蓮舫参議院議員の選挙違反疑惑。民主主義における2つの根本問題

2024年7月の東京都知事選には蓮舫参議院議員が「無所属」で立候補を表明している。
告示日前の街頭演説の内容が事前運動にあたるとして公職選挙法違反の疑いがかけられている。
選挙を特定したうえで(今回なら都知事選)、当選を目的として候補者を有利にさせる行為が選挙運動であり、それを告示日前にやれば事前運動となり、公選法違反だ。

蓮舫参議院議員や枝野衆議院議員の応援演説はこの要件を満たしている。厳密には立候補を届け出た時点で公選法違反となりそうだ。
これに関して「違反ではない」と強弁するのは無理だろう。
蓮舫参議院議員が非難されるのは当然だが、今回の主題はそこではない。

一つはマスコミの報道のひどさだ。なんと堂々とまるで選挙中かのように普通に蓮舫参議院議員の演説の様子を流していたメディアがある。

きちんと公正に選挙違反であることを報道すれば、普通の理性ある人たちがそれを見れば、そういう候補者なんだという認識はしてくれるだろう。多くの無党派層は、大きな党の有名議員が堂々と選挙違反をしているのがTVで放送されていればどん引くはずだ。
それなのに今回蓮舫陣営が違反行為を繰り返していられるのは、メディアが味方してくれることをわかっているからだろう。当選する意志があるならまともな報道をされたらまずいと考えるはずだ。

しかしいくらネットを中心にある程度関心がある人たちが「選挙違反だ」とわめき、多くの人に拡散したところで、結局そんなことわかっている人たちどうしで「そうだそうだ」となるだけだ。
漫然とTVなどから情報を得ている人たちは「あら、蓮舫さん都知事選出るのね」ぐらいの受け止めで、違法なことがやられているというネットでの情報に触れて認識が変わるなんていうことはなさそうだ。
つまり真っ当な判断力はあるけどそこまで関心がない層が「偏向報道」のせいで、判断を正しいものに変える機会が失われている。
そして私は目下、偏向報道をはじめとした違反行為が実力によって糺されないことを問題視している。TVの停波や公選法違反での立件をなぜしないのか。先程も言ったようにいくら正しい批判をしても間違った振る舞いが実力で排除されないなら厚かましい方が勝つだろう。
全然別件だが、先日大谷翔平選手の自宅が特定される形で報じたテレビ局が出禁処分にされたという報道があった。「遺憾に思う」だけでなく迷惑行為に対する具体的で実効的な「対応」がきちんと取られたことが素晴らしかった。

そしてもう一つ問題なのが、何を言われてもどんな事実が出ようとも支持を変えない「非理性層」の存在だ。
「自民党は金に汚い」「今の権力は腐ってる」これだけを唱えていれば「固定客」が確保されている現状がある。自分の惨めさが自民党や既存権力のせいなのだと「つながり」に目覚めた人たちからすれば、「選挙違反ぐらい正義の実現のためなら仕方ない」とでも思っているのだろう。この層はどう説得してもムダだ。
唯一言う意味がありそうなのは、「あなたたちはその程度のパフォーマンスで投票してくれるバカなお客さんと思われてることを自覚してますか?」ということぐらいか。「組織票」と「信者票」はどのように候補者を立てるのが効率いいかなどの算数がやりやすい。何があっても入れてくれるからだ。

それにしても立候補をしなければ事前運動に厳密には当たらないものの立候補した瞬間、立候補者として、警察は手を出しにくくなる。しかももっとおかしいのは当選すれば目的を果たしたわけで「既遂」なのに当選して政治家となることで行政権力である警察は手を出しにくくなる。それに対して落選者は当選目的が「未遂」に終わったにもかかわらず、既遂者よりも強いお咎めがあるというのも本来変な話だ。

もう一度整理すると
①おそらく大多数を占める、無関心で常識的かつ理性ある層に正しい情報が伝わらないことで民主的決定が歪められる。
②非理性層は正しい情報を与えてもムダ。
この2つが問題だ。

結局民主主義なる「先進的な」プラットホームは人間がまともでなければ駆動しない。
①は実効性ある力の行使で間違いを糺すべきだし、②はそのような非理性層が何らかの理由でもし増えているのだとすれば、そこに対する手当てが必要だ。それが貧しさやそれに伴う不安感の増大からなのか、SNSが民主主義を劣化させているということなのか検討するのもよいだろう。ただし、それも実効的に改善される必要があり、非理性的な人をバカにしたり揶揄するだけでは意味はない。
①にしたって、どのような実力行使が適切なのかを大多数の有権者が真っ当に判断できなければ糺すことさえできない。「停波」と聞いただけで、「表現の自由への権力の介入だ」ということしか言えない人が多ければ「実力行使」はままならない。
あえてかなり極端な分類をしたが、ともあれ「正気」が保たれているのが重要なことは間違いないだろう。


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