレス、ダイエットなどを研究。予防医学の観点から、栄養療法を取り入れたダイエット法を開発し、個人や企業をサポート。また、健康を入り口に環境問題にアプローチし、汚染物質を体内に取り込まないライフスタイルを提唱している。
https://junkonoheya.com/(Dr.順子の部屋)

#ドローダウン ,#drawdown,#水銀,#リジェネレーション


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