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Albert Cummings – Believe (2020)

 Albert Cummingsが古巣のブラインド・ピッグからプロヴォーグへとレコード・レーベルを移籍した時、いったいどれだけのブルース・ファンが変化の予兆を感じただろうか?マッスル・ショールズで録音された『Believe』は、それまでJimi HendrixやStevie Ray Vaughanを思わせるギター・プレイで名を馳せていた彼が60年代のソウル・サウンドに真摯に向き合った作品だ。
 オープニングとなったSam & Daveのヒット曲「Hold On」では、分厚いホーンと女声コーラスに彩られたCummingsがギター・ソロを高らかに奏でる。この一曲だけでも涙が出るような素晴らしさだが、パワフルな「Little Red Rooster」といい、Van Morrisonの「Crazy Love」をやさしく歌い上げるときの穏やかなアコギの音色といい、カバー曲が生み出すコントラストが本作を一級のアルバムに仕立てている。
 かつてThe Fame Gangのメンバーとしてフェイム・レーベルの多くの名作に貢献したClayton Iveyのキーボードは、スローな「My Babe」をよりしっとりと、アップ・テンポな「It's All Good」はよりファンキーにセッションを盛り上げている。アルバムが進むにつれていつものハードさを高めていくCummingsのギターは、ラストのFreddie Kingの名曲「Me And My Guitar」で爆発する。
 『Believe』はボーカリストとしてもギタリストとしても彼の新境地であり、ジャンルの拡大にも意欲的であることを示している。その証拠に2022年の『Ten』ではカントリーに接近した楽曲も作っているが、Cummingsはどんな時でもソウルを忘れることはない。20年代で最もパワフルなブルースマンである。