海の上はたくさんのロマンあり!航海士だからある特別な失敗談
ぼくは数年間航海士として日本の海を旅してきました。
旅ってすごく良い言い方しましたけど、実際は寝れないし、ストレスたまるし生活リズムはぐちゃぐちゃ…笑
まさに抜けれない監獄そのもの…笑。
けど、海が好きなぼくにとって航海ほど素晴らしいひとときはありませんでした。
東北地方の太平洋側を北上し、朝日は地平線から昇ってきます。
海面は太陽の光でキラキラ。まさにダイヤモンドがそこらじゅうに散らばってるくらいキレイに海が光るんです。
またある時は湖のような水面で波が一切ない。音もなくただ船が海を切る音のみ。この世の幻想です。
たまにイルカやラッコが船に向かって僕たちを癒してくれました。結構な確率でラッコがプカプカ家族か仲間数人で浮かんでるんです。日向ぼっこしてるんです。
そして、最後は夕日がまた障害物のない地平線に下りて、空は満点の星空…。
これほど素晴らしい自然を一人占めできるのはおそらく船乗りしかないのかなと感じました。
北海道の苫小牧で乗船した夜はちょうど流星群の日。
都会や街並みのようなビルもないので流れ星が空一面に流れてきたのは今でも鮮明に覚えています。
人間にとってなくてはならない海。
キレイで神秘的ですが、自然をなめたら怖い。恐怖です。
そんな航海士として海上で起こしたぼくの失敗があります。今回は3つご紹介したいと思います。
①大時化の転覆寸前!?
一番印象に残っているのがこれです。
ほんとに泣きそうになりました。
航海士として一年が経ったころ、寒い冬になる11月後半にぼくは北海道苫小牧港に到着しそのまま乗船しました。
ぼくの住んでいるのが近畿地方なので冬の北海道は未知の世界。雪も積もってたのでちょっと嬉しくて雪遊びをするほど雪が積もる風景をみてませんでした。
当日は風が冷たく強い。雪は降っていなかったけどとりあえず風が肌をさして痛かったのは覚えています。
夕方までガスを積んで、いざ東京湾に出航!約1か月ぶりの航海でもあるので少し緊張していました。
17時ごろに出港し、ぼくの航海時間は深夜0時~4時までの4時間。それまでは休憩休息。
夜中に起きて船橋室(船の運転する場所)に到着したらもう唖然…
外はブリザードです。
視界ゼロ。
窓には雪が溜まり凍っている。
もちろんワイパー意味なし状態。
そんな中ワッチ(航海当直)を引き継ぎ、レーダー・海図を確認。風速は、たしか20m/sだったかな。
その時は船の前から風を受けている状態でした。
苫小牧港から出てぼくはちょうど北海道の南部分で船の針路を変更する箇所の当直でした。
針路を変えるまでは、外を眺めたり(見えませんが笑)、コンパスを見たりと順調に走っていたわけです。
そして針路を変える変針点に到着。
ここからがまずかった・・・。。。
船の変針角度は約90°左向きに船を変えるのですが、ぼくはまだ新米でもあり、外の状況、風、波、地形(津軽海峡付近)も考慮せず、ほぼ一気に変針したのです。
車でも急カーブではスピード緩めますよね?そのままのスピードでいけばどうなるか…。
ヤバイっ!
変針した時の変針力で船は傾く。
運がなかった…。
風がちょうど船の真横に吹いて余計傾く。
もちろん風で波も高いのでその影響でもっと傾く。
結局船はすべての力を結集させられて左に大きく傾いてしまったのです。船橋室のあらゆるものが落ち、船の左舷側は海に入ってる。
「もう沈没だ・・・・。」
っと時間がすごく長く感じたことを今でもハッキリ覚えています。
まあ、いまこうやってnoteを書いてる訳なので生きてるんですけどあれは二度と経験したくないです。
あれほど神経をすり減らしたこともないです。10歳老けましたね。船では何十人の命をぼくが背負っているわけですから。責任圧力も大きいです。
さて、なぜ助かったのかは、船にガスを満タンにして航海していたので船事態の重心が低かったこと、船が小柄だったのだ沈没にならずに済みました。
その後、もう一度針路を戻して、ちょっとずつ角度を変えて最終的に90°左に変針しました。普通に考えたら分かる事も経験浅い人は平気でやっちゃう。どこの新人さんもそうでしょうね笑。
あと、ぼくがこんだけ焦って死ぬ!って思っていたのに誰一人船橋室に来なかった笑。。。
新人がやることだ、沈むわけないという自信か、それとも僕を信頼してか…分かりませんがね。。。笑
②進路間違えて座礁寸前!?
その日は天気の良い日でした。
荷物のガスを目的地で揚げて空っぽの状態で次の港に向かっていた時のこと。
ぼくはまだ航海士になって3ヵ月の頃です。
瀬戸内海を航海し、船長の指導を受けながら航海当直をしていました。
また海図とレーダーを確認、外の風景を眺めながら航海中。
実は航海士でありながら方向音痴で、トイレもデパートで入った方向と出た方向が一緒でいつも間違うタイプ。
この日も外の風景を見つつ、同じような島の風景だなと思いながら、海図を見ると、そろそろ変針するタイミング。
船長は違う作業しており、「変針します」と声をかけて変針。
ゆっくり角度を曲げて目標針路へ。
「この島の間を通るのか…なんか狭いな」
と思いつつ、外の風景とレーダー、海図を確認して進んでいました。
その時に、なんか違うな?と思いつつ、少し疑問持ちながら進めていると
突然…
「何をやってる!!!!!!?」
っと船長が叫び、ぼくを跳ね除け操舵を奪い急旋回。
もちろん船は急には止まらない…。
エンジンをフルアスターン(後進MAX)でスピードを落とす。
船は少しずつ速度が遅くなり、船も右に向きはじめUターンを開始しました。
この時の失敗とは、進む方向を間違えて島と島の間の浅瀬に向かって針路を向けてたんです。
そのあとガチで4時間みっちり怒られ
海図とレーダーに頼るな。
ちゃんと外の景色を覚えろ。
疑問があればすぐに報告せよ
と指導をいただきました。
もちろんその後は何事もなく普通に船長と話していましたが、
みなさん、分からずに「まぁいいか」は事故の元です。
新人さん、どんな仕事も分からないことは勇気を持って先輩や上司に相談しましょうね。
あぁ~座礁しなくてほんとに良かった…。
③ノロノロウイルスにかかっても容赦ない航海!?
年末に入る12月初め、ぼくたちの船に新しい司厨長が乗船してきました。
今回の司厨長は結構アタリな人。料理がおいしいと評判だったので、一級航海士の先輩と喜んでいました。
喜びにはもう1つ理由が。
その前の司厨長は逆の意味で有名でして
別名「シフト料理」の達人。
これどういう意味か分かりましたか?笑
そうです。惣菜を買ってきてお皿にシフトする天才料理人なんです。
毎日する支度はお米を炊くのみ!
もちろん惣菜もおいしいですけど、身体がだんだん疲れてくるんですよ。
そして、惣菜ばっかり買うものだから当然、毎日の人数分の食費が足りなくなってくるんです。
どうするか?
ポケットマネーで払ってやりくりするんです。料理すればこんなことにならないのに…って思うんですけど、
この司厨長は荷役中(荷物を船に入れてる間)の3時間で料理の買い出し以上に大切なことがあるんです。
「パチンコ」です。
パチンコをするために船の料理が惣菜料理になるとんでもない人でした笑。
話が逸れましたが、おいしい司厨長になって料理の品もレストラン並み!
みんなが大万歳しながら毎日の料理に感謝していました。
そんなある日大変な事件が…ある夜ご飯に「生牡蠣」が出たんです。
ほぼ年配の人なので刺身やあっさりな物が好物ですので久しぶりに生牡蠣をおいしく食べたんです。
みんなおいしそうに食べた!…までは良かったのですが、
なんか次の日からお腹の調子が悪い。
嘔吐はないけど、下痢がひどくて止まらないんです。
「うわっ、これ絶対牡蠣にアタったな」
確実です。
でも船長や機関長は普通の顔なんです。お腹が強いのね。
聞けばあと数人犠牲者が…。
まさに船上監獄の始まりです。
薬もなし、船も止まらない。
でも運転しないといけないんです。
一等航海士の先輩(40代)も犠牲者の一人。
航海当直中も船が安全だと思ったところでトイレに駆け込んでいたそうです。
ノロにアタった数人は静かにノロが終結することを願う毎日。
あたかも平気ですよ、って顔でやりすごしてました。
ノロになって2日後、荷役する港の近くまで来たので、港付近で錨を下ろして海上で荷物時間まで待つことになりました。
下っ端の私は錨を下ろすために一人で船の前側に行って錨を下ろす準備をしてました。
もちろんお腹の調子は最悪。
最悪ながらも作業をこなし、船のスピードが落ち、船長が錨を下ろす命令が下り、
いざ錨を下ろすっ!!
っと思ったが、ノロにやられた身体はぼろぼろ…
錨を止めてるハンドルを回す力を失っていました。
ヤバイぞ…
船はどんどん目標地点からズレていく。
必死だったぼくは近くにあるハンマーのような工具でハンドルを回しやっと錨が落ちてくれました。
その後反対に錨のハンドルを閉めることが出来ずにだらだら錨が出過ぎてまたヤバイ。
道具を使いやっと完了。そのあとはすぐにトイレに駆け込みました。。。
みんな5日後には回復し、7日後には完治してましたが、
数日後…食卓にはまた「生牡蠣が…」
今回は学習してぼくと一等航海士の先輩、数人は感謝を込めて海に牡蠣を放してあげました笑。
海は本当に広いです。ゆっくり時間がすすむのもひとつの魅力でしょう。乗組員さえ良いメンバーならあっという間に時間が過ぎていきました。(毎日先輩と再放送のドラマ見るのが日課の時も笑。)
人手不足と叫ばれる内航船は日本にはなくてはならない物流手段です。
これからも日本の物流を守るために船乗りのみなさん頑張ってください。
長いお話を読んでくださってありがとうございました♪
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