医師からみた、美容医療〜賛成か反対か〜自費診療は考え方によっては良い選択肢という結論
最近、直接研修医終了後、美容外科医師として働く医師が増えたなどのニュースが、ネットニュースだけではなくテレビでも放送されるようになりました。
また美容医療後の後遺症などに関する様々なニュースも目にします。
美容医療について、そういった後遺症のニュースを見ているとマイナスにとらえたくなります。
逆に医師や相談件数が増えるということは、それだけ一般に普及していると考えることもできます。
美容外科や美容皮膚科とは、保険医療ではない自費診療です。
見た目に関する治療や、病気ではないけれども気になる部分を治療できる医療です。
美容医療の後遺症のニュースを見ると、かなりマイナスのイメージが強いですが、自費診療という広い視点で見ると一般にも受け入れられている領域もあります。
歯科の領域ではありますが、自費診療の中で広く一般にも受け入れられているのは歯列矯正治療だと思います。
歯列矯正をした人を見て、「整形したでしょ!」って否定する人はいないと思います。
見た目だけではなく、むしろ噛み合わせが合ったり、重なっている歯が改善することで歯磨きをしやすくなり、虫歯を予防することができ複数の良い面があるからだと思います。
歯列矯正は保険ではできないのは、あくまで見た目や虫歯の予防的な面があるからです。
一方で、小児の口蓋裂で先天的に歯列に問題が出て治療が必要な場合は、認定の医療機関では保険で治療ができます。
美容外科や美容皮膚科も、歯列矯正のように病気ではないけれども、治療することによって複数のプラスの面があれば世間にも受け入れられていくのではないかと思います。
また歯の虫歯の治療でも、虫歯を削った後に保険つかえる詰め物と、自費診療でつかえるは詰め物異なります。
希望する人は、自費診療で治療する人もいるでしょう。
素材によって値段も異なりますし、技師さんの技量も異なることを考えると、無制限にこれらが保険で使えたら医療保険制度は崩壊してしまいますし、ニーズに合わせて治療を選択できることは良いことだと思います。
美容外科や美容皮膚科の視点に移りましょう。
例えば、眼瞼下垂症は上まぶたが下がり、黒目の中心の瞳孔にまぶたがかぶさり、視野を狭める状態の時は、病名として眼瞼下垂症の診断となります。
眼瞼下垂症の原因はまぶたを引き上げる筋肉の腱膜によるものや、重症筋無力症などの内科的疾患によるものなど複数の原因があります。
挙筋腱膜が伸びてしまう場合や外れてしまった場合が原因の眼瞼下垂症の時、まぶたをあげる手術は保険適応です。
この手術は保険の目的としては、瞼を上げて視野を改善するつまり、機能改善が目的です。しかし、副次的には二重になるため、左右差に気をつけたり、目のくぼみ感や皮膚のたるみを少し調整することもできる手術にはなります。
私も形成外科医として、眼瞼下垂症の患者さんの手術を行うことがあります。
目の開きも良好で、バチッと二重の幅も揃った時は、非常に医師としてやって良かったと思います。しかし、二重の線の左右差(目頭のところが少し食い込みが薄いなど)や、予定外重瞼線(いわゆる三重)ができるときもあります。
患者さんは、その二重線を気にしないで、目が開いたことに満足してくださる方もいますし、やはり術後半年経っても気にする方もいらっしゃいます。
まぶたの開きが不十分な場合は、再手術を行うこともありますが、目の開きは問題ない時の二重の左右差に関しては保険診療で再手術を行うの難しいと考えています。
一方で、まぶたが視界を遮るほどは下がってはいないけれども、「まぶたが重い感じがする」という方がいます
40〜50歳代で、このまぶたの重さの症状があるとき、まぶたの皮膚がのびてまつ毛に当たり、二重の幅が若い時より狭くなる時があります。いわゆる「たるみ」です。
たるみに関する治療は、機能的な問題がなく、審美的な側面が強いため、治療は自費診療になります。「眉下リフト」と言った名称で普及していると思います。
治療の方法としては、眉毛の下のところで余っている皮膚を切り取り、縫う手術になります。リスクとしては、出血・むくみ・傷跡・左右差などです。
かなりご高齢になると、皮膚がたるみすぎて視界を遮ることがあります。
目の前にのれんがかかっているような状況です。
このときは「偽性眼瞼下垂症」となり、同じ内容の手術を保険診療で治療が可能です。
傷跡に関しては、最初の3ヶ月ほどは赤みが出ますが、半年ほど経つと白い成熟した傷跡になります。この程度になるとお化粧すると目立たない方が多いです。また、高齢なほど皮膚に余裕があり傷跡も目立ちにくいです。
しかし、この眉下リフトをを10-20代の若い患者さんに行うことは勧めません。
10-20代は皮膚にハリがあり皮膚が余っていないですし、傷跡も皮膚にハリがあると、白い傷も見ればわかります。また元に戻したくなっても、一度取り除いた皮膚を元に戻すことはできないです。
このように、病気ではないけど、その移行期の加齢に伴う変化では、美容医療は、適切な年代では治療の効果を感じやすく、人によっては良い治療となり得ます。しかし、誰にでも勧められるわけではありません。
美容医療を提供する側が、適応を判断し、また治療を受ける側にメリット・デメリットの正しい情報をお伝えして、最終的に患者さんが希望した上で行う必要があると思います。
美容医療の初回カウンセリングや診察は無料のこともありますが、無料だとクリニック側は自分達の提供している治療を勧めてしまうの可能性もありうるのではないかと思うのです。
有料でも良いから、医師の美容カウンセリングで複数の選択肢を提示や、正常の範囲内で治療するとかえって不自然になる場合は、過剰な治療であることを知ることのできるカウンセリングも必要と考えます。
私の話をしましょう。
私は歯に関して少しこだわりがある方なのかもしれません。
歯列矯正治療は中学生ごろにしていて、大学生くらいで終了しました。
そこからまた少し前歯が1mmほどずれてきたので、マウスピースを再作成し維持の治療を再開しました。
これとは別にここ2〜3年くらい、ずっと自分の歯が茶色いことが気になっていました。特に犬歯(八重歯)が茶色いことが気になっていて、ずっとホワイトニングしようか迷っていました。
この度、ようやく歯科を受診して、歯の着色について相談しました。
ここの先生は非常にわかりやすく説明してくださりました。(私が医療従事者だと分かった可能性もありますが)
歯の色調のモデル(シェードガイド)を見せてくださり、私が黄色いと感じていた八重歯の色はA3の色調で、日本人では正常の範囲ということでした。
またホワイトニングをしたら、どこぐらいの色調になるか、後戻りはどれくらいの期間でするかなどの詳細についても教えていただきました。
芸能人の写真ばかり目にしてしまうので、自分の歯が黄色いと感じていましたが、標準的であることを聞いて安心しました。
私の歯の理想としては、芸能人レベルW1,W2までは白くしたいとは考えていなかったので、今のA3から、A1の自然な白になれば満足できるなと判断できました。
また治療の費用については、事前に複数のクリニックの値段をインターネットで調べて、相場感が分かった上で病院に行きました。
クリニックでカウンセリングを受けたあと、値段を確認して、相場と同程度か、やや安いと判断することができました。
結局、ホワイトニングはすることにしたのですが、
自分が異常に気にしすぎていたのだと気が付く機会になり良かったです。
自費診療においては、自分のゴールを決めて治療を決めることも、また重要であると感じます。
病気ではない場合、急いで治療を決める必要はないので、よく考えて治療を受けることをお勧めします。
私でさえ、ホワイトニングを気になり出してから3年も経過してしまいましたので。