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Booker T. & The M.G.'s – Melting Pot (1970)

 『Melting Pot』が録音されたとき、The M.G.'sとスタックス・レーベルの関係は引き返せないところまで悪化してしまっていた。彼らのそれまでのヒット曲と同様に、自社スタジオでレコーディングをさせようとしたスタックスに反発したBooker T. Jonesは、ニューヨークでギグを行った際に出先で録音した曲を、半ば強行的にアルバムに収録することにした。
 そうまでしてThe M.G.'sが求めていたのは、ひとえに変化することだった。タイトル・トラックの「Melting Pot」はそれまでには無かった長尺なジャムを取り入れた作品で、ジャズのビートがJonesの荒々しいサイケ風のオルガンとよく合っており、Cropperのギターが持つ豊かな表現力とも巧みに重なり合っている。「Back Home」では意外なまでにオーソドックスなブルースを展開する一方、The Metersを明らかに意識した「Chicken Pox」では、重厚感のあるファンキーなリズムが圧倒的だ。シングル・カットされた「Fuquawi」における伸びのよいオルガン・ソロのなかには、おおらかさと緊張感が絶妙な割合でミックスされている。おそらくCropperの新天地のことを指している「L.A. Jazz Song」では今までとは一味違ったコーラスをフィーチャーしており、「Sunny Monday」にはウェスト・コーストの開放的なロックを思わせる明るいハーモニーがある。
 アルバム『Melting Pot』は米国のR&Bチャートで上位に食い込んだだけでなく、ジャズの分野でも見事にランク・インした。スタックスへのいい置き土産となっただけでなく、彼らの豊かな音楽性を最後に証明したという意味でも本作は間違いなく名作といえる一枚だろう。