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錬金術

錬金術といえば、金(きん)でないものから金を作ろうとするものという認識だったが、広義においては、金属に限らず様々な物質や、人間の肉体や魂をも対象としてそれらをより完全な存在に錬成する試みを指す。一般的に、後者は知られていない。
日本には、錬金術についての知識が入ってこなかったように思われる。占星術も入ってこず、星が見えないこと、必要がないことが理由ではないかと話題になったことがあった。錬金術については、日本は金(きん)の産地であるから、金が欲しいなら金脈を探して山師にでもなる方が早い。
と書いていて思ったのだけれども、まさか修験道、山伏とは、原初においては、金を探す人々だったのでは?
一笑に伏したいところであるが、当初の目的が伝えられず、修行に重きを置くようになった、と十分に考えられる。
というのも、錬金術における最大の目標が賢者の石を創り出す(あるいは見つけ出す)ことだからだ。
「賢者の石は、卑金属を金などの貴金属に変え、人間を不老不死にすることができる究極の物質と考えられた。また後述の通り、神にも等しい智慧を得るための過程の一つが賢者の石の生成とされた。」
一昔前のスピリチュアルで、「魂(たま)磨き」というのが流行ったが、魂を石に見立てることは、概念的にありだろう。
魂を賢者の石に変えること、それこそが「大いなる業」=マグナム・オープスである。

脱線するが、占星術は日本に入ってこなかったというのは、勉強不足による見解で、ちゃんと入ってきていた。但し、入ってきたけれど、発展しなかった、と言えそうだ。
輸入したのは、空海をはじめとする留学僧で、宿曜道と呼ばれ、密教の一分野だった。その占星術は、インド占星術(ギリシャ由来の占星術とインド古来の月読みが集合して独自に発展したもの)、道教由来の天体神信仰、陰陽五行説などが混ざった雑多なものだったらしい。

宿曜道は、良い日を選んだり、誕生月日などを元にして占いを行ったということだが、室町初期には途絶えてしまった。担い手は密教僧。
暦を作るための学問としては、宿曜道以前に暦道というものがあり、陰陽寮で行われ、これは推古天皇の時代に入ってきた。(こうしてみると、遣隋使の功績は大きいなと思う。)
しかし、日食・月食も予想できず、夏至や冬至も狂い、挙句元号を変えなくてはいけないほどだったということだ。

さて、錬金術に戻ると、下の図と同じように、錬金術も西方と東方へと分かれる。
西の錬金術は古代エジプトや古代ギリシアで発展する。
「錬金術は、ヘレニズム文化の中心であった紀元前のエジプトのアレクサンドリアからイスラム世界に伝わり発展した。万物は四元素から構成されていると考えたアリストテレスら古代ギリシアの哲学者の物質観は、中世アラビアの錬金術に多大な影響をもたらした。」
こうしてみてみると、古代ギリシアの自然科学は、錬金術から起こったのだとわかる。
一方、東への伝播は、主にインド、そして中国へ。

原アーリア人

インド錬金術の歴史は、紀元前1000年から紀元前500年頃にかけてインドで編纂されたヴェーダに端を発する。
ヴェーダとは「知識」の意で、バラモン教とヒンドゥー教の聖典だ。
メインの「リグ・ヴェーダ」は、インド・イラン共通時代に遡る古い神話を収録し、サンスクリッド語の古形にあたるヴェーダ語で書かれているということだ。
リグ・ヴェーダに書かれた古い神話の神々は、オリオンの神々だったのだろうか…と思いを馳せるものの、特に手がかりはなし。
インドの錬金術で、他に気になるポイントは、タントラの存在だ。

インドの錬金術は、中国に伝えられる。
不老不死の薬「仙丹」(=賢者の石)を作って服用し、仙人になることを煉丹術という。
仙丹を得るという考え方は同じだが、気を整える呼吸法や瞑想等の身体操作で、体内の丹田において仙丹を練ることによって仙人を目指す方法は、内丹術と呼ばれる。
ということは、錬金術は中国では仙術になったと言えそうだ。

仙人とは、中国本来の神々(仏教を除く)や修行後、神に近い存在になった者たちを指す。
仙人を目指す方法は、仙道と呼ばれる。
これには理論や教義的に、道教や陰陽道の考え方が含まれているが、サタンがほとんどの教えは堕落し、壊されていると述べていることを鑑みると、いちいち取り上げる必要はないだろう。
むしろ神を目指すという点においては、かなり類似している。呼吸法、瞑想のみならず、房中術まである。
この技術のみを取り出したものとして、気功や太極拳、そして法輪功へと系譜が続いていく。
なぜ法輪功が弾圧されたのか、この観点から推測するとまた違った理解ができる。健康法に付随した思想のせいではないのかもしれない。

紀元前4世紀、カウティリアの『実利論』にインド錬金術の記述があるらしい。おそらく第14巻「秘法に関すること」だと思うが…。本を図書館で探してみたい。


タントラ、密教、そしてヨガ。このあたりの概念を整理したいと思う。

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