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Piano Red – In Concert (1956)

 Rufus "Speckled Red" Perrymanの弟で、〈Piano Red〉や〈Dr. Feelgood〉といったあだ名でも知られるWilliam Lee Perrymanは、初期の多くのR&Bシンガーと同様に苦労人である。正式な音楽教育を受けないまま、地元のアトランタでパートタイムのピアニストとして働いていたPerrymanは、1936年に行われたBlind Willie McTellのレコーディング・セッションでバックの演奏を務めたが、この時に録音された10曲はいずれも未発表に終わってしまっている。
 56年にグルーヴというレーベルから出た彼の初めてのアルバム『In Concert』は、アトランタでのコンサートを収めたA面と、グルーヴ時代のアンソロジーであるB面からなる歴史的傑作だ。
 A面の「The Right String, Baby, But The Wrong Yo-Yo」や「Rockin' With Red」は、いずれも50年代初期にRCAビクターでヒットしたナンバーである。ファンキーなホーンをフィーチャーしたジャンプ・ブルースには、まさにロックンロールと地続きな力強さに満ちている。前者ではPerrymanが遊び心のあるボーカルをまくしたて、後者ではけたたましいバレルハウスのピアノに呼応するように、伸びやかなサックスとトレモロを交えた激しいギターが輝く。
 B面にも聴きどころは多い。陽気なPerrymanの魅力をストレートに伝える「Jump Man Jump」もあるが、おだやかなテンポの「Pay It No Mind」や、しっとりとした「Goodbye, Goodbye, Goodbye」、とことんブギウギに徹した「Six O'Clock Bounce」のような曲もある。コーラスを取り入れた「Do She Love Me」は当時未発表だったとは思えない素晴らしい出来だ。
 実際にPerrymanが広く注目されるようになるきっかけとなったのは、60年代に〈Dr. Feelgood〉の名義で吹き込んだナッシュヴィルでのセッションである。ここでPerrymanは、The BeatlesやThe Pacemakersといったビート世代に多大な影響を与えるナンバーを生んだ。