かまいたち、薬局薬剤師への意見について、新しい論点を踏まえて

お笑いコンビかまいたちのお二人が番組内で薬剤師を軽視する発言をしたとして批判があり、濱家さんが謝罪するということがあった。

山内さんが番組内で、医師の診察後に処方箋を薬と引き換える際に医師に説明した症状などを薬剤師から再度聞かれるのが煩わしいとの趣旨の発言をした。
濱家さんは、医療者だから医者憧れがあるのだろうと発言。馬場園さんも薬剤師とのやりとりで薬が変わるわけではないから意味がないと話した。

番組はこれを面白おかしく笑い声まで入れて放送しており、薬剤師という職業全体を軽んじた演出となってしまっていて問題と感じる。
ネット上では、「プライバシーが守られる診察室と違って薬局では他の人のいる前で症状などを聞かれて困る」、「医師も間違いはあるので薬剤師による最終確認は重要」などさまざまな声が上がっている。
先に少々理屈っぽいことを言っておくと、番組の演出は非難してもよいが、山内さんは責められるべきではない。
山内さんはこの発言においてどのような立場の人なのだろうか。TVを観ているから、芸人さんとか芸能人と考えてしまうが、「具合悪いから早く薬欲しいのに」と本人の体験として話したのであれば、山内さんの立場は実は「患者」だ。
「つらいときに余計な負担をかけられた」と患者の立場で意見を言ったのであれば、医療者は何のためだったのかなどを説明するべきなのであり、非難などするのはおかしい。医療は政治家だろうと犯罪者だろうと基本的な扱い(秘密を守る、合理的理由なく診療を拒否しないなど)で差別してはならない。そうすると山内さんの訴えは芸人かどうかなどを越えて患者の意見としてまずは受け取られるべきだ。
馬場園さんの意見も、「◯◯管理料」など薬局からの領収書に書いてあるように、金を払っている立場として、「何のためにあるのかわからない」という疑問はそこまでおかしいものではない。
飲食店で「お通し代」や「サービス料」以外に何だかわからない料金があれば「これは何ですか?」と聞くのはおかしくないのと同じだ。


入院患者さんがいるような病院で勤務していると「これで本当に合ってますか?」という疑義照会を院内の薬剤師から直接もらい、助けられたことが何回もあったし、勉強熱心な人も多かった。
ネット上の意見にもあったが、医師が完璧なわけでは全然ない。勉強してる人、してない人、有能な人、無能な人、デリカシーある人、ない人というのは医師、薬剤師、看護師などすべての職種にいる。だからこそ互いに助けあったり確認しあったりして患者さんの不利益にならないようにする。


しかし、薬局でのこのやり取りについては私も問題を感じたことが2つあり、実は以前薬剤師会に問い合わせたことがある。
一つは患者に質問してくるにも関わらず、薬剤師側の知識が追いついておらず、無駄な問答になっていることが見受けられたことだ。
循環器系の薬が出されたのに対して「これはβブロッカーなんですか?」と聞いたことがあった。特に意地悪をしてやろうとか知識を試そうなどと思っていたわけではなかったが、「は?え?」というような反応で「べーたぶろっかー」という音が認識できていないように感じた。「βブロッカー」という単語を薬剤師が聞いたことないはずもないだろうからもう一度聞いてみると「今お調べします」と言う…
他にも効能について薬剤師が詳しいだろうと思い、一応聞いてみたことがあった。ネットに載っている情報だとどんな薬にも当てはまる副作用などが山のように書いてあり要領を得ない。せっかく薬剤師に直接聞けるならと思い、さらっと聞いて帰ろうと思って質問してみた。しかしそのときも「お調べします」と言う…

薬局窓口で症状などを聴くようになった背景は詳しく知らない。ネット上では薬局の薬剤師に対して「袋に処方薬を詰めるだけだろ」というような否定的意見もある。それに対して「自分達の存在意義を認めさせるために仕事を増やしている」との見方もある。
薬局窓口でのやり取りが積極的な意義を持つと言うのであれば、それ相応の能力がなくてはならない。もちろん私が挙げた例はほんの一部の薬剤師の能力不足なのだろうが、新しい業務をわざわざ作り出すのであれば、それにふさわしい能力が備わっているのか、または業務をするにあたって研修などをして例えば患者への質問に対応する能力を身に付けさせたりしているのかということが問われる。何の役に立つのかが一般の人にも納得いくようでなければ今回の山内さんのものも含めて批判は仕方がないのは先程述べた通りだ。
診察室のようにプライバシーが守られていないというのも窓口業務新設にあたっての準備不足という点で全く同じだ。

この業務は厚労省が決めたもので、研修や通達などは薬剤師会がやっているとのことであったが、この調子では現場の薬剤師も困っているのではないだろうか。今までやったことない患者さんへの説明や質問対応で負担を感じているはずだ。個々の現場の薬剤師を責めたいのではなく、厚労省や薬剤師会の責任なのではないかと感じる。


そしてもう一点は、はっきり言って外来を引っ掻き回す薬剤師もいるという点だ。
「出されてる薬多すぎませんか」とか、酷いのになると「その症状にこの薬はおかしいですよ」などと薬局の窓口で患者さんに言うようなことがあり、患者さんにこちらが間違っていると決めつけられたこともある。

初診でまだ信頼関係が構築されていなかったりすると説明をきちんと最後まで聞いてもらえないこともある。
思春期の患者さんなど、薬以外にも配慮しなくてはならなかったり、薬が治療のメインでないときもあるし、本人だけでなく保護者にも目を配ることもある。それらを総合的に考えて治療方針を決めていく。薬のことだけを考えているわけではないのだ。

そしてそれ以上にこの話の最大の問題は、患者さんに不安を与えているということだ。少なくとも医師と薬剤師で意見が割れており、危うく間違った薬物療法を受けることになりかけたというように患者さんは認識しているはずだ。
私は自分が間違えたのであれば、是非とも指摘してほしいと思っている。処方箋には施設名も医師名も記載されている。患者さんに安易に不安を与えるぐらいならまずは患者さんに言う前にこちらが間違っていると指摘してほしい。
薬のプロからの疑義であれば本心から拝聴する。

薬剤師に限らず、というかむしろ医師の方がありそうなのだが、医療者は知識マウントを取るのが好きな人間が結構多い。
学生時代は教科書や試験の過去問など学ぶものは似通っているが、現場に出るとそれぞれが問題意識をもって勉強したり、実際に治療に関わった病気について深めるというやり方で勉強することが多い。そうすると、それぞれが持っている知識は違っているということも起こりやすくなる。もちろん基本知識は共有しているのだが、たまたま自分は本で読んでいたから知っているが、他の人は知らないということもよく起こる。そうすると「あの医者はこんなことも知らない」などと裏で言って喜んでたりする。
まあ医療者どうしで知識を競わせて、それが患者さんの利益になるのであれば、おだてて木に登らせておけばよいのであろうが。

問題なのはやはりそのマウントごっこを患者さんの前でやることであり、この点を薬剤師会はどう考えているのか、問い合わせたときには明確な答えは得られなかった。
なんでも、薬剤師には薬を変える権限はなくとも出さない権限はあるらしく、薬局窓口での業務は全く無意味な業務ではないとのことだった…
頑張って自分達の正当性を示そうとするのはよいが、患者さんの心情面への配慮や責任と権限についてきちんと理解できていない一部の薬剤師への指導という大事な点は行き届いていないようだった。患者さんに「これを飲むのはまずい」というようなことを言う以上は責任も取らなくてはならないのは当然だ。
これも個々の薬剤師が悪いというよりもそういったことを研修や通達を通して適正に業務をさせていない厚労省などが悪いと感じる。一人一人の医療者なんて知識でマウント取れると思ってるような人間が一定数いるのが現実なのであり、様々な配慮ができない一定数の人間をきちんと指導するのが役割だろう。新しい業務を作っておきながらそれに対応するための統制がとれていないのだ。
厳しい言い方になるが、これでは「お医者さんごっこをしたいだけだろ」と言われても仕方がない。つまり濱家さんも謝罪の必要はないことになる。
「眠るための薬です」「血圧を下げる薬です」という程度のお年寄りのおしゃべり相手で仕事をしていることにしたいという思惑ではないかとさえ考えてしまうが、さすがにそれは意地が悪いだろうか。

まとめると、薬局窓口においては
①プライバシーの配慮や質問対応など業務をきちんとやれていないのではないか。
②どこまでが権限で、行った業務に対してどのような責任をとるのかが不明確であるのではないか。
この2点が問題であると考える。







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