臨床医が紹介する日本のスタートアップ技術(第9回)専門医リソースを最適化する、Medii(後編)
Eコンサルによる医師同士の具体的課題解決
前回は株式会社Mediiの遠隔専門医コンサル「E-コンサル🄬」とセカンドオピニオンサービスである「E-opinion」をご紹介しました。今回は遠隔専門医コンサル「E-コンサル🄬」について具体的に掘り下げてみましょう。
「E-コンサル🄬」は、1:1で匿名で気軽にMediiが認定する専門医に相談できるプラットフォームです。Medii側で医師確認を行っていますから、匿名でも専門医師という信頼を担保できます。個人医師がコンサルを行う場合には無料で行うことができ、回答した医師には、アマゾンギフト券などに交換できるポイントが付与される仕組みとなっています。
チャット形式なので、質問や回答がわかりやすく、一度の質問回答で解決しない場合には追加質問を行うことも可能ですし、必要に応じて通話なども可能です。
病院単位の契約では、医療格差となる専門医不在の地域の病院では、その地域の自治体にアプローチすることでサービスを導入し、地域偏在を是正することが可能となっています。既に全国で多数の医療機関で導入されています。
それでは実際にどんなコンサルがされているのでしょうか。実例をお示しします。
成人で小児てんかんの既往がある方がコロナワクチン接種後にてんかん発作を疑う症状が出現したということで受診されました。診察した医師が、これはワクチンの副反応として起こったことではないか?と判断したものの、その後の対応に苦慮していました。診療における補償やどこに報告したらよいのか?
早速「E-コンサル🄬」に投稿したところ、専門医師より、厚労省のホームページに予防接種健康被害救済制度や、新型コロナワクチンの副反応による健康被害が起きた場合の補償などの対応についてのURLが数時間以内に回答されました。この回答では、副反応についての報告についても追加で回答があり、担当医師の方は相談した以上の情報を得られ安心した様子でした。
また、別の例では、前立腺がん治療中の患者さんが発熱と低酸素血症で救急搬送となり、CT画像で間質性肺炎が疑われるということで対応に苦慮し、「E-コンサル🄬」に投稿されました。
呼吸器専門医から、前立腺がんの治療薬による薬剤性間質性肺炎や感染症、悪性腫瘍など多くの鑑別疾患が考えられるという回答がすぐにあり、それをもとに再度担当医師が確認したところ、前立腺がんの治療薬による薬剤性間質性肺炎が疑わしいと判断され、早期の治療に結び付いたという事例でした。
このように、実際の診療でまさにいま解決したいことを早期に、しかも専門医師にアドバイスがもらえるというシステムは素晴らしいものです。
さらに、単に相談事例に対して、各専門医師に連絡がいくわけではなく、これまでの回答などを含めて、Medii側が上手に配分しているということです。この配分にはAIを用いているそうですが、どのようなシステムかは企業秘密とのことでした。このあたりも今後ますます発展していきそうであり、楽しみですね。
最後に課題としては、事業の収益化という視点では、医師個々人のコンサルは無料でかつ報酬を出しているため、その源泉が必要となります。このようなサービスをさらに進めていくにあたり、様々な企業からの広告収入などが潤沢に得られればよりよいサービスを展開していけるのではないかと考えています。
私自身、このコンサルサービスの回答を何度か行ったことがありますが、とても有用なサービスとして今後拡大していくと予想しています。
了
【出典】
株式会社Medii ウェブサイト https://medii.jp/
株式会社Medii E-opinion https://e-opinion.medii.jp/nanbyo
公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター 「特発性間質性肺炎(指定難病85)」、2020/08、 https://www.nanbyou.or.jp/entry/156
この原稿の執筆に際し、掲載企業からの謝礼は受けとっていません。
株式会社シーエムプラス「LSMIP」から許諾を得て転載する。
専門医リソースを最適化する、Medii(後編) | LSMIP
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?