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Gino Vannelli – Inconsolable Man (1990)

 AORとしてはほとんど完璧ともいえる名盤『Nightwalker』を作ったにもかかわらず、アリスタ・レーベルにおけるGino Vannelliの第二作目のアルバムはお蔵入りとなってしまった。レーベルをフランスのディスク・ドレイファスに移してからは、シンプルな造りのニュー・ウェーブなど作風の変化も見られたが、『Inconsolable Man』はVannelliの都会的なソウル感覚がふたたび顔を出している。ジャケットの写真を見比べても、『Black Cars』でのギラリとした彼の眼光が、落ち着いたサウンドの本作では心なしか穏やかになっている。
 それまでと同様に打ち込みのリズムとDavid Garibaldiのドラムを使い分けているのだが、熱っぽいコーラスをフィーチャーした「Rhythm Of Romance」や「Shame」のような、Joe & Ross Vannelliらしい厚みのあるサウンドが味わえるのは本作の持つ大きな価値だ。間に挟まれるバラード「If I Should Lose This Love」は大作映画のエンディング・テーマのようである。
 軽めのポップ・ロック「The Time Of Day」や彼の70年代のアルバム群を思い出させるタイトルの「Moment To Moment」もいい。ハイライトはキーボードとRonnie Ritchotteのギター(どちらもどことなく70年代的なスタイルである)が印象的なタイトル・トラックの「Inconsolable Man」だ。後半にVannelliの巧みな歌声が盛り上がっていく展開もまた素晴らしく、感動を呼ぶ。