松本人志さん性加害報道。週刊文春の「勝利」とジャーナリズムの死

週刊文春が報じた松本人志さんの性加害疑惑。
本人の意に反した形で性加害が行われていたなら松本さんがしかるべき制裁を受けるのは当然だ。これは大前提だ。

しかし、第一弾が性加害つまり強要の形での性行為があったという告発だったはずが、第二弾では20年前から行われていた「上納システム」が組織的に行われていてけしからんという話になり、さらに第三弾では「合コンにこんな子集めといて」というメモ書きなどが晒され話題になっている。

端的に言えば話がすり替えられている。「性加害」なんていうとんでもない話から、「みんなで後輩巻き込んで汚い遊び方をしていた」という話になり、さらには松本さんの好みや性的嗜好をあげつらって、松本さんの性的場面の生々しいイメージを出して人々に嫌悪感を持たせるという方向に進んでいる。
案の定、「もう生理的にまっちゃん見たくない」という人が出てきている。
「権力者による性加害問題」「組織的に女性をものとして扱うシステム」といった公益性のある話題として、なんとか自分達の報道が一応表面的には社会的意義をもつように誘導しようとしたが、結局は個人的な性嗜好を暴いて、イメージによる嫌悪感情を煽り立てているだけに変わってきているのだ。

文春側の勝利というのは、嫌悪感を伴うイメージをつけることによって松本さんをテレビという仕事場から暴力的に排除できたという点で「勝利」したということにすぎない。
しかしこのような話のすり替えは、公益性などという綺麗事の皮を被って、個人のプライバシーを暴露するという醜い振る舞いを正当化するための一抹の正義さえも示すことができなかったことが露見したという意味でジャーナリズムの死なのだ。

とりあえず第一弾でぶち上げてさらなる隠し球の存在を匂わせておけば、自称被害者がそのあとで次々に垂れ込んで来るから、その情報を使えばいいという勇み足だったと推測されても仕方がない。
話のすり替えで尻すぼみになっているのが実情だが、松本さんを立場的に追い込んでしまえば本物だろうと単なる印象操作だろうといずれにせよ文春の「勝利」なのだ。
これが今回の文春のやり口だ。

タイトルからはそれるが、ここからはある程度出揃った情報についても少し考察してみたい。
冒頭に書いたように強要という意味での性加害があったなら大問題だ。
しかし、事務所や後輩芸人もグルになった組織的ともされる「上納システム」に関しては「女性をもの扱いしている」などの「解釈」がなされがちだが、そのような飲み会やそれにつづく行為さえも受け入れている積極的に飲み会に行きたがる女性もいる。「モノ扱い」などという人道的に問題なやり方だということであれば一律にそのようなやり方は禁止すべきということになるが、それだと積極的に行きたがる女性の意思も容認されないことになる。それは女性とは受動的であることが求められることを意味するのであり、女性の自由や自発性を本当に尊重してはいない。モノ扱いというような見方もあってもよいが、それは一つの見方にすぎないことを謙虚に認めるべきだ。
つまり上納システムがあったからといって直ちに問題となるわけではない。ここは自由意思に制限がある未成年を相手にしたジャニー喜多川さんの件とは事情が異なる。

また力のある人は確かに行動に慎重さが求められたり抑制的であるべきかもしれないが、それではそのような人たちはどのように性的同意を確認することができるのか。後で「あれは本当は嫌だった」と言われてしまえばすべて性加害とされてしまう。
会の後の「お礼メール」は同意を意味しないというが、たしかに確実に同意があったことまでは意味しないとしても少なくとも松本さんに不利になる証拠とは言えない。「とうとう出たね」と言ったのも、性被害やその後の被害者の取りがちな行動などの実情を詳しく知らなかったから出た発言にすぎず、それが性加害をした根拠になろうはずもない。そんなことが責められるのもおかしな話だ。
我々だって、傷ついた人というのが意外な行動をすることがあるのをつぶさに知っているわけではないだろう。傷ついた人を認識不足によってさらに傷つけることも普段しているかもしれない。
性加害がなかった証拠にはならないかもしれないが、自分に有利になる可能性があるメールが出て「とうとう出たね」という反応はそこまでおかしなものではない。

また松本さんが当時配偶者がいたことは飲み会に参加した女性は知らなかったのだろうか。知っていて合意のもとに性行為をしたのであれば、その人たちは松本さんの配偶者から訴えられる立場にあることは意外と指摘されていない。

さらに遊び方が汚いという意見について。
「もっとお金を渡せ」「プロと遊べ」という意見が散見されるが、相応の金額を渡しても垂れ込む人間はいるだろう。なんせ示談になった案件まで掘り返された芸能人もいたではないか。10万20万渡したところで売るやつは売るだろう。
プロだって今どき信用ならないだろう。ガーシーのようにそれまでその界隈で利益を受けていて、秘密を守るべきことが期待される立場でありながら裏切ることがある。どうしようもないだろう。

私が唯一問題に感じたのは、報道が正しいと仮定した場合だが、松本さんが来ることを知らせずに飲み会が始まり、短時間のうちに性行為への誘いがあったというところだろう。
たしかに「子供を産んでくれ」発言が本当だとすれば松本さんの熱狂的なファンでもなければ、急に迫られてびっくりしたかもしれない。自分に積極的に媚びてくる女性が苦手で、ツンとしているぐらいの方が好きだというような性癖というか傾向のようなものが松本さんにあったのだとすればそれが仇になってしまった可能性はありそうだ。
その意味では遊び方の問題という見方はできるだろう。

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