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#9 妻、小学生になる(2022)-天才子役・毎田暖々の代表作

番宣を見た時点では「甘ったるいホームドラマ」を想定していたので、「石田ゆり子さんが出るなら、見ようかな?」くらいの軽い気持ちで見始めたのですが、あっという間に、破壊力満載の登場人物の演技力に引きこまれ、ウイットと切なさと感動の波に包まれてしまいました。

毎田暖々(まいだのの)さんの枯れた演技力

NHK朝ドラ「おちょやん」では主演・杉咲花さんの幼少期を演じておられ、「元気な女の子やなぁ」という程度の印象だったのですが、このドラマでは、ネグレクトに苦しむ小学生・万理華、および、亡き妻・貴恵(石田ゆり子さん)というふたつの人格を見事に切り替え、演じられていました。実年齢12歳の子役さんが、いたって自然に夫や娘と会話を交わすその姿-『枯れた演技』-に衝撃を受けました。NHK「あなたのブツが、ここに」では、母親の愛情に飢える小学生を演じておられ、そのギャップ間に対して、(良い意味で)「この子、バケモンや」と感じ入りました。

堤真一さんの表情

堤さんの演技力も凄まじかったです。妻と死に別れたことによる虚無感を引きずりながら、生まれかわりの小学生とふつうに夫婦の会話を成立させるなんて、この人の演技力もモンスター級だと思いました。小学生の妻からなにかと諭されるたびに見せる微妙な表情(喜怒哀楽)が見事でした。演技の底力は感情の発露よりも表情にあると信じている私にとって、堤さんは中井貴一さんと並んで、日本のトップ俳優なのです。

自然体の蒔田彩珠さん

「私の一番最悪なともだち」でも紹介しましたが、この方の最大の魅力は「自然体の演技」にあります。「お帰りモネ」で、姉(清原果耶さん)に感情をぶつける一瞬に凄まじいインパクトを感じましたが、このドラマでは、生まれかわりの母親(小学生)を慕い、小学生に甘える姿を好演されていました。違和感をまったく感じさせない、底知れぬ演技力に圧倒されました。

森田美智(もりたみさと)さんのスパイス

堤さんの年下上司(課長)役として、生まれかわりの妻がいるとは知らず、恋愛に臆病ながら、堤さんに想いを寄せる役柄を好演されました。告白は実りませんでしたが、視聴者へのドキドキ感は十分に伝わったのではないでしょうか。もっと評価されても良い若手女優さんだと思います。

スタッフの力量に乾杯

というこことで、石田ゆり子さんの存在感を凌ぐ役者さんたちによる、温かいホームドラマというか、新たな家族観を楽しませて頂きました。タイトルの表示、BGM、エンディングのテロップなども工夫が凝らされており、なんだかとても懐かしい気分に浸りました。「なぜだろう?」と思って色々調べてみたら、『凪のお暇』と同じ制作スタッフだったんですね。納得。


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