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喜劇 戯曲『Mistero risolto in amore!(恋に落ちた謎解き)』(1幕第4〜7場)

主な登場人物
ベニート 20歳 孤児で教会で育った。男らしい性格だが、頑固でひねくれている。アルバーノの兄。
アルバーノ 17歳 孤児で教会で育った。美しい顔をしているが、小心者。ベニートの弟。
イレーネ 20歳 おっとりしていて、恋に恋する乙女。理想が高い。ビアンカとは親友。
ビアンカ 20歳 しっかりしているが、恋などには興味がなく、一人で楽しみたいタイプ。イレーネとはなぜか馬が合う。

第四場 公園

翌日。場所は変わって、公園。おじいさんが新聞を読んでいる。子供がスクーターに乗っている。
二人の女性がベンチで話している。

イ「それでね、目はクリクリで、唇は薄く、着ているものは美しく…」
ビ「そんな可愛らしい人、いるのね。でも、あなたの話を聞いてると、ちょっとウジウジしてて男らしくないわ。」
イ「(食い気味に)グイグイ来られる方が怖いわよ!…でも…悪い人を捕まえる強さも持っているのよ~はぁ~また会いたいわ~」
ビ「昨日出会ったばかりじゃない。今度はいつ再会できるのかしら(少し嫌味ぽく)」

公園のすみでは二人の男が話している。
べ「また会うのに家の前では不自然だ。今度はあの女の行くとこ全てをつけてタイミングを図るか…」
ア「わざわざ出向かなくたって出会えるよ…これは運命なんだ…!」
べ「おい、本気で惚れてるんじゃないだろうな?求婚者役に入り込まれてしまっては困るんだが」
ア「…ん?何か言ったかい、兄さん……ぎゃあ!!」(ベニートの腕に絡みつく)
べ「なんだよ…」(迷惑そうに腕を解こうとする)
ア「彼女!!彼女あそこにいるう!!」
べ「うわ!よし!話しかけて、それからデートに誘うんだ!!!!」
ア「で、で、で、で、で、デーーーート?!?!」
べ「さ、早くいくんだ!」
ア「どうしよ、僕デートなんか誘えないよ」
べ「俺が近くで見てて助けるから。困ったら『鳩が鳴いた』が合言葉だからな!」
ア「分かった兄さん。ありがとう。やってみるよ!」

アルバーノ、イレーネとビアンカに近づく。ベニート、ベンチの裏の草むらに隠れる。
ア「あ、あの…!!」
イ「ア、アルバーノ男爵?!」立ち上がる。
ア「イレーネさん…!覚えててくださってたんですね!はぁ、嬉しいなあ…僕、ずっと会いたくて…はっ!(言ってしまったという感じで口をおさえる)」
イ「私も、お会いしたかったわ!!」
ア「イレーネさん…!」
二人が見つめ合う。
(ベニート、その様子を見て、ほくそ笑む。)
ビ「ちょ、ちょっと!あの、イレーネが言ってた人って…この人?」
イ「そうよ!こちら、私のお友達のビアンカです。ビアンカ、この方が、この間助けてくださった…アルバーノ男爵。」
ビ「こんにちは。この間は友達を助けてくださってありがとうございました。男爵は、どこにお住まいで?」
ア「僕は…あ、あの教会に…」
(ベニート、それを聞いて慌てる。)
ビ「教会?」
ア「の、近くに…!」
イ「そうだったのですね!私は毎週日曜日に教会に礼拝に行くんですよ。もしかして、あなたも?」
ア「いえ!僕は、逆に逃げています!礼拝というものは小さい頃から嫌いです。あまりもののパンは好きですが…ハハハ!」
ビ「あまりもののパン?」(怪訝そうに)
(ベニート、弟の失言に落胆する。)
イ「(何も気にしていない様子で)まあ!アルバーノ伯爵ったら!面白い方!ふふふ…」
アルバーノ、イレーネ、笑い合う。
べ「女が呑気でよかった〜」(ベニート、一旦安心する。)
イ「あの、これからビアンカとクレマチスを見にいくの。アルバーノ伯爵もよかったら…!」
ア「いいんですか?!クレマチス…遊園地に新しいサーカス団でも来ているんですか?」
イ「まあ!(笑いながら)違いますわ!クレマチスというお花が見頃なの。」
ア「ああ、花の名前かあ…」
ビ(一人ごとで)「なんだかあの男怪しいわね…男爵にしてはなんか頼りないし…イレーネには悪いけど、質問ぜめにしてやろうかしら。」
ビ「あの、アルバー男爵。失礼ですが、どこの土地の方でしょう?このような片田舎で初めてみたお方で」
ア「えっと、ちょっと遠いところ…」
ビ「どうしてここへ?戻ってこられたとか?」
ア「えっと、あの…」
(ベニート、心配そうに様子を伺う)
イ「もう、ビアンカったら、急にたくさん質問したら、アルバーノ伯爵が困ってしまうでしょう?さ、あなたもクレマチス、一緒に見に行っていいから!そこで3人でゆっくり話しましょう?」(ビアンカを引っ張る)
ビ「え?!私はいいわよ、っていうかもともと私と一緒に行く予定だったじゃない!」
3人、行ってしまう。
べ「せっかくデート的なものにこぎつけたが…あの女も一緒なのか。あいつ、なんかよく喋るし邪魔だな。」
ベニート、3人を追いかける。

第五場 街の広場

アルバーノ、イレーネが笑いながら、歩いている。その二人の後ろにビアンカが不審そうに歩いている。もう十歩後ろにベニートがついてきている。
ア「ああ、それで、僕は猫に引っ掻かれて…」
イ「ふふふ…それでこの傷が?」
ア「そう、ずいぶん小さい頃の話だけど。」
ビ「小さい頃、猫を飼っていたのですか?」
ア「はい。捨て猫が三匹いて。一匹はすぐ死んでしまったけど…(悲しそうな顔をする)」
イ「(アルバーノを慰めながら)小さい頃、アルバーノ男爵はどんな子どもでしたの?」
ア「うーん、いつも鼻たらして、兄さんのあとばっかついていって…」
イ「お兄さんがいらっしゃるのね!」
ア「はい、自慢の兄さんなんだ!僕なんかより男らしくて…はは、時々恥ずかしくなっちゃうんです、僕。」
イ「どうして?」
ア「兄さんに頼ってばっかでいいのかなって。」
イ「仲が良いんですね、お兄さんと。きっと、アルバーノ男爵もお兄さんの力になってますわ。」
ア「そうかなぁ…でも兄さんの方が頭もいいし…」
ビ「あの、男爵は絵画には興味はあるのかしら。私、絵を描くのが好きなんですけれど…サンドロ・ボッティチェリの展覧会が開催されているの、ご存知?」
ア「え、えっと…サンドロ?えっと、誰だ…苗字がなんだって?」
(ビアンカ、怪訝そうにする)
イ「本名はなんだったかしら。ボッティチェリはあだ名らしいから…」
ビ「男爵のお名前は?」
ア「えっと、アルバーノ、です…」
ビ「苗字ではく、名前が、アルバーノ…?」
ア「えぇ!!(しまったという表情で頭を抱える)」
ビ「あなた、何者ですか?」
ア「ああん、『鳩が鳴いた!!!』」
イ「え、鳩がどうしたのです?」

(ベニート、急に現れる。)
べ「おっと、ビアンカじゃないか!」
ビ「え、だ、誰?」
イ「お友達?」
ビ「え、えっと…どこかで見たような気がするけど…」
べ「覚えてないの?残念だなぁ…僕たち、とっても仲良しだったのに!」
ベニート、大袈裟にビアンカの手を握る。
ア「(慌てて)に、兄さん、どういう…」
ビ「ベニーニョね!!!」
3人「ベニーニョ?!」
ビ「大きくなってたから分からなかった!ベニーニョでしょ?!」
べ「え、ああ…(ぶつぶつ)ベニート?なんだけど…」
イ「ああ!よくあなたから聞かされていた、ベニーニョね!ベニーニョさん、ずいぶん私聞かされていたのよ、あなたの話を!!」
べ「え?」
ビ「(慌てて)もう!やめてよ、イレーネ!でも…どうして、ベニーニョ。どうしてあなたがここにいるの?!」
べ「え…?その、(開き直って)君に会うためだ!ビアンカー!」
ビ「ベニーニョ…」
べ「ぜひ、二人で再会を喜びたい。お二人さん、悪いが、ビアンカを奪ってもいいかな?」
イ「ええ、もちろん!ああ、これこそロマンスね!」
ア「僕は何が起こってるかちっともわかんないよ。」
イ「私が教えてあげますわ。さ、私たちはクレマチスを見に行きましょう!」
ア「うん!」
二人、去っていく。

ベニート、ビアンカの予想外の反応に戸惑っている。
ビ「どうして今まで会いにきてくれなかったの、ベニーニョ。ずっと…会いたかった。」
べ「あ、ああ…ごめん、今まで会いに来れなくて。」
ビ「あなたが手紙を書いてくれなくなって…でも、私の手紙は届いていたのね。だから、ここにいることが分かったんでしょ?」
べ「そうなんだ…。ごめん…。とりあえず、今は再会を喜ぼう。」
ビ「思い出の、あの場所に行きましょう。」
べ「お、おう…久しぶりに来たからな…道がよく分からなくて…連れていってくれるか?」
ビ「そうよね、こっちよ」
ビアンカ、歩き始める
べ「(独り言で)無理やりこいつの友達を装って、こいつを、アルとイレーネから一瞬遠ざけたかっただけなのに…どうやら人違いで俺はこいつの元恋人のベニーニョとかいう奴と勘違いされてるみたいだ。面倒なことになった。…待てよ。これをうまく使えば、こいつからも金を巻き上げられるかもしれない。よし!」

第六場 ビアンカの家の庭

ビアンカ、一軒の家の前の庭にくる。
ベ「ここは…来たことがある気がする…」
ビ「当たり前よ。だって私たち、毎日のようにここで遊んでたじゃない。私たち、こんなにちっちゃかったよね。(自分の腰ぐらいに手をおく)」
べ「そんなに、ちっちゃかったのか…」
ビ「そうよ。ふふふ。楽しかったなぁ〜」
べ「…だな。」
ベニートは考え込みながら庭をぐるぐる回っている。
ビ「手紙がこなくなって、何もわからなくなって…どこにいたの?今、何をしているの?」
べ「…何をしていたか…思い出したくもないよ。今日は、君に会いに来たかっただけなんだ。それに……(立ち止まって)実は追われているんだ。」
ビ「追われている…?誰に…?」
べ「君を巻き込むわけにはいかないから、詳しいことは言えないけど、お金がいるんだ。数日後、きっと奴らがここにくる。それまでにお金を作って渡さなきゃいけないんだ。」
ビ「そんなに危ないことに巻き込まれているの?…昔は、そんなんじゃなかった。」
ベ「俺は巻き込まれただけだ。頼む、助けてくれ。」
ビ「私にお金を借りようとしているの…?あなたは、人にお金を借りようとしているのね、それも大金。」
ベ「仕方ない。借りなければいけない状況じゃないか。」
ビ「本当に?あなたはどんな時も自分の誇りを持ち続けていると思っていた。それを私と約束したじゃない。」
ベ「約束…?」

2人はストップモーションになる。回想が入る。

女の子が庭にやってくる。
女の子が1人で絵を描いている。
男の子が何かを抱えて庭に走り込んでくる。
女の子「誰?!」
男の子「わ!!」(驚く)
女の子「何しているの?ここは私の庭よ?」
男の子「そうなんだ…ごめん。もう少し、ここにいていい?」
女の子「いいけど…」
男の子「ありがとう!」急に庭に座り込んで、抱えていたパンを貪り食う。
女の子の描く絵を覗き込む。
男の子 「うまいね」
また、パンを貪り食う。
女の子「お腹、空いてるの?」
男の子「うん!」
女の子「パン、おいしい?」
男の子「おいしいなんてあるもんか」
女の子「どうして、そんなに急いで食べてるの?」
男の子「急いで食べて、僕のお腹の中に入ったら、誰にも取られないから!」
女の子「いつも、誰かに取られるの?」
男の子「市場のおじさんが、追いかけてきて、返せって言ってくる。僕はお腹が空いたから、食べたいだけなのに。」
女の子「お金は?払ったんでしょ?」
男の子「お金?!ない!!」
女の子「だめよ!お金を払ってないなんて…(立ち上がって、大声で)ドロボー!!!」
男の子「(女の子の口を塞いで)うるさい!」
女の子「(男の子の手を振り払って)やめて!泥棒に触られたくない!」
男の子「泥棒じゃない!」
女の子、男の子の方を険しい顔で振り返る。
男の子「…僕は大きくなったら、有名になる!幸せになるんだ!」
女の子「どうやって?泥棒がどうやって有名になるのよ!」
男の子「泥棒のボスになるんだ!」
女の子「泥棒の、ボス??」
男の子「泥棒のボスになったら、いっぱい儲けられる。それで、お金持ちになって、泥棒をやめて、暮らすんだ。」
女の子「泥棒のボスになりたかったのに、最後はやめちゃうの?」
男の子「なりたいわけじゃない。お金持ちになりたいから、一回泥棒のボスになるだけだ。」
女の子「じゃあ、泥棒のボスになりたくないのに、どうして一回なるの?」
男の子「もう!だから、なりたくないけど、しょうがないんだ!僕にはそれしか思いつかないんだ!」
女の子「しょうがなくないわ!」
男の子「え?」
女の子「私は、なりたくないものには、ならない!」
男の子「…君にはそれができるんだ…」(座り込む)
女の子「だって、なりたくないのに、やってたら、自分が嫌いになるもん。」
男の子「僕は…泥棒やっても自分を嫌いにならない」
女の子「ほんとに?」
男の子「……………ほんとは、嫌いだ。追いかけられたり、嫌なことを言われたりするのは嫌だ…(顔を埋める)」
女の子「素直なのね」
男の子「…」
女の子「泥棒じゃないあなたはいい人なのね?」
男の子「どうせ泥棒だよ」
女の子「私は泥棒は嫌い。でも、泥棒じゃないあなたは嫌いじゃないわ。」
男の子「ふーん」
女の子「ねぇ、あなたの名前は?」
男の子「…ベニーニョ。君は?」
女の子「私はビアンカよ」
べ「ビアンカ…(面白おかしく)ビアンカは、泥棒が嫌い!」
二人、笑う。
ビ「でもビアンカは、ベニーニョは好き!」
ベニーニョ、少し驚いて、戸惑う。
べ「僕、ベニーニョになれるかな。普通の、ベニーニョ…」
ビ「なれるよ!(ベニーニョの手をとる)約束!」
ベニーニョ、頷きながら、差し出された小指に指切りげんまんをする。
 「ビアンカ、ご飯よ〜!」という声が聞こえる。
ビ「これからも、ビアンカと遊んで、ベニーニョ」
べ「うん。またくるね」

時は今に戻る。
ビ「それから毎日のように私の庭で遊んだよね。」
べ「……」
ビ「…忘れちゃったの…?」
べ「…思い出したよ。思い出した。でも…普通のベニーニョにはなれなかったよ。」
ビ「…手紙、途切れたの…なんで?」
べ「それは…君から送ってこなくなったんだ。送ってこないから、忘れられたのかと思って…俺ももう忘れようと思って。」
ビ「で、本当に忘れてた、と。」
べ「…ごめん。でも、手紙は君がここから引っ越して1ヶ月くらいでこなくなったから…ポストを覗くのをやめたんだ」
ビ「うそ。私、ずっと送っていたのよ、ずっと。一年くらい、送り続けた!」
べ「(少し驚いて)本当か?なんでだろう。帰ったら毎日教会のポストを覗いてた。毎日一緒に遊んでいた君が引っ越したのが寂しくて、手紙が俺の楽しみだったんだ。でも、あるときから手紙がこなくなった。だから…君は自分の人生を見つけたんだと思って…忘れようとしたんだ、ビアンカ」
雷が鳴る。空の雲行きが怪しくなってくる。
2人、空を見上げる。
ビアンカ、べニートは走って雨宿りできるところを探す。

第七場 植物園

イレーネ、アルバーノ、植物園のベンチに座っている。
ア「じゃあ、ビアンカさんは、子どもの頃に出会ったベニーニョさんを忘れられなかったんだ。」
イ「ビアンカはひとりっ子でご両親も厳しくて、小さい頃、遊び相手がいなかった。だから、5歳くらいの時に出会った男の子、ベニーニョさんが救いだったんだと思うわ。」
ア「イレーネ、さんは、ビアンカさんといつ出会ったの?」
イ「…あの!イ、イレーネって呼んでくださる…?」
ア「い、いいの?!イ、イレーネ…!あの!僕も男爵ってちょっと緊張するから、アルバーノってよんでよ…!」
イ「(驚いて)ええ!…アルバーノ…!」
2人、嬉しそうに笑いあう。
イ「そうそう、私達がいつ出会ったかよね。私達は、10歳の時に学校で出会ったの。ビアンカが転校してきたのよ。」
ア「転校?」
イ「ビアンカは、5歳の時にここから引っ越して、遠くの街に行ったの。でも、また10歳の時にこっちに戻ってきたのよ。」
ア「そうなんだ。じゃあ、ビアンカさんとベニーニョさんは途中離れ離れになって…」
イ「そう。離れ離れになっても、お手紙を交換してたらしいんだけど、すぐ途切れちゃったみたいで…あんまりこのことは私にも言わないけど、忘れられたと思ったって悲しそうに言ってた…」
ア「そして、ビアンカさんがこっちに帰ったとき、再会することができなかった…」
イ「ええ。別れてから5年たってたし、ビアンカはベニーニョさんに会いに行こうとは思わなかったって。だけど、私も一緒に、一回彼の住んでた教会に行ったことがあるの。」
ア「教会…?」
イ「彼は、教会に住んでいたのよ。」
ア「ベニーニョさんも教会に…(混乱し始める)」
イ「教会で、ベニーニョという人はいないかって、教会にいた神父様に尋ねたけど、ベニーニョという人はいないと聞かされた。ベニーニョは遠いところに逃げたと。その神父様は、ベニーニョが帰ってこないことをとても嘆いていたわ。」
ア「ベニーニョさんは、逃げた…」
イ「詳しいことはわからないけれど…」
ア「旅に、出たんじゃないかな」
イ「え?」
ア「(思い出しながら、口ずさみ始める)ベニーニョは旅に出た。旅していると見えてくる。人生が、人生が…。二人の男の子にまた会いにくる、会いにくる…」
イレーネ、不思議そうにアルバーノを覗き込む。
(だんだん、天気が悪くなってくる。)
ア「小さい頃、よく聞かされていた歌だよ。ベニーニョは旅に出たんだ。決して逃げたのではない、だって、二人の男の子が待っているんだもん…」
イ「アルバーノ、どういうこと?どうしたの?」
ア「今、思い出した。僕と兄さんが寝る前に神父様から聞かされていた歌…その歌はベニーニョが主人公なんだ。」
イ「神父様…?どういうこと?」
ア「僕たちを育ててくれた、神父様が毎晩歌ってくれた歌…」
アルバーノ、立ち上がって、頭を下げる。
ア「ごめん、僕、教会育ちの貧乏な奴なんだ。男爵なんかじゃない…!」
イ「アルバーノ…!!」
ア「君に嘘をついてた…ずっと…もう君に嘘をついているのはいやだ…本当にごめん。」
イ「いいのよ、アルバーノ…」
ア「イレーネ…?」
イ「あなたと一緒にいたら、心がときめくの。どんなことがあっても、正直なあなたには変わりないような気がするの。」
ア「イレーネ…!…僕もだよ。僕も、君と出会ったときからドキドキが止まらないんだ!なのに…僕は君を騙そうとしてた…実は、僕は…」
雷がなる。
イレーネ、叫んでアルバーノにしがみつく。
雨が急に降ってきて、ごうごうと音がなっている。
ア「(雨風の音に負けないように大声で)大丈夫?!」
イ「(同じく大声で)ええ。ねえ、あなたについて、教えて!私、もっと知りたい!それに、なんだか、ビアンカを救えるかもしれない、そんな気がしているの!」
アルバーノ、強くうなずく。
ア「僕もだ!兄さんを…救いたい!とりあえず中に行こう!!」
アルバーノ、イレーネを支えながら、植物園の建物の中に入る。


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