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腸内フローラが豊かな赤ちゃんはアトピーを発症しにくい?

こんにちは😊
消化器専門医 Dr. Sです.
本日はアトピー性皮膚炎と腸内細菌の関係について✏️

アレルギーの発症と乳幼児期の腸内細菌の関係性

近年,小児のアレルギー発症には乳幼児期の腸内細菌が
関係しているのではないか?
という研究が進みつつあります.

アレルギーを発症する乳幼児においては,
Bacteroides属やBifidobacterium属のコロニー (集落) が少ない
Staphylococcus aureus (黄色ブドウ球菌)のコロニーが多い
Bifidobacteria/Clostridia比が低い
などの報告がなされています.

未だエビデンスは構築中の段階ですが,
どうも腸内細菌とアレルギー発症に何らかの関係性があるのは
否定できないと言えそうです.

本日は,乳幼児期のアトピー性皮膚炎 (以下アトピー) と腸内細菌に関する
論文をご紹介致します.

(Low diversity of the gut microbiota in infants with atopic eczema. Thomas R Abrahamsson, et al. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2012)

この研究では,アトピーの乳幼児20人アレルギー症状を呈さない乳幼児20人を選び,
便のサンプルを3回 (生後1週間,1ヶ月,12ヶ月) 採取しました.

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生後一ヶ月のアトピー乳幼児の腸内細菌は多様性が乏しい

便の遺伝子検査を行ったところ,生後一ヶ月のアトピー乳幼児において
腸内細菌の多様性が乏しい
Bacteroidetes (バクテロイデス門), そのうちBacteroides属が少ないことが示されました.

生後一ヶ月の腸内細菌は未だ不安定な時期ですが,
人工乳で育った乳幼児は完全母乳の乳幼児に比べて
腸内フローラが豊かで,Clostiridium属やBacteroides属が多い
という報告があります.

一方で,生後12ヶ月のアトピー乳幼児では
Proteobacteria門が少ないことが示されました.

まとめますと,
アレルギーを発症しない赤ちゃんは,アトピーを発症した赤ちゃんに比べて
腸内フローラが豊かだった
,という結果でありました.

バクテロイデスは有用な常在菌

一方で,アトピーの赤ちゃんで少なかったBacteroides属について.

Bacteroides属 (グラム陰性桿菌) は腸内常在菌で,
近年,菌体に免疫調節作用があることで注目されています.

有名な菌に,Bacteroides fragilis (B. fragilis) があります.
免疫力が落ちた方手術後の方などでは
体に害を及ぼすことがあります (日和見感染).

医療関係者からすると腹腔内感染などの嫌なイメージがありますが,
この菌を投与することで動物モデルにおける腸炎の発症を
予防した
という報告もあります.

Bacteroides属の免疫調節作用については,
また別の機会に取り上げます!

本日は以上です.
最後までご一読頂き,ありがとうございました😊


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