見出し画像

Rod Stewart – The Rod Stewart Album (1969)

 多忙なRod Stewartがアルバム・デビューするころには、世間における彼の名声はJeff Beckとの活動のおかげで十分に高まっていた。再編後のThe Small Facesのボーカリストの座に就いたばかりでもあった彼は、Facesと改名して最初のアルバム『First Step』とほとんど同時期にこのアルバムをドロップしている。
 本作にはFacesの持ち味となるルーズな雰囲気のロックンロールと、アコースティック・ロックでたちのぼるStewartのセクシーさがすでに両立していた。聴きどころはそれだけでなく、古今の名曲を大胆に解釈する巧みさなどはThe Rolling Stonesの「Street Fighting Man」で顕著だ(英国盤より早く発売されたマーキュリー盤はジャケットが『Beggars Banquet』にそっくりだ)。
 Ronnie WoodやIan McLaganを擁したレコーディング・メンバーは、バック・バンドと呼ぶにはあまりにもおなじみの面々で、演奏や歌唱スタイルには悪い意味での緊張が全くと言っていいほどない。英国らしさ満点のフォーク・ロック「Handbags And Gladrags」には作者のMike D'Aboが参加した。ヘヴィなギター・ロック「Blind Prayer」、気品に満ちたサウンドの
「I Wouldn't Ever Change A Thing」といったオリジナル曲にも十分な魅力があふれ、特に後者にはオルガンのKeith Emersonという意外な人物もいる。
 評論家に絶賛されたにもかかわらず『The Rod Stewart Album』は本国のアルバム・チャートに入ることがなかったが、Stewartはきっと焦ることなどなかったはずだ。その証拠に、続いて発表されたFacesのアルバムとソロ作は加速度的にヒットを重ね、彼は英国ロックの顔としての地位を確立していった。