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認知症治療病棟における抗認知症薬【教えて!認知症の現場#1】

こんにちは。くんぱす先生です。
内科専門医として臨床経験を積んだ後、介護老人保健施設の施設長を経て、現在は認知症疾患センターの認知症治療病棟医として勤務しています。

こちらの記事に書いたように、「私にしか書けない記事とは何だろう」とパソコンと向き合いながら考えました。
まずは、【認知症治療病棟の実際】だろうと思い、実際に認知症で入院している患者さんがどのような治療を受け、どのくらい入院し、どんな状態で、どういったところに退院となるのかなどをお伝えしたいと思います。

こんな方々の役に立つ

このシリーズはこんな方々へ向けて書いています。

・認知症患者さんの介護を日々しているご家族
・実際に介護はしていないが、介護をしている知人、親族がいる
・認知症に関わる仕事を現在している方
・地域包括支援センターで働く方
・ケアマネージャー、またケアマネージャー資格取得を目指している方
・介護施設で働く方
・一般病院勤務だが、認知症患者さんの対応で困った経験がある
・将来、自分自身が認知症になったときどういう医療・介護を受けるのか実態を知っておきたい
・認知症介護に関わるサービス提供を行う会社に勤めている
・認知症に関わるサービスプロジェクトを今、今後考えている
・医師、看護師はじめ医療従事者

イメージできるようなるべく具体的に

【実際】をお伝えしたいので、読んだ皆さんが想像できるようになるべく具体的にお伝えすることを心がけます。
時には、実際にあった症例のお話もあると思います。

しかし、私が診療している患者さん、ご家族は今まさに認知症と向き合っておりそれはこれからも続きます。
いくら有料とはいえ、病院の特定や患者さんの不利益に繋がることは一切ないように配慮して書きますので、具体性に欠ける部分がでてくることはご了承いただければ幸いです。

ググって出てくることは書かない

国が行っている認知症に対する施策や、認知症疾患センターってなあに?などはあえてここで書くことは控えます。
この記事に辿り着いたあなたは、スマホやパソコンを十分に使えていらっしゃると察しますので、検索ボックスに入力して調べることもできるでしょう。
話の流れの中で、注釈が必要なことに関しては簡単に補足する程度でメインストリームからなるべく脱することのないようにお伝えしていきます。

今回のテーマ【抗認知症薬】

(各種製薬会社から一切謝礼含めその他頂いておらず、完全な私独自の臨床に基づく見解であることを断っておきます。)

現在、日本には大きく3種類ある

ここから見慣れない文字が出てきますが、名前は流し読みでいいのでついてきてくださいね。

①コリンエステラーゼ阻害薬

①ー1:ドネペジル(商品名:アリセプト、アリドネ)
①ー2:ガランタミン(商品名:レミニール)
①ー3:リバスチグミン(商品名:リバスタッチ、イクセロン):貼り薬

②NMDA受容体アンタゴニスト

メマンチン(商品名:メマリー)

③抗アミロイドβ抗体

レカネマブ(商品名:レケンビ):点滴
:2023/9月承認 臨床現場使用は2024年春~夏頃から

この3種類の抗認知症薬の中で、中核症状だけでなく周辺症状が出現し入院が必要となった中等度~重度認知症の方に使用するのは①と②です。
③は軽度認知障害、軽度認知症が適応です。

ここで、『中核症状』『周辺症状』とは何ぞやと思った方はこちらを先にお読みいただいた方がいいかもしれません。

認知症治療病棟での①と②の使い分け

ここからが本題です。

前提として断っておかなければならないのは、これらの抗認知症薬を名前の通り『認知症に抗う目的で使用する』わけでは”ない”ということです。
もっと簡単にいうと、『認知症の進行を遅らせることが第一の目的ではない』ということです。

では何目的で使用するのか。

それは、『周辺症状の改善』です。
認知症治療病棟に”入院”される方は、中核症状の進行ではなく、周辺症状を改善する目的で入院となることがほとんどです。
『周辺症状』は薬剤調整で改善が期待できますが、『中核症状』は薬での改善は難しいです。
中核症状は薬ではなく、環境の工夫で支障が出にくいようにサポートしてあげるというケアの占める割合が大きいのです。

図1 中核症状と周辺症状 /認知症ねっとから引用

認知症治療病棟医はどう使い分けているか

認知症の病型によっても使い分けが変わりますが、特殊なのはレビー小体型認知症のように薬剤過敏性が強い型なので、今回はそれ以外(主にアルツハイマー型認知症)の場合とお考え下さい。
さらに重症度は入院されている方は中等度~高度の認知症とお考え下さい。

周辺症状に対して、①コリンエステラーゼ阻害薬と②メマンチンはどう使い分けているかをお話していきます。

先に結論を述べます。
とても簡単に分かりやすく述べます。

①コリンエステラーゼ阻害薬は”しゅんとしている”症状のとき。
②メマンチンは“カッカしている”症状のとき。

こういうことです。
ピンときましたか?
来ない方のために、もう少し詳しく話していきますね。

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