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喜劇 戯曲『Mistero risolto in amore!(恋に落ちた謎解き)』(2幕第10〜11場)

主な登場人物
ベニート 20歳 孤児で教会で育った。男らしい性格だが、頑固でひねくれている。アルバーノの兄。
アルバーノ 17歳 孤児で教会で育った。美しい顔をしているが、小心者。ベニートの弟。

イレーネ 20歳 おっとりしていて、恋に恋する乙女。理想が高い。ビアンカとは親友。
ビアンカ 20歳 しっかりしているが、恋などには興味がなく、一人で楽しみたいタイプ。イレーネとはなぜか馬が合う。


二幕 過去と現在の鍵


第十場 市場


幕が上がる

夕暮れ時の市場。2人の男が市場を片付けながら話している。

市場の男1 今日は、あの兄弟こなかったな。
市場の男2 そうだな、ベニートとアルバーノ。兄さんの方はしっかり者だが、弟は頼りないよなぁ。
市場の男1 そうだな。でも、兄さんの方もなかなか大変な性格なんだよ。
市場の男2 そうなのか?
市場の男1 ああ。あんな頑固な男を見たことがない。なんでも、頭がいいが、自分がこうと決めたことはなかなか変えられない性分なんだよ。
市場の男2 まだ若いからな。…あの兄弟、明日は来るかな。
市場の男1 来たら、今日できなかったここの重いもんを運んでもらおう。
市場の男2 あぁ、若いからな。
市場の男1 あー、今日は急に雨が降ってきて大変だった。
市場の男2 本当だな。さ、帰ろう帰ろう。

一人の男がキョロキョロとしながら市場に入ってくる。
歳は40歳ぐらいだろうか。口髭をはやし、白髪まじりの髪を貴族らしく一つにきちんとまとめている。立ち姿は長身の背を伸ばしていて上品な服装に身を包んでいて凛々しいが、瞳の中は深みがあり、微笑みには憂が浮かび上がっている。市場に残っていた一人の男に声をかける。
男 ちょっと、失礼…
市場の男3 へい、どうしました
男 ベニーニョという男の子を知りませんか。いや、今はもう20になっているのですが…
市場の男3 ベニーニョ…知らないなぁ…
男 じゃあ、17の若い男は?ベニーニョの弟なんだが…
市場の男3 17…ううん、アルバーノいるが。そいつには兄貴がいるが、名前はベニートだったけどな。
男 ベニート…?
市場の男3 二人ともここで働いてる。
男 二人は、元気でしょうか、ちゃんと働けていますか。
市場の男3 ああ、普通にちゃんと働いてら。…お前さん、二人の知り合いかい。
男 いや、昔の知人でね…この町の教会は向こうの丘の方にまだあるかな?
市場の男3 ああ。昔っから変わらねえ。あっちに建ってる。
男 ありがとう。では、失礼。
市場の男3 なんだか妙な男だな。貴族みたいな雰囲気してら。ま、俺にはわかることもないが。
2人がはけて、誰もいない市場。

第十一場 市場

市場にアルバーノが泣きながら走ってくる。そのあとをイレーネが追ってくる。
アルバーノ 本当にごめん!もう、君に顔を合わせる資格もないよーーーー!!!
イレーネ 待って、アルバーノ!!あなたは反省しているんでしょ?結婚詐欺のこと、私もう許すから!
ア 僕のこと許してくれるの?
イ ええ。だって、もう結婚詐欺をやめるんでしょ?
ア やめるよ!今は君が好きなただの男なんだから!
イ (照れる)
ア (照れる)
イ ビアンカ達はどこにいるのかしら?ベニーニョさんとあなたの小さい頃聞いていた歌が、関係があるのか、調べないと!
ア あの…その、ビアンカさんとベニーニョさんはもう一緒にいないかもしれない。
イ どういうこと?
ア ビアンカさんは人違いをしているんだ。あの人はベニーニョさんじゃない、僕のお兄ちゃんなんだよ!
イ え!?
ア 兄さんと僕はグルになって結婚詐欺をしようとしたんだ。きっと兄さんがビアンカさんに話しかけたのは知り合いだからじゃなくて、僕を助けようとして…
イ 何ですって!?ビアンカと結婚詐欺師を近づけるなんて、なんてことしてくれたの!?
ア えっ、僕も結婚詐欺師なんですけど………ほんとにごめん…
イ ビアンカあんなに喜んでたのに、人違いだったなんて、可哀想…
ア 僕からも謝りに行くよ、僕がドジだったのが悪いんだし…

2人が話していると、市場にビアンカが泣きながら走ってくる。その後をべニートが追ってくる。
ビアンカ 私もう信じられない!
べニート 待ってくれ!
イレーネ ああ、ビアンカ!可哀想なビアンカ!
ビ イレーネ!大変なことが分かったのよ!
イ ええ、知ってる…私がいるわ、ビアンカ。(ビアンカに歩み寄る)
アルバーノ ああ、お兄ちゃん…(泣きそうな顔)僕からも謝るよ!
べニート なぜだ?君が謝ることはないだろう?
ア ビアンカさん、ごめんなさい!ぼくたちが結婚詐欺をしたせいで、あなたを傷つけてしまった。兄さんが、あなたの記憶の中のベニーニョさんじゃなくて、ごめんなさい!!!
ビ (目を丸くして唖然としている)
べ アル!俺まだ何も打ち明けてないのに…!(失望)
ビ あなたたち、兄弟なの?結婚詐欺って、何…?ベニーニョ、どういうこと!?私、まだ何も聞いてない!(べニートに詰め寄る)
イ ビアンカ、この人はベニーニョじゃない、アルバーノのお兄さんなのよ!
ビ どういうこと?この人は紛れもなく、ベニーニョよ!
イ じゃあ、あなたはさっきなぜ泣いていたの?ベニーニョさんに真実を明かされて泣いていたんでしょ?
ビ 違うわ!私は私の両親に失望して、泣いていたのよ!
イ あなたの両親?
ビ 私の両親は、ベニーニョからの手紙を私に渡さず、捨てていたのよ!
イ 何ですって?
べ なんだって?
ビ (ベニーニョのところに歩み寄り)ベニーニョ、あなたに合わせる顔がないわ、さっき、父にそのことを告げられたの。雨が降ってきた時、私の家にタオルを取りに行ったでしょ?その時、お父さんによばれて…

後ろに書斎と父親が現れる。(回想)
父 あの家の前にいる男は誰だ?
ビ ベニーニョよ!ほら、覚えてる?小さい頃、よく遊んでた…少しの間だけ手紙を送り合ってた…
父 あぁ、あの教会育ちの薄汚い…
ビ え?
父 なぜまたつるんだりするんだ。お母さんにバレないうちに関わるのをやめておきなさい。教会育ちのよくわからない人と関わっているのを知ると、怒り出すに違いない。
ビ そんな、大丈夫よ…
父 このことで私達は引っ越したんだぞ、手紙だっていちいちポストを見て捨てて大変だったんだ。
ビ どういうこと!?
父 あぁ、まぁ、面倒だから。ね。お父さんもお母さんに色々言われるの面倒なんだ。やめときなさい。
父親、暗転、書斎ごと盆が回る
ビ (去る父親に向かって)お父さんはお母さんのいいなり…!私の気持ちはどうなるのよ…最低!!!

ビ そんなことになってるなんて、知らなかった…最低よ…父も、母も…大体、母にはもちろん父の態度も腹が立つし…あんな2人、考えるだけで嫌…(黙り込む)
べ 君は俺からの手紙を読むことなく捨てられてたってわけか…
ア ちょっと、兄さんからの手紙じゃないでしょ?もう嘘を貫き通せないよ、兄さん!ごめんなさい、ビアンカさん…!!!!兄は、ベニーニョじゃない、べニートだ!
ビ え?
イ この男は話を合わせてるの、結婚詐欺師なのよ!
ビ なによ!結婚詐欺師でもなんでも、この人はベニーニョよ!
イ ビアンカ…?
ビ 何をしたって、私の思い出の中のベニーニョよ…話してて、何も変わってないことがわかった…賢くて優しいベニーニョよ…
べ ビアンカ…!!俺は、君の約束を守れなかった、だから、もう許されないと思ってた…もう一度チャンスが欲しい、普通のベニーニョになるから…
ア 待って、べニートだろう?僕のお兄ちゃんは…
べ ………べニートだよ、アルにとっては。
ア どういうこと?
イ アルバーノ、あなたの覚えている歌の中のベニーニョは、お兄さんなの?
べ 歌の中のベニーニョ?
ア (歌う)「ベニーニョは旅に出た。旅していると見えてくる。人生が、人生が…。二人の男の子にまた会いにくる、会いにくる…」
(歌っている間、1人の男が近づいてくる)
べ ……おまえ、この歌、覚えているのか
ア 小さい頃、神父様が歌ってくれてただろ?ベニーニョって、ビアンカさんのベニーニョさんと関係あるのかとこの歌を思い出して…
先程市場にいた貴族風の男がアルバーノに近づいてくる。
男 その歌は…
ア (男に驚いて) わあ!びっくりした…
べ 誰なんだ。(アルバーノをかばう)
男 (ベニートを見て)君は…ベニーニョだな…!ベニーニョ…!!大きくなったな…!!
べ お前は…
ア だ、か、ら!ベニーニョって誰?!しかも、(男を見て)しかも、あんた誰?!兄さん!どういうことだよ!
男 兄さん…?君は、アルバーノなんだな?
ア え、うん…誰?!
イ 待って、アルバーノ、あなたの歌の中の…
べ 二人の男の子にまた会いにくる、会いにくる…
男 その歌を覚えていてくれたのか…(ベニートの手を取る)
べ (男の手を振り払う)とっくに忘れてたよ!それに俺はベニーニョじゃない!べニートだ!
ビ (不思議そうに様子を伺う)
べ ベニーニョ…俺はこの名前が大嫌いだった…お前の名前なんか…
男 ベニーニョ…すまなかった。今まで君たちを置いて…
べ 置いて行った?お前は俺たちを見捨てたんだ。もう、お前のことなんてとっくに忘れていたよ。ベニーニョの名前も。俺にとって、過去は、お前を忘れ去った時から始まっているんだ!
男 ベニーニョ…君は今、なんという名前なんだ?
べ (黙り込む)
ア ベニートだよ、兄さんはベニーニョじゃなくて、ベニート…
男 アルバーノ…
ビ いいえ。彼はベニーニョよ。
べ ビアンカ…
ビ 彼は、私にベニーニョと名乗った。そして、今も…あなたは私を忘れていなかった。そうでしょ?
べ …ああ。ベニーニョだったことを忘れようとしたけど、君のことは忘れられなかった…
ア 兄さん、ベニーニョという名前だったのか?
べ ああ。ベニーニョという名前だった。この男と同じ名前だよ。
イ (男を見て)この人も、ベニーニョ…
べ この男は、俺たちを置いて去った、俺たちの父親だ。
ア と、父さん…?(父親を不思議そうにみる)
べ この人が去った時、アルはまだ生まれたてだった。育てる者がいなくなって、俺たちは教会に預けられた。俺のベニートという名前は、お前が、俺につけたんだよ。(アルバーノの肩に手を置く)
ア 僕が?
べ (少し笑って)まだ小さかったアルは、ベニーニョ、と発音することができなかったんだ。唯一の家族が兄弟の名前を言えないなんておかしいだろう?だから、俺が、ベニートに変えたんだ。
ア 兄さん…
べ 俺にとって、家族はアルしかいなかった。だから、アルが呼びやすい名前が良かったんだ。それに……
ビ それに?
べ 自分たちを置いて行った父親と同じ名前なんて嫌だったんだ。神父が歌う歌も…父が歌っていたから、思い出すのが、嫌だった…
ア 兄さん、どうして言ってくれなかったの?
べ …え?
ア 僕にとっても、兄さんしかいなかったんだよ。兄さんはいつも一人で何かを抱えてる。僕に、なんでも言ってよ。僕だって、兄さんの力になりたいんだ。
べ アル…父親が俺たちを置いて行ったという事実を知って欲しくなかったんだ。アルはまだ小さかったし、それを聞いたら俺より苦しいだろうから…
ア もう僕も小さくない、僕にもっと頼ってよ!
べ アル……!
二人は抱き合う。
イ ベニーニョは旅に出た。旅していると見えてくる。人生が、人生が…。二人の男の子にまた会いにくる、会いにくる…この歌のベニーニョは、お父さん、二人の男の子はベニートとアルバーノだったってことね…
男 息子たちが大きくなっていて、良かった…
ビ 置いて行ったのに、息子と呼ぶ資格はないわ!
イ ビアンカ!ちょっと失礼よ…
ビ イレーネは怒りを感じないの?あなたの愛するアルバーノを置いて行ったのよ?
イ それは…!(男に向かって)どうして、置いて行ったりしたのですか?
男 非難されて当たり前だよ、私は…。ベニーニョ、いや、ベニートか…とアルバーノ、この話だけ、聞いて欲しいんだ。君たちに関する真実を。
ア 真実?
べ …聞きたくない。
ア 兄さん!

ビアンカの父親が市場の階段から降りてビアンカを見つける。
ビアンカの父親 ビアンカ!
ビ お父さん!
父 早くきなさい!家に帰りなさい!
ビ いや!帰らない!!
父 そんな教会育ちの貧乏な輩と関わっていることが知れたらどうなるか!
ビ 誰に知られたらいけないのよ!教会育ちの何がいけないのよ!
父 そんな男、何か企んで君に近づいているんだ!
ビ …私たちは小さい頃から仲良しだったのよ?
男(ベニートとアルバーノの父) ちょっと。
父 なんですか。
男 ベニートのことを悪く言わないでください。ベニートは教会育ちですが、だからと言って人格を決めつけないでください。息子は優しくて良い子なんだ。
べ (自分の父親に向かって)お前に何がわかる!
男 ベニーニョ…
べ 教会育ちだからってそんなこと今までに何回も言われたよ!!もう慣れたし、そういうこと言う奴らと関わる方が面倒なんだ。こういう奴らは何を言っても意見を曲げるなんてことしないからな。俺のやり方を壊さないでくれよ。なんなんだ、お前。突然また現れたと思ったら俺たちに割って入って。なんなんだ。
男 そういうつもりじゃなかったんだ。ベニーニョ。君が悪く言われていると胸が締め付けられて…
べ 胸が締め付けられたのは、自分への罪悪感からだろ!いや、罪悪感なんて感じていないか…
男 ベニーニョ、私は…
べ その名前を呼ぶのはやめろ!俺はベニートだ!ベニーニョはもういない!
ビ ベニーニョ…
父(ビアンカの) ほら、何かに巻き込まれる前に家に帰るんだ。馬車はそこにとめてある。(ビアンカの背中を押して連れて行こうとする)
ビ ベニーニョ…あなたは、ベニーニョだった時間はずっと嫌な時間だったの?
べ いや、ビアンカといた時は、本当の自分だったよ。普通のベニーニョだった。父さんの名前であることも忘れて、ただの、ベニーニョだった。
父 さぁ、ビアンカ。行こう。
べ ビアンカ…!(何か言おうとするが、やめる。)
ビアンカ、嫌がりながらも、階段を上り、連れて行かれようとしている。
アルバーノ、兄に向かい合う。
ア 兄さん!良いの!?兄さんの大切なものがなくなっても…兄さんはどんな時も僕にとってかっこいい兄さんだったんだよ。あんな男の言うことなんて、気にするなよ!今、言い返しなよ。ビアンカさんが好きなんでしょ!?
べ 俺が何か言っても俺が親なしの貧乏人だから、勝てるわけないんだ…それに、普通のベニーニョには、もうなれない…
ビアンカ、その言葉を聞いて悲しむ。父親について行こうとする。
ア (兄を見てから、ビアンカとビアンカの父親を追いかける)待って!
二人、振り返る。
ア (2人を見上げて)兄さんが教会育ちだからってなんだよ!兄さんは僕にいつも優しくしてくれた。それに、ビアンカさんのこと好きなんだ。だから、引き離さないでくれよ!
父 君は知らないのか。君の兄さんは小さい頃から万引きをしていた。今日だって私の娘に急に近づいてきた。何か企んでいるんだ。
ア 違う!!兄さんがパンをとっていたのは、僕のためだ。お腹がいつも空いてたから…今日だって、僕がドジったから、助けようとしてくれたんだ。僕が色々うまくいかなくて…兄さんからビアンカさんを奪わないでくれ。兄さんが一生懸命書いていた手紙も捨てていたんだな。兄さんが僕以外の人と心を通わせたことがどれだけ大切なことか、わかるか。今日まで、僕を助けてくれる兄さんに甘えてた…だけど、僕だってわかることはある!兄さんは、生きていくために、僕のために、強くいてくれたんだ。でも、どんな時も兄さんが優しいことは子どもの頃から変わらない。ビアンカさんと出会った時も、今も、ビアンカさんに対しての優しい思いは変わらないはずだ。
ベニート、俯いていた顔を徐々にあげる。
ビアンカのところに走り上る。ビアンカの父親を見上げる。
べ ビアンカを…ビアンカが好きなんだ。こんな俺だけど、ビアンカを傷付けたり、ビアンカから何かを奪ったりしない!
ビ ベニーニョ…
べ (ビアンカの手をとる)ビアンカ、俺は普通のベニーニョだよ。君と離れていた時も、君を忘れようとした時もあった。でも、今、普通のベニーニョになりたい。これからは君との約束を守るよ。
ビ いいえ、あなたはずっと今までも、これからも普通のベニーニョだよ。弟さんの存在があなたをそうさせた。
べ (アルバーノの方を向いて)うん。ありがとう、アル。アルがいたから、自分を保てたんだ。
アルバーノ、嬉しそうにする。イレーネと顔を見合わせる。
ベニート、ビアンカの父に再び向き合う。
べ あなたはビアンカの権利を奪っている。そんなあなたから俺はビアンカを守る。
父(ビアンカの)どうやって?教会育ちの君と娘は一緒になることはできないぞ。もしそうなりたいというなら、娘は何もかも失う。金を稼いで娘の生活を守ることができるのか。
ビ 私は、自分で歩いていける。ベニートと一緒に。
父 ビアンカ…
イ 私も、アルバーノと一緒に歩いていきたい!
ア イレーネ…!
父 それは無理だよ、イレーネさん。
イ どうして?!
父 君は代々伝わる財閥のひとり娘。相手も釣り合う人でないといけないだろう。いずれは君の家業を継げる人物でなくては。生まれも育ちも君にふさわしい相手でないと。
ア それでも、僕はイレーネさんが好きなんだ。一生懸命これから勉強するから!釣り合う人間になるから!
父 そういう問題ではないのだ。イレーネさんは本当に家柄が良い人としか結婚できない運命なんだよ。
イ そんな…!アルバーノ…!!
ア どうしたら…
イ 私、駆け落ちするわ!
(アルバーノ以外)全員 え?
イ そうするしかないじゃない!せっかく出会った私の理想の人…アルバーノと離れるなんていや!
ア イレーネ!!
イ 行きましょう!!
一同、止めようとする。
男(ベニーニョとアルバーノの父)待ってください!何をするのも、アルバーノ、君の自由だよ。でも、自分の正体の真実を知って欲しいんだ。ベニーニョも。
ア 真実って?
男 君たちを置いて行かなければならなかった理由、真実を…
べ 母さんが死に、育てる力がなかったから逃げたんだ。そのくらい知っている。貧しかったからかなんだか知らないが、子どもを捨てたんだ。
男 ベニーニョにはそう告げられたのか。
べ どういうことだ。                             男 …ベニーニョ、アルバーノ。今から君たちに真実を告げたい。本当のことを知ってどうするか、それは君たちの自由なのだ。しかし…私は終わらせたかった、今までの悲しみを。そしてもし、この真実が、君たちの中の、心の中の、鍵になるかもしれないのならば、話さなくてはならない。どうか、聞いて欲しい。

男が市場にある箱に腰掛ける。ベニーニョ、アルバーノ躊躇い顔を向け合いながら市場の階段に座る。イレーネ、ビアンカも側にある箱に座る。ビアンカの父、イラつきながらも、階段の上の方に腰掛ける。

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