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Paul Butterfield's Better Days (1973)

 シカゴ派ブルース・ロックの最高峰であるPaul Butterfieldがエレクトラからべアズヴィルへ移籍して結成したのがBetter Daysだ。1971年にソウルに傾倒した『Sometimes I Just Feel Like Smilin'』を発表した翌年、Amos Garrettらをメンバーに迎え入れ、本作を録音している。ピアノ、オルガンで参加するのはDr. Johnの片腕として活躍し、80年代のCanned Heatにも参加したRonnie Barronだ。
 一曲目の「New Walkin' Blues」は、彼らの初期のレパートリーであるRobert Johnsonの「Walkin' Blues」をファンキーに再解釈したものだ。徹底した換骨奪胎を施したアレンジは大胆そのもので、Butterfieldのハープも曲の最終部にしか登場しない。彼らが原点回帰に甘んじるつもりなどないのは明らかで、クレジットに目を通せば実にバラエティに富んだ選曲になっている。オール・ミュージックの評にある〈田舎からコスモポリタンまで〉という言葉は、Johnsonに始まりPercy Mayfieldまでカバーしてみせた本作の特徴をキッチリと捉えている。
 バッキング・ボーカルでBobby Charlesが参加しているのも、70年代にButterfieldが次第にウッドストック系へ傾倒していったことの端緒と捉えていいだろう。Butterfieldは本作の前年にソロ・ワークとして『Steel Yard Blues』のサントラに参加、かつての盟友であるギタリストMike Bloomfieldと再び相見え、さらにGeoffの妻であるMaria Muldaurとも共演している。Butterfieldの人脈はまさにルーツ・ロックの宝庫だ。