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Canned Heat & John Lee Hooker – Hooker 'N Heat (1971)

 Muddy Watersの『Fathers And Sons』をはじめとした、60年代後半から70年代にかけて多く生まれた大物ブルースマンと若手ロックバンドの共演群の中でも圧巻の名作。だが一聴するとJohn Lee Hookerを立てるばかりで、Canned Heatのバンドとしての技術がすべて生かされている作品ではないと感じやすいのも事実である。確かに本作では強烈なBob Hiteのボーカルを聴くことはできないし、ほとんどのリズムはFito de la ParraのドラムではなくHooker自身の靴のタップによるものだ。
 Alan Wilsonを除いてはほとんどはバックに徹している。「I Got My Eyes On You」はタイトルの通り「Dimples」調のブギーだが、ヴィージェイ時代の録音と比べても編成は質素そのもの。そして、ミニマリズムに徹した「The World Today」のピアノ(意外にもWilsonによるもの)を聴けば、バンドのメンバーが『Hooker 'N Heat』をロックに仕上げようと考えていなかったのは明らかだ。これらはブギーを信条としたCanned Heatによる、Hookerへの敬意とミュージシャンシップの表れでもある。
 しかし、D面からは一転して賑やかなセッションの様相を呈していく。11分半にも及ぶブギー「Boogie Chillen No. 2」は、70年代以降のHookerのファンキーブルースへの傾倒を予感させる本作のハイライトと呼ぶべき名演だ。
 HookerとCanned Heatはその後もカーネギーホールでライブを残すなど交流を続けることになるが、本セッションの直後である1970年の9月に、薬物のオーバードーズによってWilsonはこの世を去る。ジャケットに物悲しく遺影が描かれた『Hooker 'N Heat』は彼の遺作となるが、奇しくも多くのロックスターと同様に享年は27歳だった。