#172 昔はおれと同い年だった田中さんとの友情(2024)ー名優・岸部一徳が語る反戦メッセージ
NHK紹介文(長い)
小沢拓人(中須翔真)はスケボーが大好きな小学6年生。ある日、いつも遊んでいる公園がスケボー禁止となり、友人2人と近くの神社でスケボーをすることに。そこで、神社の管理人をしている81歳の田中喜市(岸部一徳)と出会う。田中は拓人のスケボーに興味を持ち、試しに乗ろうとしたところ、転んでしまい右手を骨折してしまう。拓人の母親・尚美(木村多江)は、田中の右手のギプスが取れるまで、拓人たち3人で身の回りの世話をするように言う。拓人たちが田中の部屋に通い出すと、聞き上手で優しい田中にひかれ、自然と仲良くなっていった。拓人は学校で起こったこと、身の回りのこと、日常の不満などを素直に話すことができた。ある日、拓人は田中の部屋で自分と同い年くらいの少年が写った写真を見つける。写真について拓人が田中に尋ねると、それは昔の自分の写真だと言い、当時この地域で空襲に見舞われたということを話し始める。田中の戦争体験を聞いた拓人たちは、学校である提案をすることに・・・。
とにかく自然
単純にまとめると、孤独に暮らす神社の管理人・岸部一徳が小学生に背中を押されて語り部として反戦メッセージを伝えるという展開だが、登場人物全員が自然体で臨んでおり、戦争を他人事ではなく自分ごととして捉えられる点が秀逸。
田中さんの立場
ドラマの前半部では、とにかく「恵まれていること」への感謝が中心。子供たちとの触れ合いも同じ。後半に伝えられる悲壮な戦争体験とのコントラストが映える展開だった。一転、語り部として淡々と語る田中さんにはすべてを達観した重みが感じられ、引き込まれた。
本音を引き出した質疑応答
小学生から繰り出される辛辣な質疑に淡々と応える田中さん。その中で軍国主義に洗脳されていた当時の自分を省察し、「自分の頭で考える」「戦争反対」を強く訴えかける田中さんの姿がこのドラマの最大のハイライト。戦争体験の描写とともに息を呑むシーンだった。
最後はそう来るよね
このドラマの隠れテーマは「友だちづくり」。田中さんが語り部の役割を果たしたのも小学生の友だちの期待に応えるため。小1女子からの「好きな食べ物は何ですか?」に対して、祭りで友達から奢ってもらったチョコバナナを挙げる田中さん。容易に想定できる展開だったが、むしろ予想通りで報われた。
学校の教材に!
この数年、道徳、総合的な学習の時間、外国語活動、プログラミングなど、新たな科目の設定が学校教員の負担感を増やしている。そんな時間要らないので、こういうドラマを先生と児童・生徒で鑑賞して、意見交換して欲しい。正解はない。自分の頭で考える時間に!