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嘘つきアーニャの真っ赤な真実

1960〜1964年にかけてプラハのソビエト学校で少女時代を過ごした著者とその友達の物語.ソビエト学校には50カ国以上から子供たちが集まってきていたというが,彼らに共通しているのは,親が共産主義者であるということ.日本人のマリもそんな父親に連れられてプラハに住み,ソビエト学校に通うことになった.

嘘つきアーニャの真っ赤な真実
米原万里,角川書店,2004

本書では,ギリシア人のリッツァ,ルーマニア人のアーニャ,そしてユーゴスラビア人のヤスミンカと一緒にソビエト学校で過ごした日々が綴られているのだが,それだけではない.音信が途絶えてしまった彼女ら3人と再会すべく,30年振りに東欧に赴き,そこでマリが体験したことまでが綴られている.

プラハの春,ソ連邦の崩壊,ユーゴスラビアの民族戦争など,日本人ならニュースで聞きかじったであろう事件の当事者として,激動の時代を生きた彼女たちの人生が描かれている.テンポの良い,軽快な語り口だが,旧友との再会を果たすマリが直面する現実は非常に重苦しくもある.

個人の思い出話であると同時に,個人の視点から眺めた東欧諸国の現代史あるいは共産主義の歴史でもある.

凄く面白かった.読んでみて大正解.

© 2010 Manabu KANO.

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