見出し画像

Bo Diddley – The 20th Anniversary Of Rock 'N' Roll (1976)

 〈Bo Diddleyの道はロックンロールの道なり!〉と言いたいわけでもなさそうだ。『The 20th Anniversary Of Rock 'N' Roll』はその不敵なタイトルに反して、いわゆるBo Diddleyのデビューからきっかり20周年の時期に発表された作品ではない。しかし、本作の中に渦巻いているスワンピーかつファンキーなグルーヴには、些細な疑問を消し飛ばしてしまうだけのパワーが秘められている。ついでにセッションにクレジットされたあまりにも豪華なミュージシャンの面々を見れば、あに聴かざらんやである。
 A面はプロデューサーのRon Terryが提供した「Drag On」など、チェス・レーベル晩期のサウンドに通ずるヘヴィなファンキー・ロックで占められる。「Ride The Water」にはボーカルにJoe Cocker、ギターでRoger McGuinnが参加しているが、こうした曲の中で果たしてBo Diddleyがちゃんと主役として機能できているか、ということには疑問がないわけでもない。だが、「Not Fade Away」では彼独自のジャングル・ビートがTim BogertとCarmine Appiceによる強力なリズムセクションで見事に醸成され、さらにBilly Joelの粋なピアノのメロディが絶妙なアクセントを加えている。素晴らしい一曲である。
 B面からはBo Diddleyの歴史を振り返る爆速のツアーの始まりだ。ここからはKeith Moon、Alvin Lee、Leslie Westといったウッドストックの子供たちも参加し、Bo Diddleyのボーカルを中心としながらもセッションは混とんを極めていく。「Who Do You Love」の後半のAppiceのタイトなドラム、そしてそこから「Bo Diddley's A Gunslinger」のクールなギター・イントロに流れていくさまはどうだろう。2部に分かれるブルース・ナンバー「I'm A Man」のギター合戦もまたすさまじく、レコードは〈Bo!Bo Diddley!〉と神々しく彼の名を讃えて幕を下ろす。
 本作は、大御所と若手ロック・ミュージシャンの競演盤の中でも特に個性的な一枚といえる。何でもありだった70年代の音楽の持つ空気も同時に感じられるアルバムだ。