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日焼け止め VS アームカバー どちらが紫外線対策に有効?

厳しい日差しが陰りをみせ、長袖の季節がやってまいりました。

今回は季節外れですが日焼け対策についてちょうど良い論文を見つけたのでご紹介します。

日焼け止め vs アームカバー

日焼け対策は皆さん何してますか?

真っ先に思いつくのは日焼け止めを塗ることでしょうか。
それ以外にも、アームカバーをつけて露出しないと言う方法もよく見かける方法ですね。

ここで一つの疑問が湧きます。

日焼け止めと布地、すなわちアームカバーはどちらのほうが日焼け予防効果が高いのでしょうか。今回これを検証した研究をやっとのことで見つけました。詳しく見てみましょう。

研究デザイン

今回の研究はこちら

2種類の日焼け止めと4種類の布地を用いてどれほど日焼けを予防してくれるのか比較検証しています。

日焼け具合の指標は、日焼け防止指数(SPF)、紫外線防止指数(UPF)、臨界波長(CW)、UVAとUVBの遮蔽率を使用。SPFは化粧品の、UPFは衣服の紫外線遮蔽を計測した指標です。

日焼け止めはSPF30と50の2種類。さらに推奨されている容量(2mg/cm2)と一般的な容量(1mg/cm2)を肌に塗った計4つのグループを用意します。

一方の布地は、ナイロンと3種類のポリエステル。どれも一般的なスポーツウェアに用いられる素材です。

図1. 使用された布地の顕微鏡画像。編み方や繊維の太さに若干違いがあります。

布地 > 日焼け止め

気になる結果は、なんとすべての布地が日焼け止めより紫外線防御効果が高くなりました。

図2.紫外線透過率の結果。数値が低いほどしっかり紫外線をブロックしていることになる。


たとえSPF50の日焼け止めをたっぷりと推奨量まで塗っていたとしても、布で覆われている状態には敵わなかったのです。

日焼け止め単体は長時間露光に耐えられない

日焼け止めにはいくつか欠点があります。

まず塗り残しや塗りむらが起きること。背面は特に塗り残しが増えます。

また塗る量の問題。この論文でも触れられていますが、一般的な使用量は、推奨されている量の半分程度しか塗られていないことが多いようです。

試しに私の皮膚で推奨量である2mg/cm2で塗ってみましたが、白浮きする上に「塗っている」感が強く、かなり不快でした。推奨量を全身に塗る勇気はありません...。

さらに日焼け止めは汗でどんどん落ちていってしまう欠点があります。

実際に日焼け止めの使用法も2-3時間毎に塗り直せと指示がありますが、長時間の練習やレースともなると、おちおち塗り直しなどできません。


ということで、日焼け防止という観点からは、皮膚を布で覆うことが最適解ということになります。

アームカバーは皮膚温度を上昇させる

一方で、アームカバーには暑いと言う最大の欠点があります。

以前ファンライドの連載でお伝えした通りですが、運動中は皮膚温度と深部体温どちらも上昇します。

ここで皮膚が衣服で覆われていると、汗の蒸発が妨げられ、気化熱がうまく利用できずに体温が上昇してしまいます。

特にアームカバーは紫外線遮蔽の目的から黒い色が多いですが、これらは日光の熱も吸収してしまうのでさらに体温上昇のリスクがあります。

対策として、アームカバーをわざと冷水で濡らしておくという方法です。これによりアームカバーが乾く際に放出する気化熱を冷却に利用することができます。

もっと長袖長ズボンが市場に欲しい

男性女性問わず、日焼け対策はアスリートにとって死活問題です。肌の保護や疲労軽減という意味でも、練習中は夏でも長袖長ズボンが推奨される服装でしょう。

最近は涼しい薄い長袖が発売されるようになりましたが、涼しくて薄いロングビブタイツはなかなか少ない印象です。是非ともメーカーさんご検討お願いします。


参考文献:Berry EG et al.Slip versus Slop: A Head-to-Head Comparison of UV-Protective Clothing to Sunscreen. Cancers (Basel). 2022 Jan 21;14(3):542.

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