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Josh White ‎– Empty Bed Blues (1962)

 かのWoody Guthrieをして、〈都会的で洗練された知的なセンス〉〈多くの都市生活者の代弁者〉と言わしめたJosh Whiteだが、彼のギターの弾き語りのテクニック自体は他でもないBlind Lemon Jeffersonのカントリー・スタイルを受け継いだものだ。それまでフォーク・シンガーとしてエレクトラ・レーベルに囚人歌やスピリチュアルを中心に吹き込んできたWhiteは、その深くやさしい歌声がムーディーなサックスとも相性抜群だったことを本作で見事証明した。同レーベルの最終作である『Empty Bed Blues』はモダンなジャズ・サウンドを大人な雰囲気のジャケットにつつんでおり、なんとも粋なシティ感覚を見せつけている。
 Bessie Smithの戦前のヒット曲だった「Empty Bed Blues」や「Backwater Blues」はベーシストBill Leeとのシンプルだが密接な掛け合いが素晴らしく、まるでWhiteのために書かれたかのようだ。特に南部っぽさを感じさせる「Bottle Up And Go」もブルースマンにはおなじみのナンバーだが、これはかつて演奏をともにしていたLeadbellyが得意としていた曲でもあり、Whiteにとってはちょっと思い入れの強い歌だったに違いない。
 一転して、ピアノとサックスを大々的にフィーチャーした「Baby Baby Blues」では、まるでWhiteがスポットライトの下でスーツを着ながら歌っているのかと思うほどだ。「That Suits Me」では若き日のJosh White, Jr.との共演という嬉しいワンシーンもある。
 グリニッジ・ヴィレッジのスターだったWhite独自のスタイルはしっかりと貫かれているが、本作には彼の確かな挑戦も含まれている。生き生きとした一枚だ。