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Lulu – Lulu (1973)

 イギリスのポップ・シンガーLuluにとって、1973年はMaurice Gibbとの結婚生活が破綻するなどして、決して心休まる時期とは言えなかった。だが、この年に発表された『Lulu』は、ソウルやロックもこなせるボーカリストとしての彼女の持ち味が最大限に活かされたアルバムとなった。
 答えはThe Young Rascalsの2つのカバー曲に集約されていると言っても過言ではない。ブルー・アイド・ソウルという分野を定義した名曲「Groovin'」と「A Boy Like You」を歌い上げるボーカルは、肩の力が程よく抜けた爽やかな彼女の姿が想像できるようだ。かつてJerry WexlerやTom Dowdがお膳立てしたころのアルバムからは、明確な変化が聴いてとれる。
 セクシーな雰囲気の「Easy Evil」は、Luluと比較されることの多いDusty Springfieldも前年に歌っていたナンバー。続く「Hold On To What You've Got」のファンキーなビートも魅力的だ。特に素晴らしいのはDavid Cassidyのヒット・バラード「Could It Be Forever」から、カントリーの「Funny How Time Slips Away」、R&Bの「Do Right Woman, Do Right Man」へと続く一連の盛り上がりだ。3曲ともがそれぞれのジャンルを代表するくらいの名曲なのだが、いずれでもLuluのボーカルは真に迫っており、強い感動を呼び起こす。
 翌年の『007』の主題歌や60年代のヒット曲「To Sir With Love」に強い印象を持つ人も多い。だが本作を特別な一枚として挙げる人がいても何も不思議なことはない。