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わんとワンの物語 1

わんはワン1号である。名前はまだない。ただ、時々白いクルマでやって来るあのおじさんがわんのことを「ワン1号」と呼んでるので、わんも自分のことをワン1号と言ってるだけだ。わんが1号だとすると2号から5号までいるはずだけど、わんには誰が2号でどれが3号だかまるで区別がつかない。何しろわんもみんなも生まれたばかりなのだから。

でもこんなわんでもワン父とワン母だけはわかっている。わんをこの宇宙に創ってくれたフタリにはとても感謝してるしソンケイもしている。そしてわんをいつもナデナデしてくれるニンゲンのお兄ちゃんのことも大好きだ。けれども時々白いクルマでやってくるあのおじさんのことはまだ信用はしてない。ワンを1号2号なんて呼ぶニンゲンを信用なんかできるもんか。ところが最近なんだかすっかりあの白いクルマのおじさんにセンノーされたみたいで、自分で自分のことをワン1号と言ってしまうわんがいる・・

ワン父はいつもこの宇宙の話をしてくれる。この宇宙にはたくさんの神様がいてたくさんの大自然があるんだそうだ。海の神様、山の神様、空の神様、そして大自然の神様。神様の山にはとても大きな木がたくさんあって、その大きな木にはニンゲンと似ているけれどニンゲンではなくて、でもニンゲンのことが大好きな神様が棲んでいて、大人のニンゲンはとてもその神様を怖がるけれど、子どものニンゲンはその神様とよくスモウをして遊んでいるそうだ。神様の海には岸の近いところにポツンと大きな岩山が浮かんでいて、海の向こうの神様はその大きな岩山を伝ってこの宇宙にやってくるらしい。

わんはまだ生まれたばかりなので、この宇宙も神様のことも大自然のこともまだよくわからない。でも、ここはミナトの近くなので風が潮の匂いを運んできて、その香りがとてもキモチよくて、わんはこの宇宙がとてもキに入っている。この宇宙の大自然は神様が創ったのよ、とワン母が言っていた。じゃあ神様はだれが創ったの、とわんが聞いたら、神様はこの大自然が創ったんだよ、とワン父が言った。わんは生まれたばかりなので益々わからなくなってきた。

ワン父は昔々ニンゲンになりたかったそうだ。でもたくさんの宇宙を旅しているうちにニンゲンにシツボウしてニンゲンになる夢を諦めたそうだ。そしてこの宇宙に来て、またニンゲンになりたくなったみたいだ。

あっちの宇宙ではニンゲン同士が殺しあいをしているという話をきいてビックリした。ワン父父父父父の時代から、いやもっと大昔からそんなことが続いているということにビックリした。そしてそれはこれから先の未来もずっと続くかもしれないと聞いて、わんはとてもカナシイ気持ちになったんだ。

どうしたら殺しあいが無くなるの?と聞いたらワン父は言った「かんたんなことだよ。オマエが強くなったらいいんだ」

わんは2号よりも3号よりも4号よりも5号よりも強いよ。誰にもケンカは負けたことはないよ。でもケンカに勝ってもワン父はわんを褒めるどころか、逆に怒ってばかりじゃないか。その時だけわんはワン父が大嫌いになる。泣いてるわんをペロペロ舐めてくれるワン母のことが大好きだ。

時々白いクルマでやってくるあのおじさんが今日もわんの写真を撮っていった。どうもあのニンゲンは信用できない。なんかふぇーすぶっくとかいうのにわんの写真を載せるらしい。わんも大きくなったらふぇーすぶっくやろうかな。いやいや、あの白いクルマのおじさんにセンノーされちゃダメだ。


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