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Fats Domino – This Is Fats Domino! (1956)

 勢いのある状態だったインペリアル・レーベル時代のFats Dominoのアルバムの中で、もっとも際立ったものを挙げるというのは至難の業といえる。当時のDominoは比類のないヒットメーカーであり、『Rock And Rollin' With』に始まる50年代のLP群には、彼の売れに売れたシングル曲が同様にちりばめられているからだ。特に本作『This Is Fats Domino!』は、57年のアルバム『This Is Fats』と非常に混同されやすく、権威のある書籍でも取り違えが起きてしまうほどだが、どちらも重要なレコードであることには変わりない。
 Dominoの穏やかな声質に非常にマッチした「Blueberry Hill」は、かつてLouis ArmstrongやGlenn Millerらが演奏したナンバーで、Domino自身もしくはDave Bartholomewの筆に依らない曲としては特にヒットしたものの一つだ。「Reeling And Rocking」と「La-La」、そして「Troubles Of My Own」はどれもシングルのB面収録だが、そのすべてが米国R&Bチャートの1位を獲得している。
 「Blue Monday」と「Poor Poor Me」はテンポこそ対照的だが、特にブルース然とした歌詞が印象的だ。しかし、どれだけ物憂げな内容でもそこはかとない陽気さを湛えて歌いこなせるのは、ニューオリンズ出身の彼らしい才能である。基本的にDominoのボーカルとピアノを彩るのはソウルフルなテナー・サックスだが、ラストの「Trust In Me」で聴ける強烈なトレモロ・ギターのソロは、なんともロックンロール的で興味深いものだ。