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荒木飛呂彦のストーリー創作術に目配せしつつ諫山創のマンガ『進撃の巨人』を褒めるだけの手短なメモ

この漫画の構成はマジで劇的。ある言葉からそれを言われた人物にその言葉がじゅうぶんに響くだけの因縁を回想によって物語り、読者を納得させる。その回想をへ巡ってまた元の言葉、元のストーリーラインへと時間軸を戻す。こういうのが何度かあって、それが作家・諫山創の作家性なのかもしれないが、これが巧妙。じつに巧妙。

初読のときはなんであれだけ陰鬱に感じたのだろうか。感情移入するに任せて読んでいくとむちゃくちゃ熱い。興味深いのはこの熱さに身を委ねても、ストーリー展開的には敗北してるのよ、人類。なのに面白いんだよね。

荒木飛呂彦がストーリーは基本的に上昇していくことが大切だと語っていた。登場人物たちにとってプラス、プラス、プラスってふうに。その観点からすると進撃の巨人は表面的には敗北、敗北、敗北が多いように見える。ところが、読者にとっては調査兵団の敗北によって世界観の後景なり壁内の中枢なりが明かされてくのがプラスになってたりする。これがおもろい。

『進撃の巨人』っていう物語全体にとっては、調査兵団の勝ち負けはもっとより大きなものへと奉仕されている。たとえば「人類が飽くなく繰り返している争いの歴史」の全貌が見える地点に、読者を連れて行くかのように。その視座に読者を立たせることが肝心なテーマであるかのように。個々の人物の消息もしくは幾つかの組織の趨勢は位置付けられているのではないかなって。

その至高点に読者を連れて行く流れに目を向ければ、壁の中の人類が巨人に敗北し、壁外の勢力に敗北することになったとしても、それはストーリー全体にとってはプラス、プラス、プラスになるってことなんだろうな。

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ちなみにこの記事のタイトル荒木飛呂彦のストーリー創作術ってのはこちらの本を参考にしております興味のある方は読んでみるとよろし。


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