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Ibeyi – Ash (2017)

 才能あふれるLisa Kainde DiazとNaomi Diazの姉妹からなるユニットIbeyiは、ファーストアルバム『Ibeyi』の深く沈み込むようなサウンドで、近しい人の死というものに真っ向から向かい合った。その時から比べると『Ash』ではその視点は社会全体を捉え、かつ未来へと向かっている。
 〈全ての人が自身の持つ強さに気付いてほしい〉というメッセージの通り、「Deathless」では暴行や人種差別をはじめとしたあらゆる不条理に抵抗する意志をIbeyiは掲げている。コンテンポラリー・シーンのトップ・プレイヤーであるKamasi Washingtonのサックスをフィーチャーした重みのあるサウンドはもちろん、示唆に富んだミュージックビデオも話題となった。「No Man Is Big Enough For My Arms」は女性の強さを力強く鼓舞している。先の大統領夫人のスピーチをサンプリングしていることからも、誰に向けてメッセージを発しているのかは明らかだ。表現が直接的すぎるという意見も確かにあったが、それだけ世の中の状況が押し迫っているのだと、彼女らは答えるだろう。
 いまやIbeyiの武器はヨルバ音楽に根差した独特のテイストだけではない。人種的マイノリティや女性としてのメッセージを強く押し出した本作の力強さは、彼女らの精神的な高まりと成長を正確に反映している。