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Jim Campilongo And The 10 Gallon Cats (1996)

 60年代の自由な西海岸産ロック・ミュージックを聴いて育ったJim Campilongoの豊かなギターがあれば、ボーカリストのいないThe 10 Gallon Catsは十分に饒舌でにぎやかなバンドになることができた。70年代から活躍していたCampilongoのデビューとなった本作は、ジャズのリズムと粘っこいブルースの音色を大胆に取り入れたプログレッシブ・カントリーの名盤であり、同時にこれは90年代的なミクスチャー精神の賜物でもあった。
 冒頭の「Splitsville」は、一聴してマンガのサウンドトラックに使えてしまいそうなほど大げさなナンバーだが、音楽性の土壌が広い彼だけに、この突き抜けて明快なカントリー風味が却ってすがすがしい印象を与えている。カリフォルニアののどかな雰囲気を伝える「Night In Serramonte」は、ほんのりとハワイアンな仕上がりだ。「Big Bill」は後のライブ盤ではジャズっぽくアレンジされることもある。
 59年製テレキャスターによる繊細なギター・テクニックが冴える「Blue Hen」は彼の運営するレーベル〈ブルー・ヘン〉の名を冠したナンバー。「Bully Cat」は敬愛するRoy Buchananをほうふつとさせるスローでヘヴィなブルースをたっぷり7分にわたって展開している。
 時代とジャンルを超越した『The 10 Gallon Cats』は翌年に地元の音楽賞を獲得し、2000年代に入るとCampilongoはNorah JonesらとのユニットThe Little Williesを結成するなどして活動の幅を広げた。