須野のイルカとノロ墓 @36
イルカ
須野の海岸で捜しものを終えてさて帰ろうかと浜の入口に戻ると、男の子が父親らしき人とふたりで巨大な魚?をロープで引っぱっていた。
近づいて聞いてみると、それは海から打ち上げられたイルカだった。イルカにしてはそんなに大きくはない、2mほどじゃないだろうか。たぶん子供のイルカだ。専門家が研究材料にするため引き取りに来るみたいで、それまで波にさらわれないよう岸に近い岩場まで引いているところだったのだ。
僕も一緒に引っぱるのを手伝うことにした。が・・かなり重たい。10mほど引いてようやく岩場の陰まで移動できた。よくよく見てみると、たぶん座礁したときに付いたのだろう傷が生々しくいたる所に残っている。
イルカ、死体だけど初めて目の前で見ました。
ノロ墓
島に残っているトフルやノロ墓のほとんどは山か小高い丘にある。赤尾木のハヤは確かに海に近いが海岸ではなかった。でも須野のノロ墓だけは海岸にあるそうだ。
というわけで須野の海岸に下りてみた。近くの土盛海岸や大瀬海岸もいいが、この須野の海岸はひっそりとしていてそれでいて真っ白な砂浜がどこまでも広がり、瞬間で好きになった。
でも、この広大な海岸をどうやって探せというんだ。地図も案内板も例によっておおざっぱでテゲテゲで、手掛かりらしきものもなく探しようがない。それもそのはず、砂浜で途方にくれて検索してたらこんなツブヤキを見つけた ↓
須野集落にあるノロの墓は見つけるのが難しく、選ばれた人しか入れない場所だと伺ったことがあった。実際に行ってみると、言われた通り見つけるのが困難で、そろそろ諦めようかと思った時、偶然にも草刈りをしていたおじさんが「車で降りて行けるよ」と教えてくれて、見つけることができた。
でも肝心のノロ墓の場所は書かれてなかった。
しかたない、砂浜に残っている一番新しい足跡を追ってみることにした。もしかしたらこの足跡の主もノロ墓を探してたのではないだろうか、という淡い期待をしつつ。足跡は砂浜の一番奥から右に曲がり小さな薮に入っていった。足跡をそのまま追ってゆく。そしたらその薮の中に・・とうとう見つけた須野海岸のノロ墓。今日はなんだか勘が冴えている。僕もあのツブヤキの人同様「選ばれた人」なのか。
薮の中を少しだけ上がると、そこだけポッカリあいた空間になっていた。その空間に3つの墓石があった。そして右の薮の中に、これまで何回も見てきた珊瑚石でできた長方形のノロ墓がある。隙間から覗いてみたら、ここにも人骨が、そして頭蓋骨がはっきりとした形のまま入っていた。やっぱりカメラは向けられない。3つの墓石はこれも珊瑚石を削って造ったのだろうか、たぶん長方形のノロ墓よりは古くはないだろう。
ポッカリあいた空間。ここはほんとに人間が立ち入ってはいけない所なのかも。
そして戻る途中に、あのイルカの死体と遭遇したわけだ。同時にふたつの貴重なものに出会えた僕は、やっぱり「選ばれし者」かもしれない(そんなわけない)
この海岸には「須野ホジョロムィ」というもうひとつの伝説がある ↓
用と須野にふたりのホジョロムィ(豪傑)がいて、この海岸で戦ったが決着がつかないままふたりは死んでしまった。でも死後も戦い続け、今でも用には赤い火が須野には青い火が時々見えるらしい。
市(いち)にもトビラ島を引っ張り合いするという似たような伝説あったね。島っちゅはどんだけ力比べが好きなんだ・・・だから相撲がこんなに盛んなわけだ、と妙に納得した。
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