ツール・ド・フランスを舞台に事件が起きる「スティグマータ」
プロが競い合う自転車ロードレースにも様々な種類があるが,とりわけ有名なのがグランツールだ.2週間以上にわたってレースが繰り広げられ,その走行距離は3000kmにも及ぶ.ツール・ド・フランス,ジロ・デ・イタリア,ブエルタ・ア・エスパーニャの3つがグランツールと呼ばれる.自転車選手の憧れの舞台でもある.
グランツールの中でも特に有名なのがツール・ド・フランスだろう.「スティグマータ」は,そのツール・ド・フランスを舞台にした小説である.
近藤史恵,「スティグマータ」,新潮文庫,2019
ツール・ド・フランスを走る日本人選手が2名いる.このシリーズ「サクリファイス」「エデン」「サヴァイヴ」「キアズマ」でも活躍した選手だ.クライマーとスプリンターという違いはあれど,自転車レースの本場ヨーロッパのプロチームでの活躍を目指し,それを叶えた選手達だ.そんな彼らを巻き込んで事件が起きる.
普段小説を読まない私が5冊も一気に読み終えたのは実に珍しい.ロードバイクでサイクリングするのが趣味なので,ロードレースに興味があるというのはあるが,やはりストーリーが面白いからだろう.レースを描くだけでなく,エースを勝たせるために自分を犠牲にするアシストの目線で,その苦悩も描かれる.さらに,事故や事件が起こる.
いずれも自転車に興味がなくても楽しめる小説だと思う.
© 2021 Manabu KANO.