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素直に学ぶことから始めよう

「守破離」という言葉を聞いたことがありますか.

守破離とは,最初は基本を忠実に守り,次にそれを応用して,最後は型から離れるという芸道の修得過程を表していますが,その原典は明らかではないそうです.能楽における,世阿弥の「風姿花伝」にある序破急が元とされています.風姿花伝では,序破急は修得過程ではなく,能の構成をさします.

その後,茶道において,千利休が「利休道歌」にて歌を詠み,川上不白が「茶話集」や「不白筆記」に記したとされます.利休道歌には,「規矩作法 守り尽くして 破るとも 離るるとても 本を忘るな」とあります.また,不白筆記には,「弟子に教るは守,弟子は守を習尽し能成候へば,おのずと自身より破る.離はこの二つを合して離れて,しかも二つを守ることなり」とあります.師が守を教え,弟子がこれを破り,両者がこれを離れてあらたに合わせあうという意味です.武術でも「守破離」という言葉が使われますが,さらにその後のことのようです.

道を問わず,何かを修得しようとするとき,まずは「守」からというわけです.守には素直さが必要です.実際,伸びる人の共通点は素直さだと多くの人が指摘しています.

京セラの創業者であり,破綻した日本航空を短期間に再建した経営者としても知られる稲盛和夫さんは,次のように述べています.

とかく能力のある人や気性の激しい人,我の強い人は,往々にして人の意見を聞かず,たとえ聞いても反発するものです.しかし本当に伸びる人は,素直な心をもって人の意見をよく聞き,常に反省し,自分自身を見つめることのできる人です.

シンクロナイズドスイミングの日本代表ヘッドコーチを務めた井村雅代さんは,多くの選手を育てた経験から,次のように話しています.

人の話を聞く時は,耳で聞き,頭で聞き,心で聞かないとダメなんですね.耳で聞いてても心のシャッターを下ろしてる子はあかん.選手にはハッキリ言うんです.『あなたはいま心のシャッターを下ろしてるから,もう言うのをやめる』って.いくら言っても入りませんから.

また,宮大工の小川三夫さんは,法隆寺棟梁で「最後の宮大工」と呼ばれた西岡常一棟梁の弟子として修業した時代を振り返って,こう述べています.

批判の目があっては学べません.素直でなければ本当の技術が入っていかないですね.

ビジネスの世界であれ,スポーツの世界であれ,職人の世界であれ,伸びる人,一流になる人は皆,素直だというわけです.

いつも学生に「論文は批判的に読め」と言っている私ですが,そして実際それは必要なのですが,人から何かを学ぶのであれば,まずは素直に受け入れることが大切です.

© 2020 Manabu KANO.

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