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フリーゲームの共同制作に参加してた時の話

自分が関係していて最も新しいゲームが『ヤシーユと混沌のクリアマター』である。
企画主はYAKUさん。公開先はふりーむ!と夢限にて。

恐らく個人制作をやってると聞いたことはあるだろう『共同制作は失敗する』という話。
でも今の感想は共同でないと絶対に成し得ないような凄まじいモノを打ち上げてしまったということだろうか。

第7回新人フリーゲームコンテストにて『審査員長特別賞』が受賞されました

さて、今回はこのゲームについての参加してた時の制作話をしていきたいと思う。

企画の発端となる前作の存在

発端を説明する前にこの企画には前作が存在しており、新アクエディBBS内で完成に至った経緯がある。企画主はネームレス.RETさん。

そして前作についても既に公開済み。こちらにも参加してたのでリンクを貼っておく。

とりあえずこの土台となる『共同でなにか作ろう』というスレッドがBBS内で立ち上がり、そこから大きく動きがあったのが全ての始まりである。

因みにこの案が動き回る前にもいくつか共同制作の案はあった。
でも問題は案に対して参加者が手につけにくかったり、企画主が出したまま放棄してお流れにしたりするケースが多かった。

なのでこれは共同制作の中でも珍しい成功例となった。
恐らくここでの成功した理由は以下だろう。

  • デフォルト調で縛った ⇒ 同ツール使用者が触れやすかった

  • 企画主が応答した   ⇒ この企画は進行することが明確になった

  • 上記から人が集まってBBSが活性化した

やはりBBSが久しぶりに活性化するほどの人が集まり直した、というのは大きい要素となった。実際それだけ触れやすさという基本土台は強かったのである。

マリオメーカーを遊んだ人なら分かるだろう、マリオという土台があるからこそあの楽しさがある。要は参加する側も分かりやすいほうが入りやすいモノである。

前作との比較

前作の成功があったから、勢いに乗って本作を作成という事でBBSの主であるYAKUさんが企画を発足した事でスタートとなっている。

前作はBBS上での作業となったが、本作はdiscordが主な作業場となった。
サーバ内ライブ配信でのテストプレイができた都合からデバッグにはかなり優位に働いたが、アカウント持ってないメンバーもいたのでその辺のやり取りの不都合もあった。

サーバ内ではカスタム絵文字スタンプでいい漢が最多で押された、何故だw

作業環境の違いはとにかく、ゲーム自体の変化はプレイするだけでも以下はすぐに分かるだろう。

  • 絵の変化

  • ギミックの豊富さ

  • 難易度のノーマルと鬼の分岐化

  • 更にボリュームが増えた

これらを分けて話をしよう。

1.絵の変化

紹介で用意されてるゲーム中のスクリーンショットだけでも明らか違うのは予測できるだろう。前作はそもそもデフォルト調で縛っていたからである。しかし本作は絵を極力差し替えるという方針となり、最終的に今に至っている。

因みにキャラの大半は私が本作の制作中に打ったドット絵である。採用されるかは不明としつつも、という感じで描いたのがそのまま採用された感じである。

裏話をすれば絵を大量生産できるメンバーが少ないのがあり、ステージ制作の方は強いけど絵までは手を出せない、そもそも描けない人が多い状態に。更にメンバーの中には絵師特化の人が居たけど多忙で中々顔を出せずという事もあり、結果的に当時頻繁に顔を出せた私が途中から絵を描く役を半分担っていく感じである。

とはいっても強制力は強くなく『描けたら出す』程度で放流していった。結果的に相当数の絵を本作の中に押し込む事になった。

自サイトの素材集にも上げました

自分が描いた絵は以下になる。

  • 敵キャラのうち大半

  • ワールドマップ

  • 一部の立ち絵

最初はデフォルトのキャラだけのつもりだったが、陰影の付け方の都合で素材集から引用してる敵が逆に浮いてしまった問題が発生し、結果的にその素材集の絵にも陰影をつけて対応する事に。
一応素材集の絵は改造可能のはずだから大丈夫と思ってるが、もし問題があれば元の絵に戻せるような細工はある(※公開した後で今現在、その辺については何も問題が上がってないが)。

ワールドマップのアイコンや道辺りは自分が担当。でも一部は引き継ぎだったり素材集から引用してるので完全に1から描いたわけではない。でも8割ぐらいは描いてコピペしまくる作業の末にできた。

因みに立ち絵のうちエリィと最終盤に出てくるダークヤシーユは別人というのがすぐに分かると思う。逆にそれ以外はほぼほぼ自分が描いた事になる。一部という割にはいっぱい描いた気がするが。

なんでこんなポーズになったんだろう

関与してない絵を問われそうな気がするが、背景については昔描いた素材集の絵だけなので直接は関与してない。またアイテムについても描いたのは冗談でもない酷いネタが書かれた黒いスイッチ程度でその辺も特に執筆してはいない。ブロックについても同様。

いずれにせよ、素材集と参加者の提供と自分の絵が入り交ざってできてるのが本作となる。がめついと思われるだろうが敵キャラが出てきてないステージはほとんどないので。

とにかく絵の方向でも私はいつの間にか本作には力を入れたということだけは言っておく。

2.ギミックの豊富さ

前作のクリアのリザルトシステムはそのままに、本作は更にブラッシュアップして出来上がってる、と言えば良いだろうか。その上で新規ギミックがこれでもかと増えている。

例えばリフトアップするギミックの登場、それを使ってジャンプ台を運んで更に高いところに移動するとかは明らかな新規である。他にも空中ジャンプや壁キックなども明らかであり、ほかを考えるとキリがないレベル。

その豊富さは飽きを作らせないぐらいパターンを豊富にさせたのだが、厄介な問題を起こさせたのだ。ギミックの深刻な説明不足という自体が起きてしまっていた。

最初に置かれたヤケクソなまでの説明量がある『取扱説明書』がその答え。
ギミックが豊富なのは良いが、やってる間に身につけて覚えるスパンをプレイヤーに設けないといけない。その練習用のステージがほとんど出来なかったのもネック。

その辺は前作のシンプルだけどチュートリアル不足さを感じさせなかった所の差は出ている。ただしある程度は説明不足対策として、デバッグ処理中に調整メモを書き並べたというのが裏事情。

もし全ステージ攻略しながら進めると2~3回も同じ解説看板を目にするハメになった経験があるかもしれない。それもスルーした場合に備えての懸念要素を踏まえて置いた調整結果である。

空中ジャンパーの説明看板が複数ステージに置かれてたのもそういうこと

『ギミックに対しての説明』というのは恐らくゲーム制作してる人ならしっかり考えないといけない領域である。共同制作ならではのギミックが分散しやすい結果、個人ではあまり起こり得ない流れなので対策を色々したというのはよく覚えている。

ギミックの豊富さから出る面白さをとるか、説明不足から生じる不親切さをとるかというのは少し天秤に近いものがあるのかもしれない。多ければ多いほど相対的に説明もステージも多くしないといけないし、多くして逆に長くなりすぎてダラダラになっても面白くないので難しい話になる。

この辺の私はデバッグ周りをしていて色々とメモを入れてたのは事実。恐らく完全に説明0という程はなくなった・・・と思い込んでいる。

3.難易度のノーマルと鬼の分岐化

難易度について最初にノーマルのまま遊ぶか鬼モードに変更できるというのがある。この鬼モードについてはやってみると恐らく絶叫モノである。

何故なら一部は作者の本性を見ることができるわけである。かくいう私もヤバいステージを構成する人の一人に君臨してしまったわけだが。主にドクロに置かれたステージ2つと、W10隠しルートに2つあるのでそれが答え。

ここの鬼モードの発狂モードは今どうやってクリアするのか忘れたw

因みに鬼モードの難易度は吹き飛んでおり、なんと未だに私も真EDまでクリアできてない。一応表EDは出来ていて隠しボスまではたどり着いてるが……。

因みに今現在で主要メンバーないで真EDまでたどり着いたのを確認できてるのが1名だけと言ったら、どれだけ物凄い難易度かつ恐ろしい時間がかかるかというのが分かるかもしれない。

この辺の難易度指標も普段の制作者がやらない方向性を使っており『誰かがクリアできたのを確認できたら採用』というすごく吹き飛んだ設定となっている。至極当たり前っぽいような単語なのに吹き飛んでるというとおかしいと言われそうだが、実際鬼モードをやってみれば吹き飛んだ難易度をしているというね。

つまりはまあ本来の制作にはあり得ない姿勢が入ってるのである。
でもこれは最終的に甲乙つけがたい結果になっている。というのも制作者の中にはこのド鬼畜ステージ生産してクリアするかしないかを試す事でストレス発散しているということも分かっており……。

終いには全部の金ジェムを集めてクリアというヤバいプレイをするようになったりする

因みに自分が用意したステージもあれだけ吹き飛んでるようなステージだが、一度どころか数回はクリアしたはずなのでできるはず……多分。

まあここまで壊れ難易度なのも企画主自身が鬼畜大好きなのかもしれない、と思うとそういうことかなぁと考えたりする。

共同制作中のトラブルとか

共同制作と言えばトラブルだろうか。個人制作でもトラブルが当然あるので、起こらないことは無いと思うがこの辺も書きすぎると色々凹むので軽く。

一番摩擦になってたのは制作内容の好みの差異から生じた出来事だろうか。多数決で進める際の悩みと、一方で主張に対して周りを納得させる手段は何かを色々と問われる所となった。

私自身にもトラブルがあり、リアル事情(※仕事)が増えてきた頃合いが制作の後半に起きて、制作時間が取りにくくなったというのもある。もう一言付け足すなら悩みを抱えすぎたのかもしれない。

結果、一部のステージ制作を丸投げするという事態を起こしている。隠しボスの鬼モードが違うのもそういうことになっている。まあ逆に依頼したお陰で隠しボスたる恐ろしい難易度になったから、正直それはそれで良かったのかもしれない。

開発スパンとエトセトラ

本作は期限の設定をざっくばらんと決めてて進行となっていたが、決まってて正解だった気がしている。というのも決まってなかったら集まってなかったし、形にもなってなかった気がする。

ある程度ステージが集まった所でワールドマップなどに順番を用意して配置させる流れは重要。もしそこが完遂できるとステージ断片から一気にゲームっぽい外形ができる。これは個人制作でもオススメの方法。

もし期限がなかったら2024年になっても終わってなかったかもしれない。まあその分ちょっと火炎車みたいな動きをする時もあったが、結果的に完成できたのでそれで良いかもしれない。

流れとしてβ版(6月)→完成版(10月)というのが出来ていたが、これでも公開は本来予定の目安よりも数ヶ月程遅らせている。

メンバーの中にはもっと期限が長かったら良かったと語ってた人もいる。多分、長ければ長いほどテストできる時間もあるし、クオリティが上がるという考えを持っているからだろう。
でも自分はそうは思わず、時間が長ければ長いほど無駄に過ごす時間が増えるだけと考えていた。ある程度の短期集中した結果も重なって、完成に導いたのではないかと今は思っている。

共同制作って難しい?

率直に言って難しい。
まずはある程度人間関係が良くないと共同制作が成立しないことは想像に難くないだろう。前作も本作も元々はBBS常連が集まった事で成立している。

でも完成できた時のやり甲斐は相当なものであるし、自分も後で遊べるぐらいのゲームになるのは事実だ。その理由も自分で作れない構成が度々あるから。

企画主じゃない人が語るのは難癖としかいえないので、前作よりも前にかなり似た例として同ツールを使って行ったBBS内の大会のデータを集約したモノを既に作ったことがある話も交えてしよう。

ただ単純に集約しただけでなく、色々とやり込み要素とかの追加等の討議があり、結果として単品ゲームとして仕上がったモノの一つである。
新アクエディBBS内だけの公開で、後完成してるのは序章と弐章が既に完成している。

こちらでもやってたことは本作とかなり類似しており、大会に出されたゲームをステージに、ゲーム選択画面をワールドマップに例えると丁度良いぐらいだろう。

要は画面のデザイン力がまんま問われてるのである。今ここで出した帰還のデザインは案をそのまま拝受しており、後は変数と表示の細かい調整をやりくりしたのでかなり楽な方だった。

その前の弐章とかはどうだったかというと自分で提案して、後は実装できる限りを進める感じだったが恐ろしくヘビータスクだったという思い出が出てくる。
更に私が動けなくなった時期があったが、その間にきれいに制作が停止するという苦い思い出もある。

セレクト画面だけなら楽だったが、隠しにしたEXを盛るのが大変過ぎた……

つまり企画者というのは作業量が一気にのしかかってくるのだ。特に管理力と行動力。一番ダメなのは主の行動が沈黙してしまうことで、そうなると共同制作は完全沈黙してしまう、要はそういう事だ。

一方で参加者の場合はモチベを潰さずに融通を効かせるのが重要と思っている。質を上げるための提案とか作戦は大事だが、意地を張ってはいけない。そのバランスと思っている。
もっとも私も結構我儘を言ってた気がするので偉そうなことは言えないが……。

結果的に一定の時間に一定数参加者がチャットに居座っているという状態が出来上がっていたことだろう。勿論一番手が自分の時もあったし、入って待機したら誰かは入ってくるぐらいの環境になっていた。

モチベを低すぎる状態がなかった事を維持した理由はイマイチ確定要素がない。それは前述した開発期間にも依存するのか、参加者同士の交友にも依るのかは不明である。
そんな士気の大切さというのを教えてくれる結果になった。

まとめ

多分フリーゲームとしては挑戦的なボリュームと難易度となっているが、制作中のことを思い出して整理すると様々な経験があった賜物であろう。

単純にフリーゲームとして手に触れてほしい一方で、個人一人ではあり得ない構成が多々あることにも気づいて欲しい。

もし『共同制作は難しい』の一言で蹴り落としてるならば、一度プレイしてみたらいかがだろうか。その一言から続きがうまれる事をぜひ願う。

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