見出し画像

Alexis Korner & Snape – Accidentally Borne In New Orleans (1972)

 1972年の初頭に行われたKing Crimsonのリハーサルは惨憺たるものだった。Mel Collinsは自作の曲をRobert Frippにあっけなく拒絶され、それを目の当たりにしたBoz BurrellとIan Wallaceは怒り狂ってその場でバンドを脱退しかけた。なんとかグループは持ち直したが、同年のアメリカ・ツアーを最後にCrimsonは分裂してしまう。
 Crimsonとまったく異なる音楽性を求めていたCollinsたちは、英国ブルースの重鎮であるAlexis Korner、ギタリストPeter ThorupとSnapeを結成した。彼らのアルバム『Accidentally Borne In New Orleans』の演奏にはピリピリした緊張感はなく、人間関係にうんざりしていた彼らを包み込むような温かいサウンドと、程よく力が抜けたスワンプらしいルーズなファンキーさが満ちている。
 ホンキートンクを思わせる1曲目の「Gospel Ship」(Zoot Moneyのピアノが絶妙な味わいを加えている)を聴けば、このアルバムに『Earthbound』のようなアンサンブルを期待するのはお門違いなのだと誰もが気付く。James Taylorのフォーク・ソング「Lo And Behold」も、BurrellとWallaceの力強いグルーヴによって見事なファンクと化した。
 バンドとゲスト・ミュージシャンが一体となって作り上げた本作を象徴するような「Country Shoes」は、オルガンとして参加したSteve MarriottやMike Pattoらのコーラスも加わって、一見静かだが揺らめくような熱気をはらんだゴスペル風ロックを展開する。ヨーロッパの人間が、それも突発的に集まってできたとは思えないほどにアメリカの空気を感じさせる珠玉の一枚である。